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地域だより

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最終更新日:2014年12月12日

かんしょでん粉に関する出前講座の開催について―鹿児島純心女子大学―

2014年12月

鹿児島事務所 小山 陽平

 当事務所は、平成26年11月7日に、薩摩川内市の鹿児島純心女子大学において、「かんしょでん粉に関する出前講座」(以下「出前講座」という)を開催した。今回の出前講座は、将来、医療・教育などの現場で食による健康づくりを支えるスペシャリスト(管理栄養士)を目指して勉学にいそしむ看護栄養学部健康栄養学科2年生の皆さまに、鹿児島県の特産物であるかんしょでん粉を支える価格調整制度や、でん粉の特性と利用方法について詳しく知って活用してもらおうと、鹿児島純心女子大学および鹿児島県農業開発総合センター農産物加工研究指導センター(以下「農産物加工研究指導センター」という)の協力を得て、実現した。今回の出前講座の模様について、以下の通り報告する。

 最初に、当事務所の星英幸所長が、「日本のでん粉を支える仕組み」と題する講演を行った。講演では 1)でん粉から作られる製品 2)需給などのかんしょでん粉をめぐる状況 3)でん粉原料用かんしょが南九州(鹿児島県・宮崎県)地域の経済を支える基幹作物であること 4)かんしょでん粉は唯一鹿児島県内で製造されていること 5)輸入でん粉などから徴収した調整金を財源として、国内のでん粉原料用かんしょ生産者やかんしょでん粉製造事業者に対し当機構から交付金を交付している価格調整制度の仕組み−などについて、説明を行った。
当事務所 星所長 講演「日本のでん粉を支える仕組み」
当事務所 星所長 講演「日本のでん粉を支える仕組み」
 次に、農産物加工研究指導センターの時村金愛研究専門員から、「かんしょでん粉の魅力と利用について―かんしょでん粉ってなに?どう使うの?」と題して講演があった。まず、農産物加工研究指導センターの施設紹介があった後、でん粉が原料によって粒子の形状や大きさ、粘度も異なるということについてクイズを交えた説明があった。

 各種でん粉に比べて中間的な特性を持つかんしょでん粉は、その約8割が安価なコーンスターチと競合する糖化製品に利用されている。一方で、4割がでん粉原料用となっている県内のかんしょ生産を支えるためにも、かんしょでん粉ならではの食品用途向けの需要拡大が急務であるとして、新品種こなみずきでん粉が開発されたことの紹介があった。こなみずきでん粉は、その分子構造から低温糊化性を有し、耐老化性やゲル成形性に優れるという特徴があり、食品に加工したときに一般のかんしょでん粉と比べて、食感や形状などに違いが現れる。県下で開発・販売されているさまざまな食品利用の例とともに、従来のかんしょでん粉とこなみずきでん粉とで異なる食感や、適した使用割合などについて説明が行われた。

 最後に、「こなみずきでん粉は、長期間保存でき、歯切れの良い食感などを生み出すことができる、鹿児島県ならではの優れた天然食品。調理目的に合わせて、従来のかんしょでん粉とこなみずきでん粉を適宜使い分けて活用してほしい。こなみずきでん粉はだまになりにくく調理時間の短縮もでき、使いやすさも魅力的。学生の皆さまの発想でアレンジして、ぜひ積極的に調理していただきたい」と提案があった。
農産物加工研究指導センター 時村研究専門員 講演「かんしょでん粉の魅力と利用について―かんしょでん粉ってなに?どう使うの?」
農産物加工研究指導センター 時村研究専門員 講演
「かんしょでん粉の魅力と利用について―かんしょでん粉ってなに?どう使うの?」
 その後、時村研究専門員の指導の下、実際にこなみずきでん粉を使った調理実習が行われた。参加者は、温度管理や水分量などに注意しながら、日頃の実習通りてきぱきと調理していた。今回調理したメニューは以下の通り。
 
役割分担し、てきぱきと調理する学生の皆さま
役割分担し、てきぱきと調理する学生の皆さま
学生に調理指導を行う時村研究専門員
学生に調理指導を行う時村研究専門員
 調理した料理を試食した参加者は、こなみずきでん粉の特徴的な食感を味わい、「だご汁が今まで食べてきたものよりモチモチしていて、しかも歯にくっつかない」「分量を変えるだけで違う食感になるため、幅広く使えそう」「手軽に調理でき、いろいろな料理に応用できて便利だった」といった声があった。

 また、当日は、時村研究専門員が従来のかんしょでん粉とこなみずきでん粉をそれぞれ使って作ったういろうや、かんしょでん粉を使用したスナック菓子、従来のかんしょでん粉・こなみずきでん粉・ばれいしょでん粉により作られたゲルを用意し、参加者は、でん粉の違いによって全く異なる食感や形状を示すことに深く興味を示していた。
従来のかんしょでん粉(左)・こなみずきでん粉(中央)・ばれいしょでん粉(右)により作られたゲル
従来のかんしょでん粉(左)・こなみずきでん粉(中央)・ばれいしょでん粉(右)により作られたゲル
完成した5品(ブランマンジェ(左)・ニョッキ(左上)・落花生豆腐(中央上)・こなみずきでん粉のドレッシングをかけたサラダ(右上)・からいもだご汁(右下))
完成した5品(ブランマンジェ(左)・ニョッキ(左上)・落花生豆腐(中央上)・こなみずきでん粉のドレッシングをかけたサラダ(右上)・からいもだご汁(右下))
 質疑応答の時間には、参加者からこなみずきでん粉の入手方法やかんしょでん粉を使用したスナック菓子の調理方法についての質問があり、時村研究専門員が丁寧に解説した。なお、スナック菓子はさつまいもペースト・かんしょでん粉・粉チーズ・砂糖・ショートニングのみで作ることができ、小麦は使用していないため、小麦アレルギーの方も安心であるとの特徴も併せて説明した。

 最後に、学生代表者から、「鹿児島ならではのかんしょでん粉について、制度の仕組み、さまざまな用途があること、特徴や調理法など多くのことを学ぶことができ参考になった。将来栄養士などになり仕事をしていく上で、今日の講座で学んだことを生かし、地元の食材であるかんしょでん粉を積極的に使い、新たなメニューを考えたい」とお礼の言葉をいただいた。

 当事務所の星所長からも、「今回の出前講座に貴重な時間を割いて頂いた先生方、最後まで熱心に受講いただいた学生の皆さまには心より感謝申し上げる。皆さまが、将来、管理栄養士などの指導的立場になられた際に、本日の講座内容を役立ててもらえれば幸いである」とのあいさつがあった。
試食中の学生の皆さま
試食中の学生の皆さま
学生代表からの御礼の言葉
学生代表からの御礼の言葉
 今回は、将来、管理栄養士や食による健康づくりの指導的立場を担う皆さまに、鹿児島県ならではの特産品であるかんしょでん粉について講義を行い、実際に調理を体験していただいたことで、地元の食材であるかんしょでん粉のさらなる普及につながると考えられ、大変有意義な開催となった。講座終了後には、「デザート作りに使ってみたい」「肉まんや餃子を作ってみたい」「地元の経済発展につながるし、大切な食材であることを知った」「輸入でん粉に調整金が存在すること、鹿児島産のさつまいもが焼酎以外にも利用されているということを知った」などといった声が聞かれたほか、「まとまりやすく、介護食に応用できそう」「流動食のようなとろみ付けの料理に生かしたい」といった健康栄養学科生ならではのアイデアも挙がった。さまざまな現場における今後の利用や価格調整制度への理解の深まりが期待されるところである。

 当機構としては、今後も、生産者の方々が安心してでん粉原料用いもを生産し、経営の安定に資することができるよう、交付金交付業務の適切な運営と併せて、このようなかんしょでん粉の生産振興・普及に係る支援について、積極的に実施してまいりたい。

 改めて、鹿児島純心女子大学看護栄養学部健康栄養学科学生、時村研究専門員をはじめ農産物加工研究指導センターの方々、協力いただいた県下の食品関係事業者の方々に感謝申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713