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地域だより

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最終更新日:2014年3月27日

さつまいもでん粉(こなみずきでん粉)食品利用研修会の開催について

2014年3月

鹿児島事務所 遠藤 秀浩
 


 平成26年3月13日(木)、鹿児島市のJA鹿児島県会館にて、鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会主催による「さつまいもでん粉(こなみずきでん粉)食品利用研修会」が開催された。同研修会は、「鹿児島のふるさと食材さつまいもでん粉の魅力を皆様に!」をテーマに、さつまいもでん粉(こなみずきでん粉)の特性を周知し、新たな食品用途の開発および利用促進を目的として開催され、さつまいもでん粉製造事業者や鹿児島県内の製粉、麺類、菓子、ベーカリー類の実需者など約60名が出席した。本稿では、でん粉関係各者の講演概要、さつまいもでん粉を使用した食品の試食などを通じた意見・情報交換会の模様について紹介する。
 

1.講演概要

(ア)鹿児島県におけるさつまいもおよびでん粉について

 鹿児島県農政部農産園芸課の久保特産作物対策監から、鹿児島県におけるさつまいもおよびでん粉の現状について講演が行われた。

 平成25年産の鹿児島県のさつまいも生産量は37万4000トンと全国第1位で、全国の生産量の約4割を占めている。

 近年の鹿児島県内のさつまいもの作付面積は約1万4000ヘクタールと横ばいで推移しており、でん粉用と焼酎用がそれぞれ4割を占め、その他生食用および加工用となっている。

 さつまいもの栽培農家戸数は農家の高齢化などにより年々減少傾向にあるが、作業の機械化等により、1戸当たりの栽培面積は増加傾向にある。

 さつまいもでん粉はこれまで食品用途としては白度が低い、品質が安定しないという評価だったが、近年では最新鋭設備を備えたでん粉工場の新設や品質管理機器の導入が進み、品質が向上している。

 今後は、さつまいもの安定生産につなげるため、健苗育成や土づくり、早期植え付けなどの基本的栽培技術の励行による単収向上や、ハーベスタなどの普及や作業受託組織の育成などによる労働時間の削減・規模拡大を図ることが必要である。また、さつまいもでん粉のさらなる食品用への利用拡大に向けて、特色あるでん粉の販路拡大などが重要な課題となっている。
 

(イ)鹿児島ふるさと食材「さつまいもでん粉」の食品用途拡大の取り組みについて

 鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会事務局の中畠善郎氏から鹿児島のふるさと食材であるさつまいもでん粉の食品用途拡大の取り組みについて講演が行われた。

 同協議会は、農林水産省の「食のモデル地域育成事業」を活用し、平成25年7月にJA鹿児島県経済連、鹿児島県、食品産業事業者、生産者団体、管理栄養士および消費者などで構成し、鹿児島県特産のさつまいもでん粉の食品用途の利用や消費拡大を目的として、設立された。

 さつまいもでん粉(こなみずきでん粉)の原料栽培から製造法まで説明し、商品展開については、「モチモチ・プルプル」食感を生かした菓子、パン、麺、水産練り製品、スイーツなどの複数の商品を同時期に開発することにより、相乗効果を高めることを狙った「クロスブランド戦略」を立ち上げたことや、「薩摩JAPANブランド」と称し、さつまいもでん粉(こなみずきでん粉)の特性を生かしたそれらの商品を紹介した。
 

(ウ)さつまいもでん粉の特性と食品への利用について

 鹿児島県農産物加工研究指導センターの時村金愛研究専門員から、さつまいもでん粉の特性と食品への利用について講演が行われた。

 さつまいもでん粉は、各種でん粉と比較し、粒子、粘度、透明度など中間的な特性のため、以前から用途の約7割が糖化製品用に使用されており、より付加価値の高い食品向け用途への転換が課題となっている。そこで、用途拡大が可能な特徴的なさつまいもでん粉の検索に取り組んだ結果、ゲル保形性のよさ、耐老化性が高いなどの特徴がある「こなみずき」でん粉育成につなげた経緯など、さつまいもでん粉の食品への利用の可能性を説明した。

 さつまいもでん粉を食品に利用すると、 1)わらびもちなどゲル性菓子は、ぷるぷるとした弾力感を生む 2)さつまあげなどの水産練り製品は、ほどよい弾力感を生む 3)うどんや冷麺などの麺類は、なめらかさが向上し、のどごしがよい−などの効果が見られた。

 さつまいもでん粉は、品質向上が進められており、安心して使用できる国内産でん粉である。さらに、「こなみずき」でん粉は、食品への高い利用適性に優れており、今後は食品加工分野での幅広い利用が期待される。
 

(エ)さつまいもでん粉の食品利用の実例(麺類)

 鹿児島協同食品株式会社日配製造課の垂野信行課長から、麺類におけるさつまいもでん粉の食品利用の実例について講演が行われた。

 自社の冷凍うどんなどに、さつまいもでん粉の使用を始めたところ、今まで使っていた他のでん粉と違い、もっちりとした粘りと弾力、茹でても伸びが遅くなるなどの特徴が得られたとのことであった。
 

(オ)さつまいもでん粉の食品利用の実例(パン類)

 イケダパン株式会社重富工場の水間淳哉工場長から、パン類におけるさつまいもでん粉の食品利用の実例について講演が行われた。

 もっちりした食感のパンや、「飲み込み、噛み切りやすい」をコンセプトにした餅など、「こなみずき」でん粉を利用した特徴ある商品の開発について、紹介があった。
 

2.意見・情報交換会

 意見・情報交換会では、6者による試食・展示ブースが設置され、当機構においても来場者へでん粉の価格調整制度の周知・浸透を図るため、でん粉に関するパンフレットや砂糖類・でん粉情報などを展示した。また、併せて機構業務を紹介したパネルや畜産および野菜に関するパンフレットなども展示し、機構業務全般についても周知を図った。

 試食ブースにおいては、こなみずきでん粉を含むさつまいもでん粉を使用した各種パン、菓子、さつま揚げ、麺類などが提供され、さつまいもでん粉の特性や今後の可能性について、意見が交わされた。

<展示ブース出展者>
  1. 鹿児島県農業開発総合センター農産物加工研究指導センター
  2. 鹿児島県さつまいもでん粉食品用途拡大推進協議会
  3. 鹿児島協同食品株式会社
  4. イケダパン株式会社
  5. 株式会社タカイ
  6. 独立行政法人農畜産業振興機構
 
 今回の研修会では、「こなみずき」でん粉を含むさつまいもでん粉の講演などを通して、その特性や魅力など、直接でん粉を利用する鹿児島県内の実需者の方々に紹介され、理解を深める大変良い機会となった。こうした取り組みを通じて、「こなみずき」でん粉を含むさつまいもでん粉の食品用途拡大および需要の拡大につながることを大いに期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713