2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2021年6月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2021年6月
本稿中の為替レートは2021年4月末日TTS相場の値であり、1米ドル=110円(109.93円)、1タイバーツ=3.57円、1ユーロ=133円(133.49円)である。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2021/22年度の世界のトウモロコシ生産量、やや増加する見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年5月12日、2021/22年度最初の世界のトウモロコシ需給予測値を公表した(表2)。
これによると、同年度の世界のトウモロコシ生産量は11億8985万トン(前年度比5.4%増)とやや増加が見込まれている。国別に見るとブラジル(1億1800万トン、同15.7%増)やウクライナ(3750万トン、同23.8%増)、中国(2億6800万トン、同2.8%増)での記録的な生産増が予測され、米国(3億8076万トン、同5.7%増)やアルゼンチン(5100万トン、同8.5%増)でも過去最高水準に近い生産が見込まれている。
輸出量は、飼料用の需要の高まりから世界全体で1億9747万トン(同5.7%増)とやや増加が見込まれている。国別に見るとブラジル(同22.9%増)とウクライナ(同32.6%増)で大幅な増加が見込まれるものの、米国はこれら輸出国との競合により大きな減少が見込まれている。
輸入量は、世界全体で1億8951万トン(同3.1%増)とやや増加が見込まれている。国別に見ると、主要輸入国である中国の輸入量は2600万トンと前年度から変わらないものの、引き続き高水準で推移すると見込まれている。
消費量は、供給量の増加や経済の回復を受けて、飼料用のみならずその他の用途での需要も高まることから、世界全体で11億8108万トン(同2.8%増)とわずかな増加が見込まれている。国別に見ると、消費大国である米国(同1.8%増)や中国(同1.7%増)に加え、ブラジル(同3.5%増)などの増加が見込まれている。
期末在庫量は、米国とブラジルが次年度へ持ち越す在庫量を増やすことで、2億9230万トン(同3.1%増)とやや増加が見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2021/22年度の米国トウモロコシ期末在庫率、10%台に上昇する見込み
USDA/WAOBは2021年5月12日、2021/22年度(9月〜翌8月)最初となる米国の主要農作物需給予測値を公表した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである(表3)。
生産量は、作付面積と単収の増加を受けて149億9000万ブッシェル(3億8076万トン(注)、前年度比5.7%増)とやや増加が見込まれている。
消費量は、食品・種子・その他工業向け(エタノール向けを含む)の需要が増すことで、123億1500万ブッシェル(3億1281万トン、同1.8%増)と見込まれている。
輸出量は、ロシア産やウクライナ産との競合によって米国産のシェアが縮小し、24億5000万ブッシェル(6223万トン、同11.7%減)と記録的な輸出量となった前年度からかなり大きな減少が見込まれている。
期末在庫量は、生産量が増加する一方、輸出量が減少することから、15億700万ブッシェル(3828万トン、同19.9%増)と大幅な増加が見込まれている。その結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は10.2%(同1.7ポイント増)とわずかに回復するものの、2016/17〜2019/20年度の平均値を下回ると見込まれている。
また、生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり5.70米ドル(627円。1キログラム当たり24.7円)と前年度から大幅な上昇が見込まれている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
輸出価格、7カ月連続で上昇し、前年同月比35.1%高
2021年2月のトウモロコシ輸出量は、631万8952トン(前年同月比60.9%増、前月比8.5%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり251.5米ドル(2万7665円、同35.1%高、同7.9%高)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度上昇し、過去1年の最安値(7月)と比べ、50.8%の上昇となった。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれない。
【貿易動向:コーンスターチ】
2月の輸出量は前年同月からはやや、前月からはかなりの程度減少
2021年2月のコーンスターチ輸出量は、1万2716トン(前年同月比3.2%減、前月比8.9%減)と前年同月からはやや、前月からはかなりの程度減少した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり668.9米ドル(7万3579円、同12.0%高、同7.9%高)と前年同月からはかなり大きく、前月からはかなりの程度上昇した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2021年2月の製粉業者の純費用は、1ポンド
(注)当たり9.03セント(9.9円、前年同月比55.4%高、前月比6.3%高)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度上昇した。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
2020/21年度のキャッサバ生産見通し、2カ月変化なし
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2021年4月現在の予測によると、2020/21年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は916万ライ(146万ヘクタール
(注)、前年度比2.7%増、前月同)、単収は1ライ当たり3.29トン(同1.2%増、前月同)、生産量は3011万トン(同3.8%増、前月同)であった(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、前年同期からかなりの程度上昇
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2021年5月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり14.0バーツ(50円、前年同期比9.4%高、前週同)と前年同期からかなりの程度上昇した(図3)。
【貿易動向】
3月の輸出量、前年同月および前月から大幅に増加
2021年3月のタピオカでん粉輸出量は、44万5920トン(前年同月比88.1%増、前月比25.0%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり485.0米ドル(5万3350円、同13.1%高、同1.0%高)と、前年同月からはかなり大きく、前月からはわずかに上昇した。
ベトナム
【生産動向】
キャッサバの新期作付けが進む中、キャッサバモザイク病の拡大が進む
ベトナムの調査会社AgroMonitorによると、2021年2月に入り北部では2021/22年度(8月〜翌7月)のキャッサバの新期作付けが進んでいる。北部のキャッサバの作付面積は、キャッサバ価格の上昇を受け、トウモロコシやサトウキビからの転作が進み、前年度比で10〜15%程度の増加が予測されている。また、南部では4月中旬頃から新期作付けが開始されると見込まれている。
なお、キャッサバモザイク病(注)は3月12日現在、中央直轄5都市および58省のうち、1市18省(前月から2省増加)の合計5万3007ヘクタール(前年度比23.3%増)で感染が確認され、前月比(2月19日)では、23.1%増と拡大が進んでいる。
(注)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月から大幅に減少するも、前月からは大幅に増加
AgroMonitorによると、2021年3月のタピオカでん粉輸出量は、16万4184トン(前年同月比34.0%減、前月比40.0%増)と前年同月から大幅に減少したものの、前月からは大幅に増加した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
2月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加
2021年2月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万8695トン(前年同月比17.3%増、前月比10.5%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり614ユーロ(8万1662円、同11.2%安、同1.1%安)と前年同月からはかなり大きく、前月からはわずかに下落した。
(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除く。
コラム 2021年1〜4月のキャッサバ製品輸出量、
前年同期比で大幅に増加(カンボジア)
カンボジア農林水産省によると、2021年1〜4月のキャッサバ製品輸出量は150万トンを超え、前年同期の130万トンを大きく上回った(コラム−表)。
輸出量を品目別に見ると、でん粉原料用としてタイやベトナムに仕向けられているキャッサバの生芋は30万7750トン(前年同期比7.0%減)、キャッサバパルプは3122トン(同34.3%減)とともに減少した。一方、エタノール原料として中国に仕向けられているキャッサバチップは117万7003トン(同25.5%増)、中国、イタリアおよびオランダへ主に仕向けられているタピオカでん粉は1万3284トン(同42.8%増)とともに大幅に増加した。
同国政府は、原料としてのキャッサバを重要な輸出品目と位置づける中、「キャッサバに関する国家政策(2020−2025)」(注)を通じ、タピオカでん粉など付加価値のあるキャッサバ製品の生産・輸出の増加を目指しており、今後の輸出動向も注目される。
(注)同国農林水産省、商務省および国連開発計画(UNDP)による政策。詳細は、令和3年2月19日付海外情報「キャッサバに関する国家政策(2020−2025)を発表(カンボジア)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002886.html)を参照されたい。
【2020年のキャッサバの生産動向】
調査会社AgroMonitorによると、2020年のカンボジアのキャッサバ作付面積は、トウモロコシやサトウキビからの転作が進んだため、前年の50万ヘクタールから増加すると予測されている。
しかし、同年のキャッサバ生産量は、主産地の一つであるパンテイメンチェイ州やウドンメンチェイ州など同国北西部タイ国境に位置する州を中心に減少が見込まれている(コラム−図)。これは、従前より発生しているキャッサバモザイク病(注)の影響に加え、2020年9〜10月にかけて現地で発生した洪水により、収穫や流通に大きな被害が発生したことが要因として挙げられ、最大のキャッサバ生産地である同国西部のバッタンバン州では、農地の8割で洪水の被害を受けたと報告されている。
(注)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。同国のほかに、近隣国のタイやベトナムの一部でも流行が確認されている。
|
化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
3月の輸出量、前年同月からはわずかに、前月からは大幅に減少
2021年3月の化工でん粉の輸出量は、10万8821トン(前年同月比0.5%減、前月比24.6%減)と前年同月からはわずかに、前月からは大幅に減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
2月の輸出量、前年同月からはわずかに、前月からはかなりの程度増加
2021年2月の化工でん粉の輸出量は、2万5847トン(前年同月比2.6%増、前月比7.4%増)と前年同月からはわずかに、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
3月の輸出量、前年同月からかなりの程度減少するも、前月より大幅に増加
2021年3月の化工でん粉の輸出量は、8117トン(前年同月比6.8%減、前月比71.4%増)と前年同月からかなりの程度減少したものの、前月より大幅に増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
2月の輸出量、前年同月並みであるも、前月よりかなり大きく増加
2021年2月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万3163トン(前年同月並、前月比12.4%増)と、前年同月並みであったものの、前月よりかなり大きく増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国の輸出量。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
2月の輸出量、前年同月からはかなり大きく、前月からは大幅に増加
2021年2月の化工でん粉の輸出量は、1780トン(前年同月比15.8%増、前月比31.6%増)と前年同月からはかなり大きく、前月からは大幅に増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272