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でん粉の価格調整業務実績について(令和元でん粉年度)

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最終更新日:2021年1月12日

でん粉の価格調整業務実績について(令和元でん粉年度)

2021年1月

特産調整部、特産業務部

はじめに

 当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、コーンスターチ用輸入とうもろこしおよび輸入でん粉から調整金を徴収し、それを財源として国内のでん粉原料用かんしょ生産者やいもでん粉製造事業者に支援を行うことで内外価格差を調整し、国内のでん粉の安定的な供給の確保を図っている。

 本稿では、令和元でん粉年度(令和元年10月1日〜2年9月30日〈以下「元SY」という〉)におけるでん粉の価格調整業務実績について取りまとめたので、報告する。

 なお、令和元砂糖年度における砂糖の価格調整業務実績については、本誌3月号において報告する予定である。

1.調整金徴収業務

(1)元SYの指標価格等

 元SYの指標価格等は表1の通り。

 

(2)でん粉の需要と供給

 令和2年9月に農林水産省が公表した元SYのでん粉の需給見通しは、表2、3の通り
(詳細は、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号参照)。

 

 

(3)国際相場などの動き

 シカゴ先物相場(期近)は、近年米国産とうもろこしが連続して豊作となっていることを背景に、30SYは1ブッシェル当たり350セント以上で推移していた(図1)。元SY前半もこうした傾向が続き、米国農務省の在庫報告などを材料に小幅に上下しつつも同350セント以上で推移した。しかし元SY後半になると、原油価格の下落によるエタノール需要の減退や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による米国畜産業における飼料需要減退の懸念を要因として4月に急落し、5月には同310セント台まで下落した。その後、米国中西部のハリケーン被害などに加えて、中国の旺盛な買い付けにより9月には同360セント台まで上昇した。

 一方、米ドルの為替相場は、令和元年10月に1ドル110円弱の水準でスタートし、元SY後半は円高傾向で推移したことから、元SY末は106円台となった。

 

(4)指定でん粉等の平均輸入価格等

 元SYにおける指定でん粉等の平均輸入価格等は表4の通り。

 

(5)売買実績

 元SYの売買数量は、輸入でん粉が前年度比0.7%増の14万2000トン、でん粉供給量の大半を占めるコーンスターチ用とうもろこしが同8.1%減の310万トン、売買差額は、輸入でん粉が同1.8%増の6億1300万円、コーンスターチ用とうもろこしが同6.7%減の91億2000万円で、合計では同6.2%減の97億3300万円となった(表5)。

 元SYの後半は、COVID-19の拡大による外出自粛などの影響により、コーンスターチ用とうもろこしは、清涼飲料向けの糖化製品の需要と情報・広告分野の電子化による製紙・段ボール向けの需要が減少したことにより売買数量は大幅に減少した。一方、輸入でん粉は、巣ごもり需要により仕向け先のインスタント食品やレトルト食品が販売好調であったこともあり、前年と同水準の売買数量を維持した。

 

2.交付金交付業務など

(1)でん粉原料用いもおよび国内産いもでん粉の生産動向

ア.でん粉原料用ばれいしょ・ばれいしょでん粉

 北海道のばれいしょ生産は、近年170〜190万トン程度で推移しており、その約4割がでん粉原料用に仕向けられている。作付面積は減少しているものの、でん粉生産量は横ばい傾向にある。

 令和元年産について、2年9月の農林水産省の需給見通しでは、生育期間全般において天候に恵まれいもの肥大が良好であったことから収穫量が8.5%増加したため、ばれいしょでん粉生産量は、前年比4.7%増の17万8000トンの見込みである(表6)。

 

イ.でん粉原料用かんしょ・かんしょでん粉

 南九州のかんしょ生産は、農家の高齢化を要因として、作付面積および収穫量とも減少傾向にある。

 令和元年産について、2年9月の農林水産省の需給見通しでは、サツマイモ基腐(もとぐされ)病(立枯症状や塊根部が腐敗する症状)が鹿児島県内の約5割の圃場(ほじょう)で深刻な病害をもたらしたため、かんしょの収穫量は前年比7.3%減の34万2000トンと減少したものの、競合する焼酎用需要の落ち込みを受け、かんしょでん粉生産量は過去最低となった前年産から3.7%増の2万8000トンへ漸増の見込みである(表7)。

 

(2)交付金の交付状況など

ア.でん粉原料用いも交付金(でん粉原料用かんしょのみ)

 収穫期はおおむね9月から11月であり、いもでん粉製造事業者へ売渡しを行った者に対し交付金を交付している。

 令和元年産については、消費税率引き上げなどによる交付金単価の引き上げと焼酎用からでん粉原料用へ仕向けられた数量の増加を受けて、交付決定金額は前年比4.0%増の24億7800万円となった(表8)。

 

イ.国内産いもでん粉交付金

 ばれいしょでん粉およびかんしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、販売したものに応じて交付金を交付している(表9)。

(ア)ばれいしょでん粉の交付状況
 元SYの交付実績は、交付決定数量は前年同期比1.1%増の9万4000トン、交付金額は交付金単価の引き上げもあり同15.3%増の18億9500万円とそれぞれ増加した。

(イ)かんしょでん粉の交付状況
 元SYの交付実績は、交付決定数量は前年同期比11.1%減の2万4000トン、交付金額は交付金単価が引上げられたものの数量の減少に伴い同7.0%減の8億8600万円とそれぞれ減少した。

 

(3) 国庫納付金納付業務(でん粉原料用ばれいしょ)

 でん粉原料用ばれいしょ生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、元SYにおいては、農林水産大臣からの通知に従い、調整金収入から48億2500万円を国庫に納付する予定である(表10)。前年度より減少した主な要因は、COVID-19の拡大の影響でコーンスターチ用とうもろこしの売買数量(輸入数量)が減少し調整金収入が減少したことによる。

 

(4) でん粉の価格調整業務における収支(見込み)

 元SYの収入は、前年度と比較して、COVID-19の拡大による外出自粛などの影響により清涼飲料向けの糖化製品の需要などが減少したため、コーンスターチ用とうもろこしの売買数量が減少し、調整金収入は6億円減となる97億円となった。

 元SYの支出は、前年度と比較して、ばれいしょでん粉は交付金単価および交付決定数量が増加したことから交付金額は3億円増の19億円となり、かんしょでん粉は交付金単価が引き上げられたものの交付決定数量の減少により交付金額は1億円減の9億円となった。でん粉原料用かんしょは、交付金単価および交付決定数量の増加を受けて交付金額は1億円増の25億円となり、でん粉原料用ばれいしょの支援は国の経営所得安定対策により行われているが、この財源として支出する国庫納付金は上記のように調整金収入の減少などを受けて納付額も4億円減の48億円と見込んでいる。これらの結果、支出合計は前年度より1億円減の101億円と見込まれる。

 以上の結果、元SYにおける調整金収支は、4億円の赤字(前年度は2億円の黒字)と見込まれる(表11)。

 なお、元SY末の調整金の期末残高は30億円の見込みであり、年間を通して短期借入金は発生しなかった(図2)。

 

 

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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