でん粉の国内需給
最終更新日:2015年3月10日
でん粉の国内需給
2015年3月
1.需給見通し
農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号)により、でん粉に関して適切な価格調整を図るため、半期ごとにでん粉の需給見通しを公表している。2月に公表したでん粉の需給見通しの概要は、以下のとおり。
(1)でん粉の需要量の見通し
用途ごとのでん粉の需要量の見通しは以下のとおり。
【糖化用向けでん粉の需要量】
平成26でん粉年度の需要量は、前年比減と見込まれる
平成25でん粉年度の糖化用向け需要量は、前年度を1万1000トン下回る、179万2000トンとなった。これは、発泡酒向け水あめの需要が低下した一方、清涼飲料を中心とした異性化糖の需要が平年並みであったことによるものである。
26でん粉年度は、前年度を1万4000トン下回る、177万8000トンと見込まれる。このうち上期は、飲料メーカーの製品在庫調整に伴う異性化糖の需要減により、前年度を3万トン下回る、79万8000トンとなった。下期は、異性化糖の需要期である夏場の天候が特異なものとならない限りは、ほぼ平年並みの98万トンと見込まれる。
【化工でん粉用向けでん粉の需要量】
平成26でん粉年度の需要量は、前年度比増と見込まれる
25でん粉年度の化工でん粉用向け需要量は、前年度を1万6000トン上回る、31万2000トンとなった。これを用途別に見ると、主要用途である製紙・段ボール用の需要は、輸入化工でん粉(タピオカでん粉誘導体)から円安やトウモロコシの豊作による国際相場の低落により割安感が生じた、コーンスターチを原料とする化工でん粉への回帰が進んだ。また、冷凍食品をはじめとする食品用の需要は、円安やEUにおけるばれいしょの不作などにより割高となったEU産ばれいしょでん粉から国内産ばれいしょでん粉への原料の切り替えが見られた。
26でん粉年度は、前年度を8000トン上回る、32万トンと見込まれる。さらなる円安傾向による輸入紙の減少や、製紙・段ボール需要の拡大によりコーンスターチを原料とする化工でん粉への回帰が引き続き進むものと考えられる。
【その他用途向けでん粉の需要量】
平成26でん粉年度の需要量は、前年比増と見込まれる
25でん粉年度のその他用途向け需要量は、前年度を8000トン上回る、53万3000トンとなった。用途別に見ると、ビール向け需要については、コーンスターチを使用した製品需要はほぼ前年並みとなった。また、製紙・段ボール向け需要は、化工でん粉用と同様にコーンスターチへの回帰が進んだ。
26でん粉年度は、前年度を3万トン上回る、56万3000トンと見込まれる。ビール向け需要は横ばいで推移し、製紙・段ボール向け需要では、円安傾向による輸入紙の減少やコーンスターチへの回帰が引き続き進むものと考えられる。なお、国内産ばれいしょでん粉の主要な用途である片栗粉などについては、22年産の不作による供給不足に伴いタピオカでん粉誘導体への代替が食品業界で定着し、生産が回復した現状においても国内産ばれいしょでん粉の需要は2000トンの増加にとどまっている。
(2)でん粉の供給量の見通し
各種でん粉の供給量の見通しは以下のとおり。
【かんしょでん粉の生産量】
平成26年産の生産量は、前年比減と見込まれる
25年産のかんしょでん粉の生産量は、焼酎用途との競合も緩和され、前年を4000トン上回る、4万2000トンとなった。
26年産は、前年を4000トン下回る、3万8000トンと見込まれる。原料かんしょについては、低温により植え付けが遅れたものの初期生育が良好であったため、総いも個数は前年並となったが、生育期間を通じ気温が低かったことから、いもの肥大が進まず原料集荷量は、前年を1万1000トン下回る、12万5000トンとなった。
【ばれいしょでん粉の生産量】
平成26年産の生産量は、前年比増と見込まれる
25年産のばれいしょでん粉の生産量は、前年を4000トン下回る、18万5000トンとなった。
26年産は、前年を8000トン上回る、19万3000トンと見込まれる。原料ばれいしょについては、春先の良好な天候から植え付けは順調に進み、その後も好天に恵まれ生育は良好であったことから、原料集荷量は前年を上回った。
【コーンスターチの供給量】
平成26でん粉年度の供給量は、前年比減と見込まれる
コーンスターチの原料となるトウモロコシ(2014年産)は、コーンスターチ用トウモロコシの過半を供給する米国において、好天により単収が上昇し、史上最高の生産量(3億6600万トン)が見込まれており、必要量は安定的に供給されるものと見込まれる。なお、コーンスターチ用トウモロコシの供給量は、主要用途である糖化製品の需要がおおむね堅調に推移していることや、26年産の国内産いもでん粉の生産量を勘案し、26でん粉年度は、でん粉ベースで前年度を8000トン下回る、225万8000トンと見込まれる。
【輸入でん粉の供給量】(糖化製品、化工でん粉用)
平成26でん粉年度の供給量は、前年度比増と見込まれる
25でん粉年度の糖化製品および化工でん粉用輸入でん粉は、前年度を2000トン下回る、13万トンとなった。
26でん粉年度は、前年度を1万2000トン上回る、14万2000トンと見込まれる。主産地のタイで、2014年産の原料キャッサバの生産量が前年度を上回るものと予想されている。
【輸入でん粉の供給量】(その他用)
26でん粉年度の供給量は、前年度比増と見込まれる
25でん粉年度のその他用輸入でん粉の供給量は、1万トンとなった。
26でん粉年度は、昨今の需要動向を踏まえ、1万6000トンと見込まれる。
【小麦でん粉の供給量】
平成26でん粉年度の供給量は、前年度同と見込まれる
小麦でん粉は、主にハム・ソーセージやちくわなどの畜水産練製品向けとして供給されており、平成25でん粉年度の供給量は、前年度を1000トン下回る、1万7000トンとなった。
26でん粉年度は、過去の供給実績から、1万7000トンと見込まれる。
2. 輸入動向
【天然でん粉の輸入動向】
2014年の天然でん粉の輸入価格は高水準
財務省「貿易統計」によると、2014年12月の天然でん粉の輸入量は、1万7119トン(前年同月比5.6%減、前月比14.5 %増)となった(
図1)。品目別の輸入量は、以下のとおりであった。
タピオカでん粉 1万5729トン (前年同月比0.2%減、前月比18.9%増)
サゴでん粉 1284トン (同18.1%減、同13.7%減)
ばれいしょでん粉 45トン (同92.8%減、前月の21倍)
その他のでん粉 61トン (同64.9%減、同74.0%減)
品目別の国別の輸入量は以下のとおりであった。
タピオカでん粉
タイ 1万5726トン (シェア100%)
台湾 3トン (同0%)
サゴでん粉
マレーシア 780トン (同61%)
インドネシア 504トン (同39%)
ばれいしょでん粉
ドイツ 44トン (同98%)
オランダ 1トン (同2%)
2014年(1〜12月)の天然でん粉の輸入量は、前年比6.3%増の17万4706トンとなり、過去10年間(2005〜2014年)で3番目に多い輸入量となった(図2)。品目別の輸入量は、以下のとおりであった。
タピオカでん粉 14万8438トン (前年比10.6%増)
サゴでん粉 1万7473トン (同10.8%増)
ばれいしょでん粉 7535トン (同40.8%減)
その他のでん粉 1261トン (同25.3%減)
2014年12月の品目別の1トン当たり輸入価格は、以下のとおりであった(図3)。
タピオカでん粉 5万1616円 (前年同月比10.2%高、前月比7.3%高)
サゴでん粉 7万6585円 (同17.6%高、同2.8%高)
タピオカでん粉の輸入価格は、6カ月ぶりに前年同月を上回った10月以降3カ月連続で前年同月を上回った。サゴでん粉は、8カ月連続で前年同月を上回って推移している。
2014年の1トン当たり天然でん粉の輸入価格は、以下のとおりであった(図4)。
タピオカでん粉 4万6206円 (前年比0.3%安)
サゴでん粉 6万8439円 (同9.7%高)
ばれいしょでん粉 10万1295円 (同12.7%高)
過去10年の価格の推移を見ると、それぞれ年により上昇・下落はあるものの、上昇傾向にある。2014年の輸入価格は、サゴでん粉とばれいしょでん粉が過去10年で最高値となり、タピオカでん粉は2013年に続く2番目に高い水準となった。
【化工でん粉の輸入動向】
2014年の化工でん粉の輸入価格は、いずれも前年を上回る
財務省「貿易統計」によると、2014年12月の化工でん粉の輸入量は、3万7195トン(前年同月比11.3%減、前月比5.1%増)となった(
図5)。品目別の輸入量は、以下のとおりであった。
でん粉誘導体 3万5922トン (前年同月比10.2%減、前月比5.1%増)
デキストリン 1273トン (同33.7%減、同6.4%増)
でん粉誘導体の最大の輸入先国は、タイである。主要輸入先国からの輸入量は以下のとおりで、上位3カ国で輸入量の8割を占めている。
タイ 2万3634トン(シェア66%)
ベトナム 2726トン(同8%)
中国 2227トン(同6%)
デキストリンの輸入量は、上位輸入先国の数量および各国のシェアも含め、月ごとの増減が大きい。主要輸入先国からの輸入量は以下のとおりで、上位3カ国で輸入量の7割を占めている。
タイ 500トン(同39%)
フランス 218トン(同17%)
ベトナム 176トン(同14%)
12月の1トン当たり輸入価格は、以下のとおりであった。
でん粉誘導体 9万5259円 (前年同月比14.5%高、前月比6.6%高)
デキストリン 12万5090円 (同50.8%高、同41.4%高)
2014年の化工でん粉の輸入量は、前年比6.6%減の48万114トンとなり、過去10年間で3番目に多い輸入量となった(図6)。品目別の輸入量は、以下のとおりであった。
でん粉誘導体 46万3920トン(前年比6.2%減)
デキストリン 1万6194トン(同16.7%減)
でん粉誘導体の輸入価格は、2013年5月以降、2014年4月および6月を除き、1トン当たり8万円台の高水準で推移しており、2014年12月は同9万円台まで上昇した。
2014年の1トン当たりの輸入価格は、以下のとおりであった(図6)。
でん粉誘導体 8万4024円(前年比3.7%高)
デキストリン 10万1021円(同13.7%高)
輸入価格は、でん粉誘導体、デキストリンともに前年を上回り、でん粉誘導体については、過去10年間で最も高値となった。
【コーンスターチ用トウモロコシの輸入動向】
2014年の輸入価格は、前年を大幅に下回る
財務省「貿易統計」によると、2014年12月のコーンスターチ用トウモロコシの輸入量は、16万8997トン(前年同月比10.2%減、前月比34.4%減)となり、4カ月ぶりに輸入先国が米国のみとなった(図7)。
12月の1トン当たり輸入価格は、2万7928円(前年同月比5.1%安、前月比4.0%高)となった。
2014年の輸入量は、前年比1.9%増の315万1547トンとなった(図8)。なお、輸入先国は5カ国であったが、内訳を見るとほぼ米国産(シェア98%)となった。
2014年の1トン当たり輸入価格は、前年比18.0%安の2万8518円となった。
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