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最終更新日:2017年11月10日
コラム1 主要でん粉企業の再編の動き近年、でん粉業界では世界各地で企業の買収、統合などが生じており、でん粉の生産拡大やさらなる効率化が図られている。米国に本拠を置く大手食品企業であるADM(Archer-Daniels-Midland)社(注1)は2016年12月、前年11月に買収したトルコおよびブルガリアのコーンスターチ製造工場の製造能力を拡大する計画を発表した。これらは、欧州と中東におけるでん粉製品市場に大きな拡大の可能性があるためとしており、同社は、両国の地理的優位性を生かすことで、多種多様なでん粉製品や糖化製品の販売を拡大したいとしている。 また、同社は同年、ハンガリーのコーンスターチ製造工場の株式の50%を取得した上、英国の同業のTate & Lyle社からモロッコのコーンスターチおよび糖化製品製造工場を買収している。さらに、2017年7月にはフランスの食品原料総合企業であるVivescia Industry社(注2)と、同社傘下の小麦でん粉製造企業であるChamtor社(注3)の買収を発表しており、ADM社の今後の小麦でん粉の生産動向が注目される。 また、タイの大手タピオカ製品およびバーミセリ(注4)製品製造企業であるThai Wah Plc(TWPC)社は2017年2月、2019年までの東南アジア諸国における投資計画を発表している。これによると、TWPC社は、2017年初めにカンボジアとベトナムにて、それぞれ子会社を設立し、カンボジアでは、タピオカでん粉の製造・流通を行い、ベトナムでも、バーミセリ製品の製造・流通を行う。同社は、具体的な計画は未定であるが、ラオスやミャンマーでの投資機会にも視野を広げるとしている。 (注1)ADM社は、米国を拠点に、世界展開する農業関連製品・食品原料などの製造企業。428の原料供給地、280の原料加工工場はじめ、世界160カ国以上で事業を展開。 (注2)Vivescia Industry社は、麦芽製造、小麦粉製粉、トウモロコシ加工などを行う食品原料などの製造企業。 (注3)Chamtor社は、Vivescia Industry社傘下の小麦由来のでん粉、糖化製品、タンパク製品の製造企業。 (注4)麺類の一種で、代表的なものは、コメを原料とするビーフン。TWPC社はビーフンの他、豆類を原料とするバーミセリも製造している。 |
コラム2 変化が予想されるEUのでん粉市場EUでは、砂糖価格の安定と、てん菜生産者の所得の確保を目的とした砂糖および異性化糖の生産割当制度(注)が2017年9月末をもって廃止された。このことについて、欧州のでん粉業界団体であるスターチ・ヨーロッパは、「今後の市場の予測は困難であり、原料作物や砂糖の価格などさまざまな要因に左右される」と前置きした上で、「将来のEUの異性化糖市場は、現在の年間約72万トン(生産割当数量)から200万〜300万トンに増加する」として、市場拡大を見込んでいる。また、EUのでん粉製造企業は、新たな市場環境に備え設備投資などを行っており、今後のEUのでん粉市場に変化が生じることが予想されている。また、2019年3月末までに英国のEU離脱が予定されている。同国はでん粉の純輸入国であり、タピオカでん粉以外の多くのでん粉をEU加盟国に依存している(コラム2−表)。世界貿易機関(WTO)が、EUからの輸入に関税が必要と判断した場合、離脱後は同国内のでん粉価格が上昇すると推測されるため、同国のでん粉生産が増える可能性もある。 これらのことから、今後のEUでん粉市場の動向について注視する必要がある。 (注)同制度により、てん菜糖の生産量は年間1350万トン、異性化糖の生産量は年間約72万トンに制限されていた。
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