ホーム > でん粉 > 海外現地調査報告 > CAP改革後の中東欧諸国のばれいしょでん粉産業の動向
最終更新日:2016年10月11日
その一方、ばれいしょでん粉のみに焦点を当てた場合、EUは世界最大の生産・輸出地域であるが、生産国はEU28カ国のうち10カ国に限られる(図2、図3)。これは、気象条件による地理的な特性から、ばれいしょの主要生産地域が欧州北部に限られるためである。この生産国10カ国は、でん粉原料用ばれいしょの生産規模から3つのグループに分けられる。まず、ドイツとオランダが最大規模を誇る第1グループであり、2カ国でEU全体のでん粉原料用ばれいしょ作付面積の半分を占める。次に、ポーランド、デンマーク、フランスがいずれも1割超のシェアを占める第2グループである。さらに、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、チェコ、ラトビアが残りの1割超のシェアを分け合っている。
(1)でん粉原料用ばれいしょの生産動向
ばれいしょ生産の中心的な地域は、首都ワルシャワを含むマゾフシェ県、ウッチ県、ヴィエルコポルスカ(大ポーランド)県であり、国土の中央部に広く分布している(図4)。
でん粉原料用ばれいしょは、輪作体系の中に位置付けられている。一例としては、「ばれいしょ→春植えの麦類→秋植えの麦類→ナタネ・豆類→ばれいしょ」という4輪作が挙げられる。中には3輪作、ばれいしょの連作、生産者同士での耕作地の入れ替えなどにより、ばれいしょ栽培頻度の増加を試みる生産者もいる。生産サイクルとしては、4月末から5月初めにかけて種いもを植え付け、8月末から9月初めにかけて収穫する。
EU加盟に伴い、ばれいしょでん粉の生産割当が適用されたが、加盟時の生産割当数量は、それ以前のばれいしょでん粉生産量をわずかに下回る水準であった。そのため、EU加盟後、ばれいしょでん粉生産の抑制を余儀なくされ、でん粉原料用ばれいしょの生産も減少した。その後、2012年に生産割当が撤廃されたことで、生産はやや回復基調となっており、ポーランドでは、一連の規制緩和は比較的前向きに捉えられている(図5)。
なお、ポーランドにおいても、農場の規模拡大傾向は見られるものの、依然として、大部分の生産者は、小規模経営であり、農場経営における合併や集団化もあまり進んでいない。これは、社会主義時代のポーランド特有の状況が影響している。当時、ポーランドでは他の東側諸国と異なり、例外的に集団農場化が進まなかったことに加え、現在も当時の社会全般の集団化への忌避感から、生産者は個人志向が強く、農業経営やでん粉製造企業との価格交渉の組織化が進んでいない遠因となっている。
(2)ばれいしょでん粉の製造動向
EUの多くの国では、ばれいしょでん粉製造企業の寡占化が進んでいるが、ポーランドでは、例外的に10程度の企業が競合している(表5)。これは、生産者と同様に社会全般の集団化を嫌う傾向が影響しているとみられている。これらのでん粉製造企業のうち、PEPEES社とPPZチシェメシュノ社が大手である。
PEPEES社は、北東部ポドラシェ県にばれいしょでん粉製造工場を有し、他にでん粉製造企業2社を傘下に持つ、ポーランド最大のばれいしょでん粉製造企業である。同社は、主に天然でん粉とマルトデキストリンを製造し、国内外に販売している。輸出先は韓国、台湾、東南アジアが多く、麺類やぎょうざの皮などに利用されている。また、飼料向けとなるばれいしょタンパク製品や、傘下企業が製造する小麦でん粉も主力製品の一つである。
一方、PPZチシェメシュノ社は、ヴィエルコポルスカ(大ポーランド)県にでん粉製造工場を有している。同社は、社会主義時代以来、現在も国営企業である。2014年に同じく国営の小麦精製企業、あめ菓子の製造企業、トマト加工企業とグループ化を果たし、原材料・エネルギーの調達や販売網の共有などを行って、相乗効果を発揮している。同社の主な製品は、天然でん粉とばれいしょタンパク製品である。天然でん粉は、製紙や繊維などの工業原料分野よりも、麺類や調味料などの食品原料用に多く利用されている。輸出仕向けが全体の4分の3ほどと高く、輸出先は、世界各国に及び、とりわけ東アジア、東南アジア向けが多い。
また、でん粉製造企業とCAPとの関連では、生産割当下において、ポーランドのでん粉製造工場の割当消化率は、大手では9割前後であったが、全体では8割弱にとどまった。稼働率は、大手を中心に全体で6割程度にとどまっており、これらの数字の見方は意見が分かれるところであるが、以前の生産量を下回る生産割当により、生産者、製造企業の意欲がそがれ、割当を下回る水準が続いてきたものの、ひとたび規制が撤廃されれば、生産を拡大させる十分な能力を有していると考えられる。
(3)でん粉原料用ばれいしょ取引をめぐる動向
既述の通り、ポーランドでは、生産者の組織化が進まず、生産者個人ごとにでん粉製造企業と個別に契約するのが一般的である。取引価格については、まず、でん粉含有率に基づき基本価格が支払われる。さらに、収穫のピークを過ぎた11月から12月に出荷する場合は、上乗せ金が支払われる。ただし、出荷時期をずらすことができるのは、貯蔵設備を有している一部の生産者に限られる。
2012年の規制緩和は、でん粉原料用ばれいしょの取引にも影響を及ぼしている。規制緩和後、でん粉製造企業は、生産者への支払価格を引き上げて、補助削減分を補てんするとともに、ポーランド政府に任意カップル支払いの実施を求めた。同国政府は、当初要求には応じなかったものの、2015年から、支援を実施したことから、でん粉製造企業はそれに合わせ取引価格を若干引き下げ、現在に至っている。従って、規制緩和後、支払い主体の変遷はあったものの、最終的な生産者の受給総額はほとんど変化していないとのことである。
(4)他用途との競合
ポーランドでは、ばれいしょの国内生産のうち、約7%がでん粉原料用に仕向けられている(図6)。その他の主な用途である生食用や加工用(フライドポテト・ポテトチップス)へのシフトはあまり見られない。これは、生食用は価格変動が大きく、また加工用は肥料・農薬・製品規格など栽培基準が厳しく、転換は容易ではないためである。一方、加工用から、細かな基準を必要としないでん粉原料用へのシフトは、相場次第で十分に行われ得る。
(5)今後の見通し
ばれいしょでん粉産業は、EU加盟に伴う生産割当の導入や、企業合併や農家の組織化への緩慢な動きなど、その潜在能力を生かせていない状態が続いてきた。しかしながら、2012年の規制緩和を経て、生産者もでん粉製造企業も、生産拡大に意欲的な様子がうかがえる。これは、EU全体では、補助水準の削減によるマイナスの影響を懸念する方が大きい中で、特徴的な傾向といえる。もちろん、政府とでん粉製造企業の支援により、規制緩和に伴う収入の減少を最小化していることが、その前提にある。そして、実際にでん粉原料用ばれいしょの生産量は、規制緩和後に増加傾向となっているのである。
一方で、農家の組織化・規模拡大や、でん粉製造企業の設備投資や合併・買収による大規模かつ効率的な生産の拡大が不可欠とみられる。歴史的な経緯に根差した独立志向の解消は容易ではないが、社会主義時代を知らない若年層は、インターネットを通じた情報交換に積極的であるなど、これまでと異なり、組織化につながる動きも表れている。また、でん粉製造企業の製造能力などは、依然として、ドイツやオランダに遅れを取っているのが実情である。そうした点でも積極的な設備投資が不可欠であるが、一時期、でん粉製造最大手2社間の合併が計画される(最終的に頓挫)など、変化の兆しは見られている。いずれにしろ、既に大手2社は世界各国に輸出展開しており、今後の成長の鍵は、大手2社を中心とした、でん粉製造企業の大規模集約化にあるとみられている。
(1)でん粉原料用ばれいしょの生産動向
ばれいしょ生産は、北東部の下オーストリア州が中心であり、生産量全体の約8割を占めている(図7)。さらに、同州の中でも、北東部が生食用ばれいしょの主産地であり、北西部がでん粉原料用ばれいしょの主産地となっている。これらの地域は、気象・土壌環境上、ばれいしょ以外の作物の生産可能性は限られており、ばれいしょは地域の農業・経済を支える重要な作物となっている。また、オーストリアでも、でん粉原料用ばれいしょは輪作体系の中に位置付けられており、「ばれいしょ→冬小麦→ナタネ→冬小麦→ばれいしょ」という4輪作などが一般的である。生産サイクルとしては、3月末から5月にかけて種いもを植え付け、8月末から10月にかけて収穫する。
近年のでん粉原料用ばれいしょの生産量は、2012年をピークに減少傾向で推移している(図8)。これは、規制緩和が実施された影響とみられている。すなわち、生産割当の廃止という増産インセンティブよりも、最低価格保証の廃止や、直接支払いの単一支払いデカップル化が強く影響した結果である。ただし、作付面積に関しては、その後、減少幅が鈍化しており、生産者はそれほど悲観的な見通しは持っていないとみられる。
また、オーストリアのばれいしょ生産の特徴は、オーガニック生産の広がりである。オーガニックばれいしょの作付面積は、ドイツに次ぐ第2位であり、ばれいしょ作付面積の13%はオーガニック生産である。でん粉原料用においても同様の傾向が見られ、全体の1割前後は、オーガニック生産とみられている。こうした傾向は、オーガニック生産を求める一定の需要が背景にあり、でん粉製造企業との取引価格も、通常のばれいしょの3倍と言われている。
(2)ばれいしょでん粉の製造動向
ばれいしょでん粉製造企業は、「アグラナ社」1社のみである。同社は、中東欧諸国を中心に世界各国にでん粉製造工場、製糖工場、果物加工工場を有する多国籍食品加工企業でもある。オーストリア国内では、ばれいしょでん粉製造工場以外に、コーンスターチ製造工場、小麦でん粉製造工場も有している。また、でん粉原料用ばれいしょについては、オーストリア国内にとどまらず、国境を接するチェコ南部からも調達している。
アグラナ社では、でん粉部門の販売収入は、天然でん粉および化工でん粉、糖化製品、エタノール関連製品が、ちょうど3分の1ずつ分け合っている。でん粉製品は、繊維・建設・化粧品産業向けのでん粉誘導体、乳幼児食品向けのマルトデキストリン、製紙産業向けの天然でん粉など多岐にわたるが、これらの原料にはコーンスターチや小麦でん粉も含まれる。
でん粉原料全般の状況としては、ばれいしょでん粉の小麦でん粉との競合が年々高まっている。従来、品質が良いとされるばれいしょでん粉の利用が適していた製品においても、製造技術の進歩に伴い、小麦でん粉により代替される可能性が高まっているためである。
(3)でん粉原料用ばれいしょ取引をめぐる動向
オーストリアのでん粉原料用ばれいしょ生産者は、「でん粉原料用ばれいしょ生産者協会」を組織し、アグラナ社に対して集団で価格交渉を行っている。これは、アグラナ社という巨大独占企業に対し、個別の生産者が交渉を優位に行うことが困難なためであり、加入は義務ではないが、実際はほぼすべてのでん粉原料用ばれいしょ生産者が加入している。
両者の交渉の結果、契約は、年当初に締結され、でん粉含有率に基づき、毎月支払われる。支払いは、基礎的支払いと追加払いの2段階となっている。まず、でん粉含有率19%を基準として基礎的支払いが行われる。加えて、両者の交渉によって定められた一定の上乗せ払いや、土壌付着量が少ないばれいしょに支払われる奨励金、出荷を工場のオフピーク期に調整することで支払われる奨励金などが支払われる。
CAPとの関連では、2012年の補助水準引き下げに伴い、同社は、原料の安定調達を重視し、従来は困難としてきた買取価格の引き上げを実施した。2013年以降も、でん粉原料用ばれいしょ生産量の減少傾向は続いているものの、作付面積の減少幅は鈍化している。また、支払い価格引き上げの結果、生産者の受給総額は、2012年の規制緩和の前後であまり変化していないとみられている(表6)。
なお、同協会は、オーストリア政府に任意カップル支払いを求めたものの、2015年現在、同国政府は、牛肉および子牛肉、羊肉および山羊肉の2品目以外には任意カップル支払いを行わないという方針である。
(4)他用途との競合
ばれいしょ作付面積の4分の1がでん粉原料用となっている(図9)。通常、生食用ばれいしょの価格は、でん粉原料用ばれいしょより高いが、でん粉原料用から生食用への切り替えはあまり見られない。これは、生食用ばれいしょの市場は、価格は高いものの需給動向に左右され、変動が大きく不安定であるからである。一方、でん粉原料用は、価格は安いものの、でん粉製造企業との契約取引で価格変動が少ないため、安定的な経営が可能となっている。
(5)今後の見通し
オーストリアのばれいしょでん粉産業の特徴は、生産者(協会)とばれいしょでん粉製造企業が1対1の関係にあることである。そのため、生産者は、企業に対して有する一定の交渉力により、価格を引き上げることで、規制緩和により危惧された影響を抑えることに成功している。また、同国政府からの任意カップル支払いもないが、アグラナ社の経営状態は良好なため、生産者の受給総額も近年それほど変化していない。そうしたことから、生産量は減少傾向となっているものの、現場ではそれほど深刻な状況とはなっていない。
一方で1対1の市場構造は、相互に依存度が高いことを意味している。独占市場は、生産者への支払価格の調整(引き上げ・引き下げ)が容易に行われ得ることから、ひとたびアグラナ社の業績が悪化すれば、全ての生産者に直接的な影響が出る可能性もある。以上のことから、オーストリアでは規制緩和の影響はそれほど大きくはないものの、今後のアグラナ社の業績次第で、生産者の経営環境も大きく変化することが予想される。
(1)でん粉原料用ばれいしょの生産動向
ばれいしょの主産地は、ヴィソチナ州、プラハを取り囲むように広がる中央ボヘミア州、南ボヘミア州、南モラヴィア州である(図10)。中でもヴィソチナ州と南ボヘミア州は、でん粉原料用ばれいしょの主産地でもある。
でん粉原料用ばれいしょは輪作体系に組み込まれており、「ばれいしょ→トウモロコシ→ナタネ→麦類(小麦、大麦、カラス麦)→ばれいしょ」という4輪作などが一般的とされている。生産サイクルとしては、3月末から5月にかけて種いもを植え付け、8月末から10月にかけて収穫する。
近年のでん粉原料用ばれいしょの生産量を見ると、長らく減少傾向で推移した後、2013/14年度を底に回復に転じている(図11)。これは、規制緩和後、でん粉製造企業の取引価格の引き上げとチェコ政府の任意カップル支払いによる補助の効果によるものとみられている。
ところで、ばれいしょに限らず、チェコの農業生産で特徴的なことは、EUでも有数の大規模経営が主体となっていることである。これは、社会主義時代、国家主導で強制的に農地が集積され集団農場となり、大規模化が進んだことに起因している。民主化後も当時の大規模農場がそのまま大規模法人経営となり現在に至っている。
(2)ばれいしょでん粉の製造動向
ばれいしょでん粉製造企業は2社存在する。1社はプルゼニ州のリッキビュー・アミレックス社であり、もう1社はヴィソチナ州に位置するスクロバニー・ペルフリモフ社である。また、チェコとの国境近くに位置しているオーストリア唯一のばれいしょでん粉製造企業であるアグラナ社も、チェコの生産者からばれいしょを調達している(表7)。
このうち、最大のばれいしょでん粉製造企業であるリッキビュー・アミレックス社は、生産者が所有する企業であり、同じく生産者所有のでん粉製造企業であるスウェーデンのリッキビュー社の傘下にある。スウェーデンのリッキビュー社が食品向け天然でん粉・化工でん粉を製造し、チェコのリッキビュー・アミレックス社が工業向けのデキストリンを製造しており、製造品目をそれぞれ特化することで、効率化を図っている。
(3)でん粉原料用ばれいしょ取引をめぐる動向
生産者所有のリッキビュー・アミレックス社と、民間企業のスクロバニー・ペルフリモフ社では、企業形態が異なるため、契約・価格決定方法が異なる。リッキビュー・アミレックス社は、生産者自身が経営の主導権を握っているため、当然に経営陣は、でん粉原料用ばれいしょの取引価格の最大化を目指す。一方、スクロバニー・ペルフリモフ社と生産者は、チェコには集団で価格交渉を行う生産者組織が存在しないことから、個別に価格交渉を行っている。ただし、スクロバニー・ペルフリモフ社も、低価格ではリッキビュー・アミレックス社に生産者を奪われるため、両者の取引価格は、実際にはおおむね同水準とみられている。
でん粉原料用ばれいしょの取引価格の支払いの仕組みの一例を示すと、まず、でん粉含有率16%を基準に基本価格(約60ユーロ(6960円)/トン)が支払われる。これに加え、同23%まで含有率に応じて上乗せ払いを行う一方で、同16%を下回るものは、基本価格から割り引かれ、買い取る最低基準を同13%としている。また、輸送費は同15%以上に対してはでん粉製造企業が負担するが、それを下回る場合は負担しないこととしている。以上の仕組みを通じて、でん粉製造企業は、生産者に対し、でん粉含有率の高いばれいしょの生産を促している。
チェコでは、規制緩和に伴うでん粉原料用ばれいしょの生産量の落ち込みを受けて、でん粉製造企業は、取引価格を引き上げ、原料の安定調達に努めた。さらに、チェコ政府が任意カップル支払いを行っているため、規制緩和の前後で生産者の受給総額はあまり変化していない。
(4)他用途との競合
ばれいしょ全体の6割近くが生食用であり、1割超がでん粉原料用に仕向けられている(図12)。でん粉原料用から生食用へのシフトは特に見られず、むしろ、時々の需給動向によって価格変動の大きい生食用よりも、でん粉製造企業との契約取引により、予め価格や収益の見通しが立つでん粉原料用を好む生産者も少なくない。また、特に生食用ばれいしょでは、ドイツやオランダからの輸出攻勢にさらされており、生食用の作付面積は、過去10年で3割以上減少している。生食用ばれいしょ価格は、欧州全体の需給で価格が決まるため、国内で不作であっても、価格が上がらない構造になっている。さらに、国内には、ばれいしょ用の倉庫が十分にないため、年間を通して供給できない弱みもある。
(5)今後の見通し
チェコでは、2012年の規制緩和から数年を経て、でん粉原料用ばれいしょの生産量は回復傾向にある。これは、政府やでん粉製造企業が生産維持のため、支援を行ってきたことによる。また、ばれいしょでん粉製造企業が寡占状態のため、生産者獲得競争が激しいことも関係している。さらに、大規模化が進んでおり、価格の安定するでん粉原料用の生産を志向する農場が多いという背景もある。加えて、2013年改革を経て、2020年までCAPの大枠はすでに固まっており、今後の見通しが確かな面も生産を後押ししている。これらを総合すると、チェコにおいて規制緩和の影響はそれほど大きくなく、むしろ生産拡大の可能性は十分にあると言える。
一方、課題は、でん粉製造企業と交渉する生産者側の組織が存在せず、価格交渉力が弱い点であり、欧州委員会からも指摘されているとのことである。また、生産者の多くは貯蔵設備を持たず、1年のうち限られた期間しか原料を供給できていない現状もある。従って、今後の生産拡大の鍵は、生産者の組織化と設備投資にかかっている。