ホーム > でん粉 > 海外現地調査報告 > 東南アジア(タイ、ベトナム)のタピオカでん粉需給動向
最終更新日:2017年9月11日
コラム1 グループ化によるキャッサバ生産性向上の取り組みナコーンラーチャシーマ県のソム・キヤット氏は、56ヘクタール(注1)もの広大な土地でキャッサバ生産を行う一方、生産者グループの代表として96名のメンバーを取りまとめている(コラム1−写真1、2)。ソム・キヤット氏は、さまざまなセミナーへの参加などにより自身の栽培方法を確立した。現在では1ライ(0.16ヘクタール)当たり7トンのキャッサバを生産し(注2)、自身の栽培技術について講演も行うなど、地域を代表する生産者である。 同氏が率いる生産者グループは、近隣のでん粉工場であるSWI社主導で設立され今年で5年目となる。設立時にSWI社から提供された20万バーツ(67万8000円)の活動資金を原資にグループ内の生産者に低利率(1%)で融資を行っている。 また、グループ内で生産されたキャッサバは、基準価格にかかわらず全量をSWI社へ販売している。仮に基準価格が非常に低い場合であっても、基準価格の高い他のでん粉工場へ販売するのではなく、SWI社と買い取り価格について交渉を行うという。 ソム・キヤット氏は今後の目標について、自らは「点滴かんがいを実施し、現在の1ライ当たり7トンから同9トンまで単収を伸ばしたい」とした一方で、「グループ内には単収が同3トンにとどまり、赤字となっている者もいることから、グループ内の平均を同5トンまで底上げしたい」ともしている。同氏は、単収の差は土壌の管理にあり、常に何かを栽培するのではなく、十分に土壌を休めることが大切だとしている。 ソム・キヤット氏は「情報共有を大切にし、例えば農地の半分だけでも私の栽培方法を実践してもらい、その効果から技術を学んで欲しい。単収の向上は、本人の利益だけでなくやる気にもつながる」と意気込みを語った。 (注1)一般的な生産者の作付面積は4〜7ヘクタールである。 (注2)2016/17年度の同県の平均単収は1ライ当たり3.9トンである。
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コラム2 カンボジアのキャッサバ生産概要カンボジアは、近年キャッサバ生産量が急激に増加しており、今後タイやベトナムとの競合の高まりが予想される存在として注目されている(コラム2−図)。
カンボジアで最も栽培されている作物は米であり、農作物栽培面積の7割を占めている。キャッサバは1割程度となっているが、米の次に多く栽培されている主要作物である(コラム2−表1)。
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イ.仕向け先
ベトナムでは、生産されたキャッサバのうち、45%はでん粉、40%はチップ・ペレット、15%は加工しないまま飼料へ仕向けられる(図11)。 最も割合の多いでん粉向けについて見ると、ほとんどが天然でん粉向けに使用され、その多くは輸出される。輸出の80%以上が中国向け、残りがインドネシア、フィリピン向けなどとなっている。
(2)タピオカでん粉の製造企業の動向
ベトナムの調査会社AgroMonitorによると、2015/16年度(8月〜翌7月)のタピオカでん粉生産量は280万トンであり、そのうち約5割を主産地タイニン省を含む南東地域、約1割をタンホア省を含む北部中央地域が占めている。 ここでは、タイニン省とタンホア省のでん粉工場を紹介する(図12)。