EUのでん粉生産の状況 〜コーンスターチを中心に〜
最終更新日:2019年4月10日
EUのでん粉生産の状況 〜コーンスターチを中心に〜
2019年4月
【要約】
EUのでん粉生産は、ばれいしょ、小麦およびトウモロコシを主な原料として28カ国中20カ国で行われ、多くを域内で消費している。生産の約半分を占めるコーンスターチについては、緩やかな増産傾向にあり、今後、糖化製品などを中心に需要は堅調に推移するとみられる。
はじめに
スターチヨーロッパ(Starch Europe)(注)によると、EUでは主にトウモロコシ、小麦およびばれいしょを原料とするでん粉が生産されている。EU加盟国28カ国中20カ国(アイルランド、エストニア、リヒテンシュタイン、クロアチア、ギリシャ、キプロス、マルタ、スロベニアを除く20カ国)、75拠点ででん粉生産が行われている(図1)。
(注)EUにおいて、でん粉生産者が加盟する7協会やでん粉を製造する26企業を統括する団体。これらの協会および企業でEUにおけるでん粉の95%を生産する。
EUにおけるでん粉製造は、1970年代にトウモロコシをコーンスターチに加工する米国の技術がEUへ伝わり、EUでもコーンスターチ生産が行われるようになったことが始まりである。そして、トウモロコシ以外にも生産量が豊富な小麦やばれいしょを原料とするでん粉が生産されることとなったという。
EUのでん粉生産量のうち、約半分を占めるのはコーンスターチである。世界のコーンスターチ生産量(1815万トン〈2017年〉)を地域別に見ると、EU(200万トン)はアジア(1259万トン)、北米(249万トン)に次ぐ第三位の生産量を誇る。コーンスターチは、さまざまな食品に含まれわれわれも気づかないうちに口にしている他、製紙などの非食用の製品にも利用されている。
本稿では、我々の生活に身近であるが、製品の原料として消費されることが多く、物の流れとして見えづらいコーンスターチについて、世界有数の生産地の一つであるEUにおける需給状況およびでん粉全体の原料用作物の需給の状況について、2018年12月に行った現地調査を基に報告する。
なお、EUにおけるでん粉の生産、特にコーンスターチについては、後述のとおり、多国籍企業を中心に寡占的かつ工業的に行われており、政府や公的機関の公表する統計データが少ないため、一部、推計により論述する。
1.でん粉原料、でん粉などの需給動向
(1) EUのでん粉原料用作物の生産
EUで生産されるでん粉原料用作物は、前述の通り、主にばれいしょ、小麦およびトウモロコシである。でん粉原料用作物の変化を見てみると、直近5年間は、大きな増減はなく安定的に推移している(図2)。
EUにおけるトウモロコシ(でん粉原料以外の用途のものを含む)作付面積の推移を見てみると、ここ数年で減少傾向にある(図3)。2018/19年度(2018年10月〜翌9月)の生産量が減少しているのは2018年に発生した干ばつの影響とみられ、前年比4.6%減の6200万トンとなったものの、同年度の期首在庫が豊富にあったことから、供給量全体はわずかに増加している(図4)。
なお、ばれいしょは輪作体系に組み込まれていることが多く、以前はEUの共通農業政策(CAP)による支援があったものの、近年、EUではでん粉原料用作物に限らず、農業政策への予算は削減される傾向にある。なお、小麦とトウモロコシについては以前から補助金などの公的な支援は存在しない。
また、EUでは2018年に深刻な干ばつが発生し、北部を中心とした熱波の影響により、多くの農家が干ばつの被害を受けた。特に、北部で多く生産されるでん粉原料用ばれいしょを含めて、圃場によっては全滅、そうでなくても生産量は激しく落ち込み、歴史的に見ても深刻な不作という報道がされた。また、畜産において、干ばつにより夏季に飼料として使用する牧草が不足したことから、でん粉原料となり得るトウモロコシや小麦の飼料穀物としての需要が高まり、これらの穀物は、例年よりも多く飼料へ仕向けられる事例もあったという。
なお、2018年12月初旬に行ったスターチヨーロッパへの聞き取りによると、ばれいしょでん粉の最大の生産国であるドイツではでん粉原料用ばれいしょに大きな被害が出たものの、灌漑設備が整っているデンマークなどのばれいしょでん粉生産国における影響は軽微であったという。でん粉生産に対する2018年の干ばつの影響については、結論付けるのは時期尚早であり、今後、生産量などのデータによって明らかになるとみられることから、引き続き注視する必要があるというコメントがあった。
(2)EUにおけるでん粉の生産
近年のEU産でん粉の生産量を見ると、原料のでん粉含有量の違いなどから、コーンスターチが半分近くを占め、小麦でん粉、ばれいしょでん粉という順位になる。5年間でわずかに増加しつつも、いずれのでん粉も安定的に生産されている(図5)。
EUのトウモロコシ供給量のうち、でん粉へ仕向けられるのは一部であるが、2017/18年度の850万トンから、2018/19年度は900万トンに増加している(図6)。
でん粉生産量をわずかに押し上げているのは、小麦でん粉とコーンスターチで、今後も緩やかな増加が見込まれている。一方、ばれいしょでん粉はもともとの生産量が他のでん粉よりも少ないことに加え、2017年にでん粉用ばれいしょがCAPの支援対象外となったことから漸減傾向にある。
また、少量ではあるものの、豆類(注1)を原料とするでん粉も作られており、EUや北米での需要の高まりから、今後、市場拡大が期待されている。豆類でん粉は、他のでん粉よりもアミロースが多く、ゲル化しやすいといった特徴がある。そのため、結合剤や増粘剤として、菓子類やパン、加工肉などさまざまな食品分野で用いられている。また、グルテン(注2)を含まないため、グルテンフリーをうたう食品にも使用されている。なお、EUにおいてかんしょでん粉はほぼ生産されていない。
(注1)ここでは、春雨などの原料となる緑豆(mung beans)とは異なり、エンドウマメ(pea)を原料とするものを指す。
(注2)小麦などに含まれるタンパク質の一種。自己免疫疾患であるセリアック病発症の引き金となる他、小麦アレルギー患者のアレルゲン(アレルギー誘発物質)の一つでもある。
EUでは、米国系のADMやCargillをはじめ、フランス系のRoquette FreresやTereosなどが国ごとではなく、複数の国ででん粉の生産を行い、EU域内で横断的に供給している。コーンスターチについては、複数の企業がフランスをはじめとする国々で生産を行っている(図7、表1)。
EUに限らず世界的に見ても、でん粉製造は多国籍企業によって寡占的・工業的に行われており、各企業独自の商品が生産されている。その生産技術については機密扱いとなっていることも多く、でん粉関連企業が加盟するスターチヨーロッパの担当者であっても、会員企業の生産施設への立ち入りのためには、写真の撮影をしないなどといった誓約書が必要となるなど、厳しく制限されているという。
なお、前述の豆類でん粉について、現在の市場規模は小さいものの、EUや北米における植物性食品の需要の高まりから、でん粉製造時の副産物である豆由来のタンパク質や繊維への需要が高まっていることもあり、今後の成長が期待されている。世界的にも豆類でん粉の生産は、欧州の企業がけん引している。Emsland Group(ドイツ)、Roquette Freres(フランス)、Vestkorn Milling AS(ノルウェー)、Cosucra Groupe Warconing SA(ベルギー)が製造を行っており、遺伝子組み換えでない原料に限って使用している企業もある。また、豆類でん粉および豆類タンパク質増産のため、生産ラインを拡張する動きもみられ、フランスのRoquette Freresにおいてはフランスおよびカナダにおける大規模な生産ライン拡張の投資が行われることが発表されている。
(3)EUにおけるでん粉の需要
EUにおけるでん粉の加工形態としては、最も多いのが糖化製品で、天然でん粉、化工でん粉と続く(図8)。糖化製品の原料としては、コーンスターチと小麦でん粉がおおよそ半分ずつ利用されているとみられる。ばれいしょは、糖化製品よりも天然でん粉および化工でん粉に仕向けられることが多い。
また、でん粉製造時に、タンパク質、繊維や胚芽などの副産物が年間500万トンほど発生し、食品や家畜の飼料などへ利用される。しかし、前述の通り、現在、動物性タンパク質に代わり、植物性タンパク質への需要が増加傾向にあり、副産物として生産されていたタンパク質の価値が上昇している。その結果、でん粉製造工場では、むしろタンパク質の副産物としてでん粉を製造するような意識の逆転現象も起きているとのことであった。
また、EUにおいても、でん粉は食品・非食品とさまざまな製品の原料として使用される。でん粉製品の仕向け先を見ると、食品向けが58%と半分以上を占め、残りの製紙や段ボール、薬品などの非食品向けが42%となる。菓子類・飲料においては、コーンスターチなどを原料とした異性化糖が多く用いられているとみられる(図9)。
コーンスターチの販売量を国別に見てみると、ドイツ、フランス、スペインでEU全体の6割を占める(表2)。イタリアを除き、いずれの国もほぼ横ばいで推移している。
(4)EUにおけるコーンスターチの輸出入
EUで生産されたコーンスターチの多くは、EU域内で消費されているとみられ、域外に対する輸出量は多くない(表3)。なお、日本向けにもわずかであるものの、EU産コーンスターチが輸出されている。また、EU域内で生産されたコーンスターチで需要を満たしており、域外からの輸入量も少ないとみられる(表4)。
世界的に見ると、コーンスターチは、トウモロコシ生産大国である米国や中国などにおいて大量かつ安価に生産されていることから、価格での優位性が低いEU産は、輸出というよりは域内への需要へ応えることが優先されているとみられ、近隣のトウモロコシ生産国などから、コーンスターチの輸入も行われていることからも、今後、域外への輸出量が増加する可能性は低い。
なお、2018年に締結、2019年に発効した日EU経済連携協定(日EU・EPA)では、でん粉について、日本が6400トンの輸入枠を設けることとなった。すべてのでん粉を対象に、この枠は6年をかけて7150トンまで増加する予定である。
しかし現在、日本が輸入しているEU産でん粉の多くはばれいしょでん粉であり、EU産コーンスターチは域内消費が主であることに加え、現地関係者もコーンスターチの輸出については考えられないとのコメントがあったことから、今後も日本向けをはじめとするEU産コーンスターチ輸出が大きく増加する可能性は低いとみられる。
コラム1 でん粉を原料とする生分解する製品
EUでは地球環境への意識の高まりから、生分解するプラスチックなど環境負荷の低い製品に対する関心が高い。これらの原料として、比較的安価なコーンスターチが利用されている他、ばれいしょでん粉が使用されている事例も見られる。
イギリスでは、大手新聞社がばれいしょでん粉を原料とする生分解性の包装材を利用することとした。同社によると、この包装材は生ごみを堆肥にするコンポストなどに捨てることができるという。ロンドンをはじめとする都市で、配送・販売される新聞(注1)は2019年1月からこの包装材に切り替わっており、それ以外の地域は今後数カ月の間に順次切り替わる予定である。
また、同国では、若手デザイナーやエンジニアの育成を目的に創設された「JAMES DYSON AWARD」(注2)にスウェーデンのルンド大学の学生が考案した「ポテトプラスチック(ばれいしょでん粉を原料とした生分解性プラスチック)」が最終候補の20作品に選出されたことからも、注目を集めるトピックの一つであることがうかがえる。
有機食品を選択する消費者に生分解性の製品は好まれる傾向にあるため、有機食品のデリ(簡易食堂)では生分解性プラスチックを利用したスプーンやナイフが用いられている(写真1)。他にも、でん粉を原料とし、生分解するゴルフボールも商品化されており、自然環境に配慮した製品を使用することが、店舗や企業への好感度を高める効果もあると見られる(写真2、3)。
ただし、石油由来のプラスチックなどと比較すると、原料費など生産コストが高くなる傾向があるため、全面的に石油由来のプラスチック製品が生分解のものに置き換わるには難しい側面がある。
(注1)イギリスでは、新聞が分冊になっていたり、別冊子などがセットになって販売されていたりするため、袋詰めされた新聞が販売されている。
(注2)イギリスの家電メーカー、ダイソンのチーフエンジニアの名前を冠したジェームズダイソン財団によって運営され、優勝者へは3万ポンド(456万円)と所属先の大学・大学院への寄附金5000ポンド(76万円)が贈られる。なお、作品のデザインおよび生産持続可能性、技術的実行可能性に加えて、製品化に必要な製造コストや販売価格などのリサーチまで行っているかが審査の対象となる。
※為替レートは1ポンド=152円(151.65円)、2019年2月末日TTS相場の値。
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2..フランスのでん粉原料、でん粉などの需給動向
(1)でん粉原料および生産について
フランスは、世界的にも農業の盛んな国の一つであり、トウモロコシや小麦、ばれいしょといったでん粉原料となる作物を多く生産し、でん粉製造設備もあることからEUにおけるでん粉生産拠点としての役割も担っている。トウモロコシ生産量(でん粉原料以外の用途のものも含む)を見てみると、世界第9位の規模である(表5)。
フランスでは、小麦やばれいしょが北部で、トウモロコシは南部を中心に生産されている。フランスで生産されるでん粉原料用作物の作付面積は多い順に、小麦、トウモロコシ、ばれいしょとなる(図10)。でん粉原料用作物の生産量を見ても同様の順番となっている(図11)。
フランスにおけるトウモロコシの生産戸数については、2013年に11万戸だったが2017年には8万5000戸まで大幅に減少している(図12)。生産面積についても年によって変化はしつつも、2013年の180万ヘクタール弱から140万ヘクタールを下回るまで減少した。1戸当たりの作付面積は拡大しつつも、離農が進んでいることに加え、生産者によっては、肥料費などの上昇によって生産コストが高いトウモロコシよりも、もっと利益率の良い小麦へ転作する傾向もあるという。さらにEU域内でみると、東欧などフランスよりもトウモロコシ生産コストが低い国々があることから、フランスにおけるトウモロコシの生産意欲は決して高いとは言えない状況にある。
フランスは、自国のトウモロコシ需要はほぼ国内で賄っており、輸入量は供給量の約5%にとどまる。2018/19年度の生産量が1割強減少しているのは、2018年4月から夏にかけてEU域内で発生した厳しい干ばつによるものとみられる(図13)。
(2)でん粉の生産
フランスのでん粉の生産量をみると、原料用作物の生産量同様の順番で、小麦でん粉が半分近くを占め、コーンスターチ、ばれいしょでん粉という順位になる(図14)。
でん粉製造企業は北部に集中しており、米国系多国籍企業のADMおよびCargill、フランス系多国籍企業のRoquette FreresおよびTereosの4社によってほぼ寡占状態にある(図15)。なお、コーンスターチについては、ADMを除く3社によって製造されている。Roquette Freres社については、トウモロコシ、小麦、ばれいしょの他に、豆類といったさまざまな原料からでん粉を製造している。
前述のとおり、フランスではでん粉製造拠点が北部に集中しているため、南部で生産されているトウモロコシは北部へ輸送され、コーンスターチ製造が行われる。一部、フランス北東のドイツと国境を接するアルザス地方でもトウモロコシ生産からコーンスターチ製造が行われている。さらに、ウクライナやブルガリアといったEU域外の国からトウモロコシが輸入され、コーンスターチへ加工される場合もあるという。
コーンスターチなどの主要なでん粉の他に、フランスでは豆類でん粉も生産されているが、市場規模が非常に小さいため、図11および図14ではばれいしょでん粉に含まれた表示となっている。
フランスでは遺伝子組み換えトウモロコシの生産は禁止されている一方、EU域内でもスペインやポルトガルでは、認可されたものであれば遺伝子組み換え作物の生産が許可されているなど、各国で対応が異なっている。EUでは、飼料用トウモロコシについて、非遺伝子組み換え作物の需要が高まっており、遺伝子組み換え作物の生産は減少傾向にあるという見方もある。
でん粉原料となる作物別に用途割合を見ると、他の原料と比べて、トウモロコシは最も多くの割合がでん粉に仕向けられている(図16)。トウモロコシおよび小麦では、飼料用とでん粉用が競合関係にあるとみられる。なお、飼料用とでん粉用のトウモロコシは、基本的に同じ品種が使われている。でん粉専用品種もあるが利用は一部に限られるという。
でん粉などの製品の販売額の割合の推移を見ると、異性化糖などが含まれる糖類が減少する一方、グルテンの需要が増え、でん粉については安定していることが分かる(図17)。
(3)フランスの食用コーンスターチおよび糖化製品の利用
日本では、和菓子など伝統的に主原料としてでん粉を使った食品があるが、洋菓子の本場のフランスではでん粉の特性を際立たせるような製品はあまり見られず、ガトーショコラなどの焼き菓子やチーズケーキなどのチルド系デザート、ケーキミックス粉などの副原材料として添加される形態が一般的である。加工食品を見ても、スープにとろみをつけるために片栗粉のように使用されるなど、表立っては見えないものの、コーンスターチはフランスの食生活に欠かせない存在である(コラム2)。
また、フランスでは、コーンスターチを原料とする糖化製品が多く生産されている。これは、清涼飲料水やジャム、菓子、アイスクリームなどをはじめとするさまざまな食品へ利用される。糖化製品は、世界的に他のでん粉に比べ安価で生産量が豊富なコーンスターチから生産されることが多い。ただし、フランスにおいては小麦でん粉が利用される場合もある。
2017年に異性化糖の生産上限が撤廃されたことから異性化糖の生産量が大幅に増加するとみられていたものの、世界的に砂糖価格が低迷している現在、生産量は増えておらず、むしろ漸減傾向にある。ただし、欧州委員会の長期的な見通しでは、徐々に増加することが見込まれていることから、今後も異性化糖の需要動向については注視する必要がある。
なお、フランスにおいても世界的な流れにもれず、健康面への意識から糖類を控える傾向にあることに加え、異性化糖を「人工的」といったイメージでとらえる人も多く、摂取を控える傾向もあるという。
コラム2 身近なコーンスターチ
フランスのスーパーマーケットや製菓材料専門店で小売りされているコーンスターチとしては「MAIZENA」という商品が一般的で、スーパーマーケットでは調味料や製菓材料の棚に陳列されている。スープにとろみをつけるためのMAIZENAの派生商品やカスタードクリームを作るときに利用されるバニラ風味のコーンスターチ入りの砂糖など、材料としてもコーンスターチの入った製品が販売されているのが見られた。なお、MAIZENAはEUの他の国や南米諸国でも販売されているコーンスターチである。
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まとめ
EUにおけるでん粉生産は、非常に安定しているものの、長期的に見ると少しずつ増加していくことが見込まれる。さまざまな食品・非食品に用いられるコーンスターチについても同様の動向が見込まれており、EUの生産拠点の一つであるフランスでも安定的に増加すると見られる。また、現在は砂糖の国際価格の影響により、EU域内では一時的に減少傾向にあるものの、コーンスターチなどを原料とする糖化製品の増産も見込まれる。
一方で、コーンスターチの原材料のトウモロコシ生産については、生産戸数が減っていることもあり、EU域内で賄い切れず生産コストが安いウクライナやブルガリアなどから一部輸入を行っている。前述の通り、今後、コーンスターチ生産量は緩やかに増加することが見込まれている一方、生産戸数の減少によるトウモロコシ生産の減産によってEUのトウモロコシ輸入量も増加する可能性がある。これらの状況から、中長期的に見るとEUは世界のトウモロコシ需給に対して、限定的ではあるが、ある程度の影響を及ぼす存在となると考えられる。ただし、コーンスターチ原料としてのトウモロコシ需要については、トウモロコシ供給量に対する割合が1割弱を占めるに過ぎないことから、EUにおけるトウモロコシ輸入量への直接的な影響は少ないとみられる。
今回の調査では、EUのコーンスターチ需要については成熟した市場であると考えられる一方、豆類でん粉の需要やでん粉の副産物であった植物性タンパク質の需要の増加など、今までと異なった流れも確認できた。世界的に見ると、人口増加や都市化などによって、今後も需要が高まるでん粉について、一大市場であるEUの動向を注視していきたい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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