でん粉の国内需給
最終更新日:2016年10月11日
でん粉の国内需給
2016年10月
1. 需給見通し
農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号)により、でん粉に関して適切な価格調整を図るため、半期ごとにでん粉の需給見通しを公表している。9月に公表したでん粉の需給見通しの概要は、次の通り。
(1)でん粉の需要量の見通し
用途ごとのでん粉の需要量の見通しは以下の通り。
【糖化用向けでん粉の需要量】
平成27でん粉年度は、前年度からわずかに増加すると見込まれる
26でん粉年度は、前年度を7万1000トン下回る、172万1000トンとなった。これは、清涼飲料を中心とした異性化糖の需要期である夏場の天候が不順となったことによるものである。
27でん粉年度は、前年度を3万9000トン上回る、176万トンと見込まれる。上期は、暖冬により飲料向けを中心に需要が好調に推移し、前年度を1万7000トン上回る、81万5000トンとなった。下期は、異性化糖の需要期である夏場の気温が前年度と比べ高温で推移したため、前年度を2万2000トン上回る、94万5000トンと見込まれる。
28でん粉年度は、毎年の気象変動による影響はあるものの、平年並みの需要があると考え、前年度を3万5000トン上回る、179万5000トンの見通しとなった。
【化工でん粉用向けでん粉の需要量】
平成27でん粉年度は、前年度からやや増加すると見込まれる
26でん粉年度は、円安傾向による輸入化工でん粉や輸入紙の減少により、製紙・段ボール向け需要におけるコーンスターチを原料とする国産化工でん粉への回帰が進んだことから、前年度を1万2000トン上回る、32万4000トンとなった。
27でん粉年度についても、引き続き、製紙・段ボール向けの需要が維持されると考え、前年度を1万7000トン上回る、34万1000トンと見込まれる。
28でん粉年度は、円高傾向により、円安傾向で推移した前年度と比較して製紙・段ボール向けの化工でん粉用の需要は減少すると見込み、前年度を7000トン下回る、33万4000トンの見通しとなった。
【その他用途向けでん粉の需要量】
平成27でん粉年度は、前年度からかなり増加すると見込まれる
26でん粉年度は、円安傾向による輸入紙の減少や製紙向けコーンスターチへの回帰がみられたものの、在庫調整による新規需要減により、前年度を1万トン下回る、52万3000トンとなった。
27でん粉年度は、ビール向けおよび製紙向けなどの需要が維持されると考え、前年度を5万2000トン上回る、57万5000トンと見込まれる。
28でん粉年度は、化工でん粉と同様に、円高傾向により製紙・段ボール向け需要は減少すると見込み、前年度を3万6000トン下回る、53万9000トンの見通しとなった。
(2)でん粉の供給量の見通し
各種でん粉の供給量の見通しは以下の通り。
【かんしょでん粉の生産量】
平成27年産は、前年からやや減少すると見込まれる
27年産の原料かんしょについては、植え付け後の活着はおおむね良好であったが、6月から8月にかけての低温、日照不足、多雨などの影響によりいもの肥大が抑制され、かんしょでん粉の生産量は、前年を2000トン下回る、3万5000トンとなった。
28年産は、作付面積や生産状況を基に推計した結果、前年を7000トン上回る、4万2000トンと見込まれる。
【ばれいしょでん粉の生産量】
平成27年産は、前年からやや減少すると見込まれる
27年産の原料ばれいしょについては、春先の良好な天候から植え付けは順調に進み、干ばつの影響があった一部地域を除き、全体的には生育は良好で、原料集荷量はほぼ前年並みとなったものの、ライマン価が下がったことからばれいしょでん粉の生産量は、前年を6000トン下回る、18万8000トンとなった。
28年産は、前年と同様に生育が進んでいることから、前年並みの18万8000トンと見込まれる。
【コーンスターチの供給量】
平成27でん粉年度は、前年度からやや増加すると見込まれる
コーンスターチの原料となるトウモロコシ(2016年産)は、わが国のコーンスターチ用トウモロコシの過半を供給する米国においてトウモロコシの作付け時期の天候に恵まれたことから、生産量(3億8500万トン)、輸出量ともに前年度より増加すると見込まれており、必要量は安定的に供給されるものと見込まれる。
このため、コーンスターチは、需要に応じた供給がなされるものとして、昨今の需要動向を踏まえ、でん粉ベースで27でん粉年度は、228万1000トン、28でん粉年度は225万2000トンと見込まれる。
【輸入でん粉の供給量】(糖化製品、化工でん粉用)
平成27でん粉年度は、前年度からかなり増加すると見込まれる
27でん粉年度は、需要に応じて安定的に輸入されるものとして、前年度を9000トン上回る、13万7000トンと見込まれる。
28でん粉年度についても、糖化製品および化工でん粉の原料としての需要に応じた輸入がなされると考え、前年度を1万2000トン上回る、14万9000トンの見通しとなった。
【輸入でん粉の供給量】(その他用)
平成27でん粉年度は、前年度から大幅に増加すると見込まれる
27でん粉年度は、用途に応じた必要量が輸入されるものとして、前年度を3000トン上回る、1万トンと見込まれる。
28でん粉年度は、昨今の需給動向を踏まえ、1万8000トンの見通しとなった。
【小麦でん粉の供給量】
平成27でん粉年度は、前年度からやや減少すると見込まれる
小麦でん粉は、主に畜水産練製品向けとして供給されており、27でん粉年度は直近までの製造実績の傾向から1万7000トンと見込まれる。
28でん粉年度は、平年並みの1万7000トンの見通しとなった。
2. 輸入動向
【タピオカでん粉の輸入動向】
7月の輸入量は前年同月および前月から大幅に増加
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のタピオカでん粉の輸入量は、1万5035トン(前年同月比28.9%増、前月比63.4%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した(
図1)。輸入先国はタイおよびベトナムで国別の輸入量は次の通りであった。
タイ 1万4932トン
(前年同月比59.7%増、前月比62.4%増)
ベトナム 103トン
(同95.5%減、前月輸入実績なし)
2016年7月の1トン当たりの輸入価格は、3万9223円(前年同月比26.9%安、前月比2.6%安)と、前年同月から大幅に下落した(
図2)。
同月の国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。
タイ 3万9208円
(前年同月比27.8%安、前月比2.6%安)
ベトナム 4万1417円
(同18.5%安、前月輸入実績なし)
【サゴでん粉の輸入動向】
7月の輸入量は前年同月から大幅に増加
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のサゴでん粉の輸入量は、1502トン(前年同月比42.6%増、前月比0.3%減)と、前年同月から大幅に増加した(
図3)。輸入先国はマレーシアおよびインドネシアで国別の輸入量は次の通りであった。
マレーシア 1214トン
(前年同月比42.0%増、前月比3.2%減)
インドネシア 288トン
(同45.5%増、同14.3%増)
2016年7月の1トン当たりの輸入価格は、5万7605円(前年同月比26.7%安、前月比7.6%安)と、前年同月から大幅に下落した(
図4)。 同月の国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。
マレーシア 5万7398円
(前年同月比26.2%安、前月比7.8%安)
インドネシア 5万8479円
(同28.7%安、同7.1%安)
【ばれいしょでん粉の輸入動向】
7月の輸入量は前年同月および前月から大幅に増加
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のばれいしょでん粉の輸入量は、708トン(前年同月比76.6%増、前月比7.1倍)と、前年同月および前月から大幅に増加した(
図5)。輸入先国はドイツおよびデンマークで輸入量は次の通りであった。
ドイツ 508トン
(前年同月比635倍、前月輸入実績なし)
デンマーク 200トン
(同33.3%減、前月比2.0倍)
2016年7月の1トン当たりの輸入価格は、7万7657円(前年同月比8.5%安、前月比0.3%高)と、前年同月からかなり下落した(
図6)。
同月の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。
ドイツ 7万9197円
(前年同月比87.8%安、前月輸入実績なし)
デンマーク 7万3745円
(同11.5%安、前月比4.8%安)
【でん粉誘導体の輸入動向】
7月の輸入量は前年同月および前月から大幅に増加
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のでん粉誘導体の輸入量は、5万1156トン(前年同月比30.2%増、前月比42.1%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した(
図7)。
でん粉誘導体の輸入先国は17カ国で、最大の輸入先国はタイであった。主要輸入先国からの輸入量は次の通りで、タイが輸入量の8割以上を占めており、その他の国はいずれも5%未満となっている。
タイ 4万2479トン(シェア83.0%)
ベトナム 2019トン(同3.9%)
豪州 1303トン(同2.5%)
フランス 1194トン(同2.3%)
米国 883トン(同1.7%)
2016年7月の1トン当たりの輸入価格は、7万1914円(前年同月比24.7%安、前月比11.4%安)と、前年同月から大幅に下落した。
【デキストリンの輸入動向】
7月の輸入量は前月から大幅に増加
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のデキストリンの輸入量は、1314トン(前年同月比22.9%減、前月比25.3%増)と、前年同月から大幅に減少したものの前月からは大幅に増加した (
図8)。
デキストリンの輸入先国は12カ国で、デキストリンの輸入量は、上位輸入先国の数量および各国のシェアも含め、月ごとの変動が大きい。上位輸入先国からの輸入量は次の通りで、タイが輸入量の4割以上を占め、次いで中国、フランスとなっている。
タイ 539トン(シェア41.1%)
中国 335トン(同25.5%)
フランス 126トン(同 9.6%)
マレーシア 114トン(同 8.7%)
ベトナム 61トン(同 4.6%)
2016年7月の1トン当たりの輸入価格は、7万5463円(前年同月比37.8%安、前月比29.0%安)と、前年同月および前月から大幅に下落した。
【コーンスターチ用トウモロコシの輸入動向】
7月の輸入価格は前年同月から大幅に下落
財務省「貿易統計」によると、2016年7月のコーンスターチ用トウモロコシの輸入量は、24万5703トン(前年同月比10.5%減、前月比14.6%減)となり、前年同月および前月からかなり減少した (
図9)。
また、1トン当たりの輸入価格は、2万841円(同22.4%安、同4.0%安)となり、2015年11月以降下落傾向にある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713