(1)ドイツの生産構造
日本とほぼ同じ面積を持つドイツ
(注4)は、EU最大のばれいしょ生産国であり、2014年のばれいしょ全体の生産量は1161万トン
(注5)、そのうち、でん粉原料用ばれいしょは、約2割を占めており、シェアを大幅に低下させているとはいえ、でん粉原料用ばれいしょ生産国の首位の座を維持している。
ドイツ国内のばれいしょの生産分布を見ると、生食用ばれいしょは、主に、同国の中心部で生産されているのに対し、でん粉原料用ばれいしょは、中心部から離れた周辺地域で生産されている。いわゆるバイエルン地方と呼ばれるドイツ南部は、日本に近いような小規模経営が行われている一方、ドイツ東部は旧東欧の流れを汲む大規模な生産が行われており、ばれいしょだけで1戸当たり2000ヘクタールの経営も存在する。北西部では、東部と南部の中間的な中規模経営が多い。
同国では、エムスランド社(Emsland-Stärke)、アヴェベ社(AVEBE)、ズュートシュテェルケ社(Südstärke)の3社が、ばれいしょでん粉を製造している(
図4)。3社とも所有する工場は、原料となるでん粉原料用ばれいしょ生産農家によって組織された協同組合が運営に携わっており、生産農家は原料供給者であると共に、でん粉製造工場の共同運営者とも言える立場にある。
エムスランド社は、ドイツ北部に立地し、ばれいしょでん粉を製造する企業としては国内最大である。同社は、ニーダーザクセン州のエムリヒハイム(Emlichheim)とヴィーツェンドルフ(Wietzendorf)、ブランデンブルク州のゴルセン(Golßen)とキューリッツ(Kyritz)の4工場を所有しており、ばれいしょ以外では、えんどう豆を原料としたでん粉をわずかに扱っているのみで、コーンスターチや小麦でん粉などは製造していない。
アヴェベ社は、本拠地をオランダに置く国際的な協同組合のAVABEグループに属しており、世界最大のばれいしょでん粉企業である。ドイツ、オランダの他、スウェーデンで操業しており、ドイツではニーダーザクセン州のリュッホ(Lüchow)とブランデンブルク州のダルミン(Dallmin)の2工場を所有している。
ズュートシュテェルケ社は、ドイツ南部に立地し、3社の中では最も小規模である。バイエルン州のシュロベンハウゼン(Schrobenhausen)とスーンヒング(Sünching)の2工場を所有している。
なお、EUのばれいしょでん粉産業は、非常に寡占化が進んでいるため、企業情報は原則非公開とされていることが多い。ドイツの場合も、でん粉製造工場に関する最新のデータは、公表できないことになっているため不明であるが、エムスランド社の2013年度のでん粉原料用ばれいしょの処理量は160万トン、ばれいしょでん粉生産量は36万トンと公表されている。また、ズュートシュテェルケ社については、年60万トン前後のでん粉原料用ばれいしょを処理しているとみられる。
(注4)ドイツの面積:357,021平方キロメートル。日本の面積:377,972平方キロメートル。
(注5)資料:Eurostat