2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2021年11月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2021年11月
本稿中の為替レートは2021年9月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=113円(112.92円)、1タイバーツ=3.38円、1ユーロ=131円(131.36円)である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2021/22年度の世界のトウモロコシ生産量、前年度からかなりの程度増加する見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年10月12日、2021/22年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は、11億9822万トン(前年度比7.4%増、前月比0.0%増)と前月並みが見込まれている。国別に見ると、米国は単収の増加などにより56万トン上方修正されたものの、ウクライナは9月の降雨による収穫遅れや単収の減少などにより100万トン下方修正された。
輸出量は、世界全体で2億191万トン(同13.5%増、同0.3%増)と前月並みが見込まれている。国別に見ると、増産予測の米国は63万トン上方修正されたものの、減産予測のウクライナは50万トン下方修正された。
輸入量は、世界全体で1億8385万トン(同1.4%減、同1.1%減)と前月からわずかに下方修正された。主要輸入国である中国の輸入量は2600万トンと前月から変わらないものの、引き続き高水準での推移が見込まれている。
消費量は、世界全体で11億8646万トン(同4.8%増、同0.0%減)と前月並みが見込まれている。国別に見ると、米国は114万トン、減産予測のウクライナは30万トンそれぞれ下方修正された。
期末在庫は、輸入量の下方修正や、2020/21年度の期末在庫の上方修正などに伴い、前月から1.4%増の3億174万トン(同4.1%増)と見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2021/22年度の米国トウモロコシ期末在庫率、10%台の見込み
USDA/WAOBは2021年10月12日、2021/22年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである(表3)。
生産量は、単収の上方修正を受けて、150億1900万ブッシェル(3億8150万トン(注)、前年度比6.4%増、前月比0.2%増)と見込まれている。前年度からかなりの程度増加する見込みであり、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)に近い水準となっている。
消費量は、食品・種子・その他工業向けが前月から500万ブッシェル上方修正されたものの、飼料など向けが5000万ブッシェル下方修正されたため、全体では122億8000万ブッシェル(3億1192万トン、同1.8%増、同0.4%減)とわずかに下方修正された。
輸出量は、増産予測やその他主産国の輸出量の下方修正などを受けて、25億ブッシェル(6350万トン、同9.2%減、同1.0%増)と前月からわずかに上方修正されたものの、依然として記録的な輸出量となった前年度からかなりの程度の減少が見込まれている。
期末在庫は、15億ブッシェル(3810万トン、同21.4%増、同6.5%増)と前月からかなりの程度上方修正された結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は10.1%(同1.8ポイント増、同0.6ポイント増)と前月の9%台の予測から10%台に回復した。
また、生産者平均販売価格は、前月と同じ1ブッシェル当たり5.45米ドル(616円。1キログラム当たり24.2円)と見込まれている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
7月の輸出量は前年同月から大幅に増加するも、前月よりかなり大きく減少
2021年7月の米国のトウモロコシ輸出量は、548万6120トン(前年同月比23.7%増、前月比13.7%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりかなり大きく減少した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、2020年9月以降、上昇基調を持続し、1トン当たり300.3米ドル(3万3934円、同79.9%高、同2.2%高)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに上昇し、過去1年の最安値(2020年8月)と比較しても79.9%の上昇となった。
USDA/FASによると、2020/21年度(9月〜翌8月)の米国のトウモロコシ輸出量は、中国をはじめとした海外からの需要が高まっていることや、ブラジルなど競合国の輸出量が前年度と比較して減少傾向にあることなどから、記録的なものとされている。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
【貿易動向:コーンスターチ】
7月の輸出量は前年同月からかなり大きく増加するも、前月よりやや減少
2021年7月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万4672トン(前年同月比14.9%増、前月比5.9%減)と前年同月からかなり大きく増加したものの、前月よりやや減少した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり619.0米ドル(6万9947円、同2.7%安、同2.1%安)と前年同月および前月からわずかに下落した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2021年7月の製粉業者の純費用は、トウモロコシ価格の上昇などを要因に1ポンド
(注)当たり12.36セント(14.0円、前年同月比3.0倍、前月比0.3%高)と前年同月からは大幅に上昇したものの、前月並みであった。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
2020/21年度のキャッサバ生産量は前年度からかなりの程度増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2021年9月現在の予測によると、2020/21年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は951万ライ(152万ヘクタール
(注)、前年度比6.6%増、前月同)、単収は1ライ当たり3.33トン(同2.5%増、前月同)、生産量は3163万トン(同9.1%増、前月同)と7月予測から2カ月続けて変更がなかった(表6)。
また、同局は、2021年9月の豪雨により全国77県のうち、同国北部、中部および東北部を中心とした36県で洪水が発生し、キャッサバを含む農地が被災したことを明らかにした。産地で本被災による今期作の品質の低下や、早期収穫による作柄や単収への影響が懸念される中、政府は被災農家支援として補償を含めた対策に着手している。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、前年同期からかなりの程度上昇
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2021年10月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり14.4バーツ(49円、前年同期比9.9%高、前週同)と前年同期からかなりの程度上昇した(図3)。2020年以降、価格は上昇傾向で推移している。
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月および前月から大幅に増加
2021年8月のタピオカでん粉輸出量は、28万9834トン(前年同月比16.9%増、前月比21.2%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり480.0米ドル(5万4240円、同7.0%高、同1.0%安)と、前年同月からかなりの程度上昇したものの、前月よりわずかに下落した。
現地の調査会社などによると、中国でのアフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加と、飼料需要の高まりを背景に、コーンスターチの原料確保が難しくなっている状況を受けて、代替品としてタピオカでん粉の輸入が一部で見られるとしている。
ベトナム
【生産動向】
主産地のタイニン省、COVID–19の影響を受け、でん粉工場の操業が一時停止
ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、2021年8月現在、同国第2位のキャッサバ作付面積を有する南部のタイニン省では、新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の拡大による従業員の感染や、厳格な隔離措置の実施に伴う従業員の通勤や入出荷の制約などを受けて、キャッサバの収穫や運搬、でん粉工場の操業が一時停止している状況にある。
また、2021/22年度(8月〜翌7月)のキャッサバの生産動向を見ると、南部の一部では5〜7月にかけて干ばつが発生し、キャッサバの生育遅延や枯死などの被害が生じたものの、8月に入って降雨があったことで干ばつの被害は緩和されているとのことである。
なお、キャッサバモザイク病(注1)は8月26日現在、中央直轄5都市および58省のうち1市22省(前月比4省増)などの合計7万6939ヘクタール(7月27日比7.2%増)で感染が確認された(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
8月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加
AgroMonitorによると、2021年8月のタピオカでん粉輸出量は、15万9967トン(前年同月比31.6%増、前月比34.8%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり464米ドル(4万7792円、同16.6%高、同1.7%安)と、前年同月から大幅に上昇したものの、前月よりわずかに下落した。
2021年のタピオカでん粉の輸出量は、COVID–19の影響で製品の出荷に遅延が生じていることや、タイなどその他主産国との競合などにより、前年と比較して減少傾向で推移している。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月よりやや減少
2021年7月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、3万6109トン(前年同月比34.5%増、前月比4.1%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりやや減少した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり541ユーロ(7万871円、同20.8%安、同2.6%安)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに下落した。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム オーストリアのでん粉原料用ばれいしょ、
ばれいしょでん粉の需給動向
中東欧の主要なばれいしょでん粉生産国の一つであり、北海道と同程度の面積を有するオーストリアでは、同国北東部に位置するニーダーエスターライヒ州で総生産量の8割に当たるばれいしょが生産されている(コラム―図)。中でもでん粉原料用ばれいしょは、同国唯一のでん粉製造企業であるAgrana社(注)の工場が位置するヴァルトフィアテル地域のクムント近隣で栽培されており、2021年6月現在、同社は1100戸の農家との間で約7000ヘクタール分の栽培契約を締結している。同国が管轄する社団法人であるAgrar Markt Austriaによると、オーストリアではこのように契約栽培が広く浸透していることから、企業と農家間の契約の下で品質水準などが決定されており、同国ではでん粉原料用ばれいしょに関する特段の取引規制はない状況にある。
また、Agrana社によると、同社が加工に用いるでん粉原料用ばれいしょの生産量は気候などに左右されるものの、毎年25〜30万トン程度で推移しており、でん粉含有量はおおむね18〜19%の間で安定して推移しているとのことであった。同情報に基づき試算すると、同国では毎年4万5000〜5万7000トン程度のばれいしょでん粉が製造されていると想定される。2020/21年度上半期は、製紙部門向けのでん粉販売量が大幅に減少したものの、COVID–19の発生から1年以上が経過した2021年7月時点では、でん粉市場の需要は回復の兆しが見られるとしている。
(注)同社はオーストリアの食品加工メーカーであり、主に果実、でん粉および砂糖を取り扱う。でん粉部門ではばれいしょでん粉のほか、コーンスターチや小麦でん粉も製造している。
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化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からかなり大きく増加するも、前月よりやや減少
2021年8月の化工でん粉の輸出量は、9万4673トン(前年同月比11.8%増、前月比4.1%減)と前年同月からかなり大きく増加したものの、前月よりやや減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月からはやや、前月からはかなりの程度増加
2021年7月の化工でん粉の輸出量は、2万6270トン(前年同月比3.6%増、前月比8.0%増)と前年同月からはやや、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からかなりの程度増加するも、前月より大幅に減少
2021年8月の化工でん粉の輸出量は、6533トン(前年同月比9.9%増、前月比18.7%減)と前年同月からかなりの程度増加したものの、前月より大幅に減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月からかなりの程度増加するも、前月よりわずかに減少
2021年7月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万4093トン(前年同月比9.0%増、前月比1.1%減)と、前年同月からかなりの程度増加したものの、前月よりわずかに減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
7月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月からかなり大きく減少
2021年7月の化工でん粉の輸出量は、2511トン(前年同月比43.3%増、前月比14.4%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりかなり大きく減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
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