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「平成25年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」の概要について

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最終更新日:2014年3月10日

「平成25年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」の概要について

2014年3月

特産業務部でん粉原料課
鹿児島事務所

はじめに

 当機構では、平成26年2月12日(水)に大阪市内において「平成25年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」を開催したので、その概要を紹介する。

 同交流会は、南九州地域の農業・経済を支える重要な作物であるかんしょの約4割から製造されるかんしょでん粉について、その安定的な供給に資するため、かんしょでん粉製造事業者と実需者との間での問題認識の共有や理解の醸成、さらにマッチングの場を提供する目的で開催している。過去2年にわたり鹿児島市内で開催してきたが、3年目となる今年度については、かんしょでん粉の大消費地である関西圏で開催した。

1.交流会概要

(1)第1部 講演会

 でん粉関係各者の立場から、かんしょでん粉に関連する講演を行った。

 今回は、主にかんしょでん粉の特性、利用方法の実例や、糖化原料へ仕向けられる割合が高いかんしょでん粉を加工食品用途へ仕向けていくための課題や関係者の現在の取り組みなどについて情報交換を行った。講演概要は以下のとおり。
 
(ア)鹿児島県におけるさつまいもおよびでん粉について
 鹿児島県農政部農産園芸課糖業特産作物係の中島博也係長から、鹿児島県におけるさつまいもおよびでん粉の現状について講演が行われた。

 鹿児島県におけるさつまいもは、普通畑の約2割に作付けされており、台風などの気象災害に強く、夏場の代表的な土地利用型作物として輪作体系上も重要な作物として位置付けられている。

 平成24年産の鹿児島県のさつまいも生産量は32万トンで全国第1位、全国の生産量の約4割を占めている。

 また、さつまいも生産量の約4割は、でん粉原料用が占めるものの、県内の19でん粉工場における操業率は、約6割である。

 生産農家の構造については、栽培農家戸数は農家の高齢化などにより減少しているが、1戸当たりの栽培面積は増加傾向にあり、総栽培面積は約1万4000ヘクタールで横ばいである。

 今後は、基本的栽培技術の励行による単収向上、労働時間の削減・規模拡大によるでん粉原料用さつまいもの安定生産、さつまいもでん粉の品質の向上による加工食品への用途拡大などが重要な課題となっている。
 
(イ)かんしょでん粉の特性と実力について
 鹿児島県農業開発総合センター農産物加工研究指導センターの時村金愛研究専門員から、かんしょでん粉の特性と実力について講演が行われた。

 かんしょでん粉および各種でん粉について、粒子の形状や大きさ、粘着性、糊になる温度、老化特性(でん粉ゲルの硬くなりやすさ)などの特性の比較および新品種「こなみずき」のでん粉特性と食品への利用可能性について説明した。

 かんしょでん粉は、他のでん粉に比べて中間的な特性を示し目立った特性がないため、以前から用途の約7割が糖化原料用に使用されており、食品向けの固有用途が少ないことから、付加価値の高い加工食品用途への転換が求められている。新品種「こなみずき」から製造したでん粉は、これまでのでん粉原料用品種にはない新たな機能を有することが明らかになっている。

 かんしょでん粉は品質も高く安心して使用できる国内産いもでん粉である。さらに、「こなみずき」でん粉は、耐老化性やゲル成形性に優れ、優れた食感改良効果や品質保持効果(冷蔵時の硬化抑制や離水抑制)を有することから、今後は、水産練り製品、蒸し菓子、ベーカリー製品、餅製品などの幅広い利用が期待される。
 
(ウ)かんしょでん粉の新しい機能に着目した用途開発・品質向上の取り組み
 日本澱粉工業株式会社開発研究部の片野豊彦次長から、かんしょでん粉の新しい機能に着目した用途開発・品質向上の取り組みについて講演が行われた。

 新しい機能性かんしょでん粉のクイックスイートでん粉と、こなみずきでん粉の開発の経緯を説明した。

 10年前に、食品として使用されていた加工でん粉の添加物指定への動きがあったため、同社では新しい市場の開拓を目指し、産学官連携により、新しい機能性かんしょでん粉、クイックスイートでん粉の開発を行った。

 クイックスイートは、耐老化性に優れ、低温糊化性を有していたが、低収量、低でん粉含量、赤い果皮、萌芽性の悪さという欠点があったため、それを改良した品種「こなみずき」を事業化した。

 さらに、かんしょでん粉の品質向上のため、徹底的な製造機械の分解洗浄や異物の混入防止対策など製造工程を改善し、その機械を動かす人材育成にも力を入れてきたこと、また、栽培農家を支援し事業の安定化を図る持続可能な農業を支える取り組みについて説明した。
 
(エ)鹿児島ふるさと食材「さつまいもでん粉」の食品用途拡大の取り組みについて
 鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会事務局の中畠善郎氏から、鹿児島のふるさと食材であるさつまいもでん粉の食品用途拡大の取り組みについて講演が行われた。

 農林水産省の「日本の食を広げるプロジェクト事業」のうち「食のモデル地域育成事業」を活用し、さつまいもでん粉の食品用途拡大に取り組んでいる同協議会の取り組みを紹介した。

 同協議会は、鹿児島のふるさと食材「さつまいもでん粉」を情報発信し、薩摩JAPANブランドの確立を図っている。

 さつまいもでん粉、こなみずきでん粉の「もちもち」「プルプル」した食感を生かした、菓子部門・パン部門・麺部門・水産練部門・スイーツ部門をクロスさせることにより、相乗効果を高めるクロスブランド戦略の展開やさつまいもでん粉、こなみずきでん粉を使用した、麺類、水産練り製品、ベーカリー類、菓子類などを紹介した。
 
(オ)スナック菓子とかんしょでん粉について
 カルビー株式会社研究開発本部開発2部スナック課の江藤信治課長から、食品メーカーとしてかんしょでん粉へ求めることなどについて講演が行われた。

 でん粉はかっぱえびせんを作る上で、2つの重要な役割がある。

 その役割とは、かっぱえびせんを焼き上げる前の餅状の生地を作る工程で、型崩れが起きないよう物性の安定に寄与していることや複数のでん粉をブレンドして独特の食感を生み出していることである。

 また、かんしょでん粉に求めることは、品質、性状(性質や状態)、供給量、価格が全て安定していることであると説明した。
 
(カ)でん粉を原料とする「はるさめ」について
 森井食品株式会社の森井一晶代表取締役会長から、でん粉を原料とするはるさめについて講演が行われた。

 はるさめを簡単に説明するなら「でん粉を原料にした細い麺」である。

 世界におけるはるさめ需要は、中国が約30〜40万トン、韓国で約4万トン、タイで約4万トンとなっているほかインドネシア、台湾などで食されている。

 また、日本におけるはるさめの需要は約2万3000〜4000トン。約1万トンが国内で製造されており、残りの1万2000〜3000トンは中国産である。

 はるさめの原料は、基本的にはその国で作られたでん粉を原料にしており、その中でかんしょでん粉を原料にしているのは、日本と韓国のみである。

 韓国は100パーセントかんしょでん粉を使用しているので、日本においてかんしょでん粉の需要を増やすには韓国の使用状況は参考になると思われる。

 かんしょでん粉の需要を増やすには、韓国ではるさめをチャプチェとして食しているように、日本でも、はるさめを焼きそばのように主食として食すること。さらに、今後かんしょでん粉を使用した麺類をレトルト食品、冷凍食品へ使用することなどについて提案があった。
 

(2)第2部 意見・情報交換会

 意見・情報交換会には7者(当機構含む)が試食・展示ブースを設置し、かんしょでん粉を使用した製品の試食などを通じて、かんしょでん粉の可能性などについて活発な意見交換を行った。
 
<展示ブース出展者>
  1. 鹿児島県農業開発総合センター農産物加工研究指導センター
  2. 日本澱粉工業株式会社
  3. 鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会
  4. カルビー株式会社
  5. 森井食品株式会社
  6. 三河屋製菓株式会社
  7. 独立行政法人農畜産業振興機構

おわりに

 開催に当たり、講演および出展していただいた方々の多大なご協力に対して深く感謝申し上げるとともに、今後のかんしょでん粉のさらなる発展につながることを期待する。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713