2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2020年12月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2020年12月
本稿中の為替レートは2020年11月末日TTS相場の値であり、1米ドル=105円(104.89円)、1タイバーツ=3.52円、1ユーロ=126円(125.88円)である。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2020/21年度の世界のトウモロコシ期末在庫量、前月予測からわずかに下方修正し、前年度比4.8%減
2020年12月10日、米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、2020/21年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、2020/21年度の世界のトウモロコシ生産量は11億4356万トン(前年度比2.5%増、前月比0.1%減)へわずかに下方修正された。国・地域別に見ると、単収の増加によりウクライナで100万トン上方修正されたが、ラニーニャ現象による乾燥気候の影響を受けて作付面積が減少するアルゼンチンで100万トン、ブルガリアの生産量が下方修正されたEUで50万トン、単収の減少によりカナダで44万トン下方修正された。しかし、米国(3億6849万トン、前年度比6.5%増)およびブラジル(1億1000万トン、同7.8%増)で前年度の生産量を上回ることから、依然として記録的な生産量となることが見込まれている。
輸出量は、世界全体で1億8597万トン(前年度比8.6%増、前月比0.6%増)へわずかに上方修正された。国別に見ると、ウクライナは生産量の上方修正や、中国向け輸出量の増加見込みを受けて150万トン上方修正された。輸入量は、世界全体で1億7957万トン(同8.6%増、同0.8%増)へわずかに上方修正された。国別に見ると、アフリカ豚熱からの回復が進み、飼料向け需要が増加し、トウモロコシの国内価格が上昇している中国の輸入量が350万トン上方修正された。
消費量は、世界全体で11億5801万トン(同2.2%増、同0.1%増)へわずかに上方修正され、生産量を1445万トン上回ることとなった。国別に見ると、中国の消費量が輸入量と同程度の350万トン上方修正された。
期末在庫は、世界全体で247万トン下方修正された結果、2億8896万トン(同4.8%減、同0.8%減)と見込まれている。国別に見ると、ブラジルで50万トン、輸出量の増加が見込まれるウクライナで27万トン下方修正された。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2020/21年度の米国トウモロコシ需給予測、前回と変化なし
2020年12月10日、USDA/WAOBは、2020/21年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、米国のトウモロコシ需給見通しは、前回と変化なく、次の通りである(表3)。
国内生産量は前回と変わらず、145億700万ブッシェル(3億6849万トン(注)、前年度比6.5%増、前月同)と予測されており、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)をやや下回る過去2番目の水準となっている。
国内消費量は、飼料など向けが前年度比2.2%減となる一方、食品・種子・その他工業向け(エタノール向けを含む)が同3.1%増となり、全体では121億7500万ブッシェル(3億926万トン、同0.5%増、前月同)と予測されている。
輸出量は、中国向けの輸出量が増える見込みであることなどから、26億5000万ブッシェル(6731万トン、同49.0%増、前月同)と予測されており、記録的な輸出量となる見通しである。
期末在庫は、輸出量が前年を大幅に上回ることから、17億200万ブッシェル(4323万トン、同14.7%減、前月同)と予測されており、2013/14年度以来の低水準となる見通しである。その結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は11.5%(同2.9ポイント減、前月同)となっている。
また、生産者平均販売価格は前月と変わらず、1ブッシェル当たり4.00米ドル(420円。1キログラム当たり16.5円)と予測されている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
9月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月から大幅に減少
2020年9月のトウモロコシ輸出量は、381万2999トン(前年同月比84.8%増、前月比16.2%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月より大幅に減少した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり174.3米ドル(1万8302円、同8.2%安、同4.4%高)と前年同月からかなりの程度下落したものの、前月よりやや上昇した。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれない。
【貿易動向:コーンスターチ】
9月の輸出量は前年同月からは大幅に、前月からはかなり大きく増加
2020年9月のコーンスターチ輸出量は、1万6110トン(前年同月比69.4%増、前月比11.5%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなり大きく増加した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり528.0米ドル(5万5440円、同24.8%安、同2.1%安)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに下落した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2020年9月の製粉業者の純費用は、1ポンド
(注)当たり5.33セント(5.6円、前年同月比17.8%安、前月比19.8%高)と前年同月から大幅に下落したものの、前月より大幅に上昇した。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
新年度(2020/21年度)の需給予測、生産量は前年度からかなりの程度増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2020年11月現在の予測によると、2020/21年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は886万ライ(142万ヘクタール
(注)、前年度比1.8%増)と増加し、単収も1ライ当たり3.27トン(同4.1%増)と増加することから、生産量は2898万トン(同6.0%増)と前年度からかなりの程度増加すると予測されている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、前年同期からやや上昇
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2020年12月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり13.5バーツ(48円、前年同期比3.8%高、前週同)と前年同期からやや上昇した(図3)。2018年末以降、価格は比較的安定して推移しているが、キャッサバチップ価格の上昇
(注)に伴い、2020年10月以降は上昇傾向にある。
(注)2020年4月以降は、タイ国内でキャッサバの生産量が少ない時期に当たり、海外でのキャッサバ製品(中国におけるエタノール用途など)の需要が高まっていることから、キャッサバチップの卸売価格は上昇傾向にある。
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月からはわずかに、前月からはやや増加
2020年10月のタピオカでん粉輸出量は、22万9347トン(前年同月比2.7%増、前月比3.9%増)と、前年同月からはわずかに、前月からはやや増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり450.0米ドル(4万7250円、同1.1%安、前月同)と、前年同月からわずかに下落したものの、前月と同程度であった。
ベトナム
【生産動向】
2020年のキャッサバ作付面積、前年からほぼ横ばいで推移する見込み
ベトナムの農業農村開発省(MARD)によると、2020年におけるキャッサバの作付面積は51万6400ヘクタール(前年比0.6%減)と前年からほぼ横ばいで推移する見込みである。しかし、ベトナムの調査会社AgroMonitorは、今年もキャッサバモザイク病
(注)の発生が確認される中、キャッサバの収益性が代替作物(トウモロコシやサトウキビなど)よりも高かったことから、ダクラク省やタイニン省などの主要生産地において、キャッサバの作付面積は前年から10%程度増加すると予測している。
(注)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイ、カンボジアでも流行している。
【貿易動向】
10月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加
AgroMonitorによると、2020年10月のタピオカでん粉輸出量は、19万4584トン(前年同月比18.3%増、前月比16.0%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からはかなり大きく、前月からは大幅に増加
2020年9月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万2822トン(前年同月比14.2%増、前月比27.4%増)と前年同月からはかなり大きく、前月からは大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり669ユーロ(8万4294円、同12.6%安、同0.5%安)と前年同月からはかなり大きく、前月からはわずかに下落した。
(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除
コラム ラトビアのでん粉原料用ばれいしょ、ばれいしょでん粉の需給動向
日本の約6分の1の国土面積を有するラトビアは、欧州の中央部に位置することから運輸業が主要産業となっているほか、中東欧の主要なばれいしょでん粉生産国の一つとしても挙げられる。ラトビア中央統計局によると、2020年の同国のばれいしょ生産量は約38万トンであり、これを地域別に見ると、最も生産が盛んな地域は、南部のゼムガレ地域(約14万トン)で全体の37%を占めた(コラム−図1)。これに続くのは、首都リガを囲むピエリガ地域(約8万トン)で同21%、北部のヴィゼメ地域(約7万トン)で同19%であった。
ラトビア農務省によると、近年、同国のでん粉原料用ばれいしょの作付面積は増加傾向にあり、2016年には670ヘクタールであったものの、2020年には1000ヘクタールとなった(コラム−表)。作付面積の増加に伴い、ばれいしょの加工量も増加しており、2016年には1万3460トンであったが、2020年には約1万9460トンとなった。一方、単収は増減を繰り返しており、過去5年間で見ると1ヘクタール当たり約17〜24トンで推移している。これは、干ばつなどの気候条件や害虫の発生状況に左右されるほか、慣行農業と比較して単収が低い有機農業を選択する生産者数が年々増加していることが背景となっている。
ラトビア唯一のばれいしょでん粉製造企業であるAloja Starkelsen社は、同国内のみならず、エストニアやリトアニアなど近隣諸国の農家とも契約を結び、でん粉原料用ばれいしょを調達している。同社のばれいしょでん粉生産量は2017年以降、毎年増加傾向で推移しており、2020年は約4400トンとなった(コラム−図2)。同社は有機ばれいしょでん粉製造も行っており、欧州の主要な有機ばれいしょでん粉製造企業の一つとして位置付けられている。欧州の有機農業は、環境保護やアニマルウェルフェア(動物福祉)への配慮、消費者の健康志向の高まりなどを受けて成長しており、ラトビアでも慣行農業との比較において低単収にあるものの、有機農業を採用する生産者数や作付面積は増加傾向にあり、今後も増加基調は持続すると見込まれている。
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化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月からかなりの程度減少するも、前月よりわずかに増加
2020年10月の化工でん粉の輸出量は、8万7267トン(前年同月比8.5%減、前月比2.3%増)と前年同月からかなりの程度減少したものの、前月よりわずかに増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月および前月からわずかに増加
2020年9月の化工でん粉の輸出量は、2万4686トン(前年同月比2.5%増、前月比1.8%増)と前年同月および前月からわずかに増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加
2020年10月の化工でん粉の輸出量は、7029トン(前年同月比23.4%増、前月比6.7%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からはかなりの程度、前月からは大幅に増加
2020年9月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万3365トン(前年同月比8.7%増、前月比16.4%増)と、前年同月からはかなりの程度、前月からは大幅に増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からかなりの程度減少するも、前月より大幅に増加
2020年9月の化工でん粉の輸出量は、1923トン(前年同月比9.7%減、前月比22.3%増)と前年同月からかなりの程度減少したものの、前月より大幅に増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
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