2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2021年9月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2021年9月
本稿中の為替レートは2021年7月末日TTS相場の値であり、1米ドル=110円(110.49円)、1タイバーツ=3.41円、1ユーロ=132円(131.61円)である。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2021/22年度の世界のトウモロコシ生産量、前年度からかなりの程度増加する見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年8月12日、2021/22年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は前回から868万トン下方修正され、11億8612万トン(前年度比6.3%増、前月比0.7%減)と予測された。国別に見るとブラジル(前年度比35.6%増)およびウクライナ(同28.7%増)では記録的な生産増が予測され、米国(同4.0%増)、アルゼンチン(同5.2%増)および中国(同2.8%増)でも過去最高水準に近い生産が見込まれている。
輸出量は、世界全体で1億9785万トン(同10.8%増、同0.5%減)と前回からわずかに下方修正された。国別に見るとブラジル(前年度比87.0%増)とウクライナ(同36.2%増)で大幅な増加が見込まれるものの、米国(同13.5%減)はこれら輸出国との競合により減少が見込まれている。
輸入量は、世界全体で1億8461万トン(同0.2%増、同1.6%減)と前回からわずかに下方修正された。国別に見ると、主要輸入国である中国は2600万トンと前年度から変わらないものの、引き続き高水準での推移が見込まれている。
消費量は123万トン下方修正されたものの、11億8224万トン(同3.6%増、同0.1%減)と前年度から増加が見込まれている。消費大国であるブラジル(前年度比7.4%増)および中国(同1.7%増)などで増加するものの、米国ではほぼ横ばい(同0.1%増)と見込まれている。
期末在庫は、2021/22年度の生産量の下方修正などに伴い、前月から2.2%減の2億8463万トン(同1.4%増)と見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2021/22年度の米国トウモロコシ期末在庫率、8%台の見込み
USDA/WAOBは2021年8月12日、2021/22年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである(表3)。
生産量は作付面積や単収の増加を受けて147億5000万ブッシェル(3億7466万トン(注)、前年度比4.0%増)と予測されており、前月からわずかに下方修正されたものの、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)に近い水準となっている。
消費量は飼料向けなどの需要がわずかに下方修正され、全体では122億5000万ブッシェル(3億1116万トン、同0.1%増)と予測された。
輸出量は生産量の下方修正に伴い前月から1億ブッシェル引き下げられ、24億ブッシェル(6096万トン、同13.5%減)と記録的な輸出量となった前年度からかなり大きく減少すると予測された。
期末在庫は、総供給量の下方修正を受けて前月から1億9000万ブッシェル引き下げられ、12億4200万ブッシェル(3155万トン、同11.2%増)と予測された。その結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は前月から1.1ポイント減の8.5%(同1.1ポイント増)となった。
また、生産者平均販売価格はわずかに上方修正され、1ブッシェル当たり5.75米ドル(633円。1キログラム当たり24.9円)と予測された。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
5月の輸出量は前年同月から大幅に増加するも、前月並みで推移
2021年5月のトウモロコシ輸出量は、849万2750トン(前年同月比51.2%増、前月比0.3%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月並みとなった。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり278.7米ドル(3万657円、同64.3%高、同5.5%高)と前年同月からは大幅に、前月からはやや上昇し、過去1年の最安値(2020年8月)と比べ67.0%の上昇となった。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
【貿易動向:コーンスターチ】
5月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加
2021年5月のコーンスターチ輸出量は、1万6834トン(前年同月比38.1%増、前月比16.2%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり609.5米ドル(6万7045円、同5.8%安、同5.7%安)と前年同月および前月からやや下落した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2021年5月の製粉業者の純費用は、トウモロコシ価格の上昇などを要因に1ポンド
(注)当たり12.36セント(13.6円、前年同月比4.1倍、前月比16.3%高)と前年同月および前月から大幅に上昇した。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
2020/21年度のキャッサバ生産量は前年度からかなりの程度増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2021年7月現在の予測によると、2020/21年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は951万ライ(152万ヘクタール
(注)、前年度比6.6%増、前月比3.8%増)、単収は1ライ当たり3.33トン(同2.5%増、同1.2%増)、生産量は3163万トン(同9.1%増、同5.0%増)と見込まれている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、前年同期からかなりの程度上昇
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2021年8月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり14.1バーツ(48円、前年同期比7.6%高、前週同)と前年同期からはかなりの程度上昇したものの、前週と同程度であった(図3)。2020年以降、価格は上昇傾向で推移している。
【貿易動向】
6月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはやや増加
2021年6月のタピオカでん粉輸出量は、25万337トン(前年同月比58.8%増、前月比4.8%増)と、前年同月からは大幅に、前月からはやや増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり485.0米ドル(5万3350円、同10.2%高、前月同)と、前年同月からかなりの程度上昇した。
タイ商務省によると、2021年上半期の輸出は、世界経済の回復やタイバーツ安などが後押しし、堅調に推移した。
ベトナム
【生産動向】
主産地のザライ省やタイニン省でキャッサバの作付けを終える
ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、同国第1位のキャッサバ作付面積を誇るザライ省では、6月中旬までに、2021/22年度のキャッサバの作付けを終えており、作付面積は、前年度から10%程度減少して6万1740ヘクタールと予測された。減少理由として、サトウキビが高値で取引され、高収量が期待されることから、サトウキビへの転作が進んだためとしている。また、第2位のキャッサバ作付面積を誇るタイニン省では、6月上旬までにほぼ作付け作業が終了しており、作付面積は、合計6万2000ヘクタールと推測されている。
なお、キャッサバモザイク病(注1)は6月21日現在、依然として状況は改善されず、中央直轄5都市および58省のうち、1市18省(前月比1省減)の合計7万60ヘクタールで感染が確認され、前月(5月30日)から微減した(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最終的には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国におけるキャッサバの作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
6月の輸出量は前年同月から大幅に、前月からわずかに増加
AgroMonitorによると、2021年6月のタピオカでん粉輸出量は、14万3070トン(前年同月比39.9%増、前月比2.2%増)と前年同月から大幅に、前月からはわずかに増加した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR・中国向け)は、1トン当たり482米ドル(5万3020円、同25.8%高、同1.9%高)と、前年同月から大幅に、前月からわずかに上昇した。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
5月の輸出量、前年同月から大幅に、前月からやや増加
2021年5月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、3万3719トン(前年同月比25.7%増、前月比5.2%増)と前年同月から大幅に、前月からやや増加した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり529ユーロ(6万9828円、同23.2%安、同8.2%安)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度下落した。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム 欧州主要国のでん粉原料用ばれいしょ生産動向
−デンマークおよびフランス編−
1.デンマーク
デンマーク統計局によると、2016年以降、でん粉原料用ばれいしょの作付面積は増加傾向にあり、2020年のでん粉原料用ばれいしょの作付面積は5万7000ヘクタール(前年比46.2%増)、生産量は264万トン(同56.4%増)とともに大幅に増加した(コラム−表)。欧州委員会の共同研究センター(JRC)の作物観測データによると、2020年の生産について同国では、同年3月中旬から4月下旬にかけての降雨不足により単収の減少が懸念されていたものの、6月上旬にまとまった降雨があり、7月の猛暑の影響も軽微であったことから、ばれいしょの生育は良好であったとされるも、8月末以降は降雨過多により収穫が若干遅れたということである。
価格動向を見ると、ばれいしょでん粉製造者のAKVによれば 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、欧州域外からの需要が減少し在庫が増加した一方で、欧州全域でばれいしょでん粉生産が良好となったため、価格は下落傾向にあった。この状況を受けてAKVは、2021年のでん粉原料用ばれいしょの作付面積の減少を推奨した。
2.フランス
フランス農業漁業省の統計機関であるAgresteによれば、2016年以降、でん粉原料用ばれいしょの作付面積は横ばいで推移しており、2020年のでん粉用ばれいしょの作付面積は2万3000ヘクタール(前年比4.5%増)とやや増加したものの、夏の干ばつの影響などから生産量は88万トン(同8.1%減)、単収は1ヘクタール当たり37.8トン(同11.7%減)とともに減少した。ただし、灌漑の有無によって生産量にはばらつきが出るため、地域ごとで単収は大きく異なるとしている。
フランスのばれいしょ生産者連盟であるUNPTによると、同国のばれいしょ加工工場はロックダウンの影響を受けて、2020年10月の時点で稼働率は85%程度であった。でん粉を含むばれいしょの産業需要は、COVID-19以前の水準には達しておらず、在庫量が多く、需給のバランスが崩れている。このためUNPTは、収益性の高い栽培区画のみを保持し、その他は穀物やでん粉原料用トウモロコシに転作するなどして、2021年のばれいしょの作付面積を減らすよう農家に呼びかけた。
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化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
6月の輸出量、前年同月からかなり大きく増加するも、前月よりわずかに減少
2021年6月の化工でん粉の輸出量は、9万358トン(前年同月比14.0%増、前月比1.7%減)と前年同月からかなり大きく増加したものの、前月よりわずかに減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
5月の輸出量、前年同月および前月からわずかに増加
2021年5月の化工でん粉の輸出量は、2万8128トン(前年同月比2.6%増、前月比2.8%増)と前年同月および前月からわずかに増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
6月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月より大幅に減少
2021年6月の化工でん粉の輸出量は、7708トン(前年同月比34.2%増、前月比21.0%減)と前年同月から大幅に増加するも、前月より大幅に減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
5月の輸出量、前年同月からわずかに増加するも、前月からかなり大きく減少
2021年5月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万110トン(前年同月比1.7%増、前月比13.4%減)と、前年同月からわずかに増加するも、前月からかなり大きく減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
5月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月からかなりの程度減少
2021年5月の化工でん粉の輸出量は、2780トン(前年同月比99.6%増、前月比10.1%減)と前年同月より大幅に増加したものの、前月比ではかなりの程度減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
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