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2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

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最終更新日:2017年5月10日

2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

2017年5月

 本稿中の為替レートは2017年3月末日TTS相場の値であり、1米ドル=113円(113.19円)、1タイバーツ=3.34円、1ユーロ=121円(121.29円)である。

トウモロコシ・コーンスターチ

米国

【需給動向:トウモロコシ】
総消費量は据え置き

 2017年4月時点の米国農務省(USDA)による2016/17穀物年度(9月〜翌8月)のトウモロコシ需給予測によると、供給関連の数値は前月から据え置かれた。総消費量も、前月から据え置かれたものの、その内訳として、エタノール向けが上方修正された一方、飼料など向けは下方修正された。エタノール向けの増加は、直近のトウモロコシを原料としたエタノール生産の増加傾向が背景にある。

【価格動向:トウモロコシ】
生産者価格は上下幅が縮小

 同じく2016/17穀物年度のトウモロコシの生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり3.25〜3.55米ドル(367円〜401円)と上値の下落と下値の上昇により上下幅が縮小したものの、その中間値は3.4米ドル(384円)と前月と同価格になっている(表2)。

表2 米国のトウモロコシの需給見通し

【貿易動向:トウモロコシ】
2月の輸出量は9カ月連続で前年同月比増

 2017年2月のトウモロコシ輸出量は、506万1709トン(前年同月比52.5%増、前月比9.1%増)と9カ月連続で前年同月を上回った(図3)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本   138万9446トン  
 (前年同月比2.1倍、前月比33.0%増)
メキシコ 102万8972トン  
 (同6.7%減、同13.2%増)
韓国    51万1879トン
 (同51.8%増、同7.8%増)

 なお、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり176.66米ドル(1万9963円、前年同月比2.5%安、前月比0.6%高)と前年同月を下回った。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれていない。

図3 米国のトウモロコシ輸出量および輸出価格の推移

【貿易動向:コーンスターチ】
2月の輸出量は4カ月連続で前年同月比増

 2017年2月のコーンスターチ輸出量は、7618トン(前年同月比0.1%増、前月比11.6%減)と4カ月連続で前年同月を上回った(図4)。同月の国別輸出量は、次の通り。

メキシコ 2713トン  
 (前年同月比2.3倍、前月比29.0%減)
カナダ  2537トン  
 (同17.7%減、同2.3%減)
日本    10トン  
 (同85.7%減、同2.0倍)

 なお、同月の中西部市場のコーンスターチ価格は、1ポンド当たり5.20セント(5.9円、前年同月同、前月比6.3%高)と前年同月と同水準であった。

図4 米国のコーンスターチ輸出量および市場価格の推移

タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
2017年のキャッサバ生産量は前年比増の見込み

 タイ農業協同組合省農業経済局によると、2017年のキャッサバの収穫面積は864万ライ(138万2400ヘクタール、前年比3.1%減)、生産量3119万トン(同2.1%増)、1ライ当たり収量3.61トン(10アール当たり収量2.3トン、同5.3%増)と見込まれている。

【価格動向】
タピオカでん粉国内価格、キャッサバ農家価格ともに低水準で推移

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、20 17年4月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり11.2バーツ(37円、前年同期比13.8%安、前週同)と前年同期を下回っている (図5)。
 また、キャッサバ農家価格は、1キログラム当たり1.50バーツ(5.0円)と前年同月および前月を下回った(表1)。

 現地報道によると、キャッサバ農家価格が低水準で推移している理由の一つとして、タピオカチップ工場が中国からの需要の鈍化で、キャッサバの買い取りを停止していることが挙げられている。中国では、アルコール製造工場などタピオカチップを原料とする施設の衛生状態の監視が強化され、閉鎖に追い込まれた工場も複数あるという。キャッサバ生産者から組織されるキャッサバ農家連盟の関係者は、このようなキャッサバ価格の下落を受け、生産コストを下回る価格での輸出を禁止する最低輸出価格の導入を政府に求めているという。

図5 タイのタピオカでん粉価格の推移

【貿易動向】
2月の輸出量は8カ月ぶりに前年同月比減

 2017年2月のタピオカでん粉輸出量は、24万6487トン(前年同月比31.2%減、前月比12.4%減)と8カ月ぶりに前年同月を下回った(図6)。同月の国別輸出量は、次の通り。

中国      12万6122トン  
 (前年同月比30.8%減、前月比8.6%減)
インドネシア  3万1391トン  
 (同62.6%減、同39.8%減)
台湾      2万3267トン  
 (同14.6%減、同13.0%減)
日本      1万2707トン  
 (同1.1%増、同13.3%増)
マレーシア  1万2682トン  
 (同22.8%減、同19.4%減)

 また、同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり340米ドル(3万8420円、前年同月比10.5%安、前月同)と引き続き前年同月を下回って推移している(図6)。

図6 タイのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ベトナム

【生産動向】
1月の作付面積は、前年同月比減

 ベトナムの調査会社AgroMonitorによると、2017年1月の調査では、キャッサバの作付面積は、8万249ヘクタール(前年同月比1.6%減)となった(表3)。キャッサバ価格が低水準で推移していることから、主要生産地域である南東地域のタイニンで多くの生産者が他の作物の栽培を選択していることなどが、作付面積減少の要因とみられている。

 キャッサバの供給動向を見ると、北部内陸山岳地域では、主要生産地であるソランやイエンバイでの収穫が1月から始まったことにより、十分な量が供給されている。中央高原地域では、タピオカチップの乾燥に適さない不安定な気象条件が続き、例年以上にキャッサバのでん粉仕向け比率が高まっている。一方、タイニンでは、キャッサバの収穫はほぼ終了しているため、同地域のでん粉工場は、主にカンボジアから原料を輸入しているものの、十分な量を確保できていない状況である。

表3 ベトナムのキャッサバ作付面積

【貿易動向】
1月の輸出量は前年同月および前月から大幅に減少

 AgroMonitorによると、2017年1月のタピオカでん粉輸出量は、12万3014トン(前年同月比44.9%減、前月比51.8%減)と前年同月および前月から大幅に減少した(図7)。これは、最大の輸出先である中国が、交通渋滞などによる大気汚染を懸念し、多くの物資の輸送を制限したことが背景にある。

 なお、同月の輸出量は、香港およびシンガポール向けが急増し、1月単月の輸出量は両輸出先とも前年1年分並みの水準となった。

図7 ベトナムのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
2月の輸出量は5カ月連続で前年同月比増

 2017年2月のばれいしょでん粉輸出量は、3万2026トン(前年同月比63.9%増、前月比5.6%増)と5カ月連続で前年同月を上回った(図8)。同月の国別輸出量は、次の通り。

韓国  5743トン  
 (前年同月比46.2%増、前月比18.8%増)
米国  4969トン  
 (同9.6%減、同28.0%増)
中国  1614トン  
 (同2.1倍、同14.1%増)
日本  926トン  
 (同10.5%増、同81.6%増)

  同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり608ユーロ(7万3568円、前年同月比4.2%安、前月比1.5%高)と前年同月を下回った。

図8  EUのばれいしょでん粉輸出量および輸出価格の推移

コラム ドイツのばれいしょとばれいしょでん粉の需給動向

 日本とほぼ同じ面積を持つドイツは、EU最大のばれいしょでん粉生産国である。本稿では、近年のドイツのばれいしょとばれいしょでん粉の需給動向について報告する。

1. ばれいしょ生産
 近年の生産量は、およそ1000万トンで安定して推移しており、2016年は、EU全体の生産量(5280万トン)の19.3%を占める約1020万トンと見込まれている(表1)。ばれいしょの主産地は、ニーダーザクセン州、バイエルン州およびノルトラインヴェストファーレン州であり、これら3州で生産量の8割弱を占めている()。

 





 

2. でん粉原料用ばれいしょ生産
 前述の通り、近年のばれいしょ全体の生産量はある程度安定しているものの、でん粉原料用ばれいしょは、生産者数、作付面積、生産量いずれも減少傾向で推移しており、2005年から2015年までの間に生産者は約半数に、作付面積は6割弱までそれぞれ減少している(表2)。

 この要因としては、飼料向けが増加傾向にあることや、EU共通農業政策(CAP)の改革により、2012年にでん粉原料用ばれいしょとばれいしょでん粉に対する支援が大幅に見直されたこと(注1)などが挙げられる。

 その他、再生可能エネルギー法(Erneuerbare Energien Gesetz:EEG)が2004年に改正(注2)され、バイオガス原料として利用が高まったトウモロコシへのシフトが進んだことも、要因の一つとして考えられる。

(注1)CAP改革の詳細は、谷村千栄子「CAP改革後のばれいしょでん粉主要生産国の動向〜大きな変革期を迎えたEU〜」『砂糖類・でん粉情報』(2016年3月号)を参照されたい。
(注2)2004年の改正により、トウモロコシなどの再生可能原料を利用した電力に対して買い取り価格が加算される「再生可能原料ボーナス」が新たに導入された。詳細は前述の「CAP改革後のばれいしょでん粉主要生産国の動向〜大きな変革期を迎えたEU〜」を参照されたい。


 


 


3. ばれいしょでん粉の需給動向
 でん粉原料用ばれいしょの生産量減少に伴い、ばれいしょでん粉生産量も横ばいまたはやや減少傾向で推移している。その一方で、輸出入量は比較的安定しており、輸出量は消費量を上回っている(表3)。

 


 

化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(HSコード:350510、以下「化工でん粉」という)の主要輸出国の、主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通り。なお、データは「Global Trade Atlas」の出典である。

タイ

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月および前月から増加

 2017年2月の化工でん粉の輸出量は、7万1824トン(前年同月比2.4%増、前月比5.6%増)と前年同月および前月から増加した(図9)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本     1万9677トン  
 (前年同月比12.7%減、前月比12.9%減)
中国     1万5897トン  
 (同13.8%増、同44.1%増)
インドネシア  5527トン  
 (同24.3%減、同34.2%減)
韓国      5507トン  
 (同53.4%増、同17.0%増)

図9 タイの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

米国

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月および前月からやや減少

 2017年2月の化工でん粉の輸出量は、2万3278トン(前年同月比5.2%減、前月比5.2%減)と前年同月および前月からやや減少した(図10)。同月の国別輸出量は、次の通り。

カナダ  6362トン  
 (前年同月比11.8%減、前月比13.3%減)
メキシコ 2684トン  
 (同2.1%減、同0.7%増)
中国   2262トン  
 (同30.6%減、同6.2%減)
ドイツ  1181トン  
 (同17.9%増、同8.3%増)
日本   629トン  
 (同25.1%減、同12.9%減)

図10  米国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

中国

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月からかなり大きく増加

 2017年2月の化工でん粉の輸出量は、3709トン(前年同月比15.0%増、前月比46.0%減)と前年同月からかなり大きく増加したものの前月からは大幅に減少した(図11)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本       667トン  
 (前年同月比6.0%増、前月比77.7%減)
マレーシア   628トン  
 (同3.3倍、同5.0%減)
台湾      271トン  
 (同2.6倍、同27.7%減)
インドネシア  209トン  
 (同25.6%減、同40.1%減)

図11 中国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

EU

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月からかなり大きく増加

 2017年2月の化工でん粉の輸出量は、4万2113トン(前年同月比12.1%増、前月比8.4%減)と前年同月をかなり大きく上回った(図12)。同月の国別輸出量は、次の通り。

トルコ  7686トン  
 (前年同月比7.6%増、前月比7.7%増)
中国  5725トン  
 (同29.9%増、同35.0%減)
ロシア 5052トン  
 (同21.2%増、同5.2%増)
日本  2734トン  
 (同3.0%増、同19.2%減)

図12 EUの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

豪州

【貿易動向】
2月の輸出量は前年同月から大幅に増加

 2017年2月の化工でん粉の輸出量は、1828トン(前年同月比20.6%増、前月比4.8%増)と前年同月から大幅に増加した(図13)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本  1154トン  
 (前年同月比9.8%増、前月比3.6%減)
タイ   241トン  
 (同3.3倍、同2.5倍)

図13 豪州の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

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