でん粉の価格調整業務実績について(平成30でん粉年度)
最終更新日:2020年1月10日
でん粉の価格調整業務実績について(平成30でん粉年度)
2020年1月
はじめに
当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、コーンスターチ用輸入とうもろこしおよび輸入でん粉から調整金を徴収し、それを財源として国内のでん粉原料用かんしょ生産者やいもでん粉製造事業者に支援を行うことで内外価格差を調整し、国内のでん粉の安定的な供給の確保を図っている。
本稿では、平成30でん粉年度(平成30年10月1日〜令和元年9月30日〈以下「30SY」という〉)におけるでん粉の価格調整業務実績についてとりまとめたので、報告する。
なお、平成30砂糖年度における砂糖の価格調整業務実績については、本誌2月号において報告する予定である。
1.調整金徴収業務
(1)30SYの指標価格等
(2)でん粉の需要と供給
令和元年9月に農林水産省が公表した30SYのでん粉の需給見通しは、表2、3の通り(詳細は、
『砂糖類・でん粉情報 2019年11月号』参照)。
(3)国際相場などの動き
シカゴ先物相場(期近)は、ここ数年米国産とうもろこしが豊作となっていることを背景に、1ブッシェル当たり300セント台後半を中心に推移していたが、30SYにおいては、天候要因や米国農務省の需給報告などによる変動によって全体的に上昇し、350〜450セントの間で推移した。
具体的な相場の動きとしては、平成30年10月平均同368セントからスタートした相場は、平成31年1〜3月期は世界の期末在庫が上方修正された後に米国中西部の作付け遅延懸念が出たことから四半期平均では同370セントと同水準であった。しかし、令和元年5月に米国中西部で悪天候が続き、大幅な作付け遅延が生じたことから相場は6月に平均同435セントまで上昇した。その後、米国中西部の天候が改善するという予報および米国農務省による作付面積の拡大と作柄の改善が報告されたことにより、9月には同360セント近くまで下落した。
一方、米ドルの為替相場は、前年からの1ドル110円台前半の水準でスタートしたものの、年度半ばから円高傾向となり、同100円台後半で推移した。
(4)指定でん粉等の平均輸入価格等
30SYにおける指定でん粉等の平均輸入価格等は表4の通り。
(5)売買実績
30SYの売買数量は、輸入でん粉が前年度比4.6%増の14万トン、でん粉供給量の大半を占めるコーンスターチ用とうもろこしが同0.3%減の338万トン、売買差額は、輸入でん粉が同12.8%減の6億円、コーンスターチ用とうもろこしが同16.7%減の98億円で、合計では同16.5%減の104億円となった(表5)。
30SYの輸入でん粉の売買数量が前年に比べて増加した主な要因は、でん粉を原料とする異性化糖の清涼飲料や酒類への需要が増加傾向にあることによる。一方、30SYのコーンスターチ用とうもろこしの売買数量はほぼ横ばいとなった。また、売買差額が減少した主な要因は、前年の同期間に比べ、平均輸入価格が上昇したことに加え、調整率の引き下げによって、調整金単価が下がったことによる。
2.交付金交付業務など
(1)でん粉原料用いもおよび国内産いもでん粉の生産動向
ア.でん粉原料用ばれいしょ・ばれいしょでん粉
北海道のばれいしょ生産は、作付面積、単収ともにおおむね平年並みで推移しており、収穫量は多少の増減はあるものの約180万トンで横ばい傾向にある(表6)。なお、その4割程度がでん粉原料に仕向けられる。
平成30年産について、令和元年9月の農林水産省の需給見通しでは、夏場の低温、日照不足および大雨などにより小玉傾向となったことなどから、ばれいしょでん粉生産量は、前年比7.7%減の17万トンとなった。
イ.でん粉原料用かんしょ・かんしょでん粉
でん粉原料への仕向け量は、高齢化などにより作付面積および生産量は減少傾向にある(表7)。
平成30年産について、令和元年9月の農林水産省の需給見通しでは、台風24号による塩害やサツマイモ基腐病(立枯症状や塊根部が腐敗する症状)が発生したことから、かんしょでん粉生産量は前年比6.9%減の3万トン弱と2年連続で過去最低を更新した。
(2)交付金の交付状況など
ア.でん粉原料用いも交付金(でん粉原料用かんしょのみ)
収穫期はおおむね9月から12月ごろまでであり、いもでん粉製造事業者への売渡しを行ったものに交付金を交付している。
平成30年産については、病害によるでん粉原料用かんしょの減産を受けての交付金額は前年比8.0%減の24億円となった(表8)。
イ.国内産いもでん粉交付金
ばれいしょでん粉およびかんしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、販売したものに応じて交付金を交付している(表9)。
(ア)ばれいしょでん粉の交付状況
30SYの交付実績は、交付決定数量は前年同期比3.7%減の9万トン、交付金額は同2.4%減の16億円と数量および金額ともに減少した。
(イ)かんしょでん粉の交付状況
30SYの交付実績は、交付決定数量は前年同期比13.9%減の3万トンとなった。交付金額は、交付金単価が引き下げられた(2606円減額)こともあり、同18.5%減の10億円と減少した。
(3) 国庫納付金納付業務(でん粉原料用ばれいしょ)
でん粉原料用ばれいしょ生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、30SY(発生ベース)においては、農林水産大臣からの通知に従い、調整金収入から52億円を国庫に納付する予定である(表10)。前年度より大幅に減少した主な要因は、調整金単価の下落により調整金収入が減少したことによる。
(4) でん粉の価格調整業務における収支(見込み)
30SYの収入は、前年度と比較して、飲料向け異性化糖の需要の増加傾向に伴いでん粉の売買数量は増加しているものの、指定でん粉等調整率の引き下げなどにより調整金単価が大幅に下がったため、調整金収入は20億円減少となる104億円と見込まれる(表11)。
30SYの支出については、ばれいしょでん粉の交付金単価および交付決定数量はわずかながら減少したものの、おおむね前年並みで交付金額は16億円とされ、かんしょでん粉は、交付金単価の引き下げと交付決定数量の減少により交付金額は10億円となった。でん粉原料用かんしょも交付金単価に変動はないが交付決定数量の減少を受けて交付金額が減少し24億円とされ、でん粉原料用ばれいしょの支援は国の経営所得安定対策により行われているが、この財源として支出する国庫納付金は上記のように調整金収入の減少などを受けて納付額も大幅に減少し52億円となった。これらの結果、支出合計は前年度より15億円減少し、102億円と見込まれている。
なお、30SYを通して、調整金収入は、交付金交付および国庫納付金納付等の支出を償ったことから短期借入金は発生しなかった。
以上の結果、30SYにおける調整金収支は、2億円の黒字(前年度は7億円の黒字)と見込まれる(図2)。
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