2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2021年12月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2021年12月
本稿中の為替レートは2021年10月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=115円(114.67円)、1タイバーツ=3.51円、1ユーロ=134円(134.27円)である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2021/22年度の世界のトウモロコシ期末在庫、19/20年度の水準に近づく
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年11月9日、2021/22年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は、12億462万トン(前年度比7.6%増、前月比0.5%増)と前月からわずかに増加すると見込まれている。国別に見ると、米国は単収の増加などにより110万トン、アルゼンチンは作付面積の増加などにより150万トン上方修正された。
輸出量は、世界全体で2億347万トン(同15.2%増、同0.8%増)と前月からわずかに増加すると見込まれている。国別に見ると、増産予測のアルゼンチンで100万トン上方修正された。
輸入量は、世界全体で1億8342万トン(同2.2%減、同0.2%減)と前月並みが見込まれている。主要輸入国である中国は2600万トンと前月から変わらず、引き続き高水準が見込まれている。
消費量は、世界全体で11億9207万トン(同5.2%増、同0.5%増)と前月からわずかに増加すると見込まれている。国別に見ると、エタノール向けの需要が増加する米国で127万トン上方修正された。
期末在庫は、増産見込みを背景に前月から0.9%増の3億442万トン(同4.3%増)と2019/20年度に近い水準が見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2021/22年度の米国トウモロコシ生産量、前月比で増加見込み
USDA/WAOBは2021年11月9日、2021/22年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである(表3)。
生産量は、単収の上方修正を受けて、150億6200万ブッシェル(3億8259万トン(注)、前年度比6.7%増、前月比0.3%増)と見込まれている。前年度からかなりの程度増加する見込みであり、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151 億4800万ブッシェル(3億8477万トン)に近い水準となっている。
消費量は、エタノール向けが前月から5000万ブッシェル上方修正されたことから、全体では123億3000万ブッシェル(3億1319万トン、同2.2%増、同0.4%増)とわずかに上方修正された。
輸出量は、アルゼンチンやEUなどの主産国で輸出量の上方修正があるものの、25億ブッシェル(6350万トン、同9.2%減、前月同)と前月並みとされ、依然として記録的な輸出量となった前年度からかなりの程度の減少が見込まれている。
期末在庫は、14億9300万ブッシェル(3792万トン、同20.8%増、同0.5%減)と前月からわずかに下方修正された結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は10.1%(同1.8ポイント増、前月並み)と前月から引き続き10%台を保った。
また、生産者平均販売価格は、前月と同じ1ブッシェル当たり5.45米ドル(627円。1キログラム当たり24.7円)と据え置かれている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
8月の輸出量、前年同月および前月から大幅に減少し、価格は下落に転じる
2021年8月の米国のトウモロコシ輸出量は2021年4月以降、減少傾向が続き、345万6539トン(前年同月比23.2%減、前月比37.0%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり291.0米ドル(3万3465円、同74.3%高、同3.1%安)と前年同月から大幅に上昇したものの、2020年9月以降、11カ月連続で上昇していた価格は反転し、前月よりやや下落した。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
【貿易動向:コーンスターチ】
8月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加
2021年8月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万7513トン(前年同月比21.3%増、前月比19.4%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり630.4米ドル(7万2496円、同17.1%高、同1.8%高)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに上昇した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2021年8月の製粉業者の純費用は、1ポンド
(注)当たり12.19セント(14.0円、前年同月比2.7倍、前月比1.4%安)と前月よりわずかに下落したものの、依然として前年同月を大幅に上回っており、12セント台の高値水準となった。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向(注1)】
2020/21年度のキャッサバ生産量は前年度からかなりの程度増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2021年9月現在の予測によると、2020/21年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は951万ライ(152万ヘクタール
(注2)、前年度比6.6%増、前月同)、単収は1ライ当たり3.33トン(同2.5%増、前月同)、生産量は3163万トン(同9.1%増、前月同)と7月予測から変更がなかった(表6)。
また、同局は、2021年9月の豪雨により全国77県のうち、同国北部、中部および東北部を中心とした36県で洪水が発生し、キャッサバを含む農地が被災したことを明らかにした。また、産地では本被災による今期作の品質の低下や、早期収穫による作柄や単収への影響が懸念される中、政府は被災農家支援として補償を含めた対策に着手している。
(注1)2021年10月予測が公表されていないため、先月号の内容を再掲載する。
(注2)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、上昇基調が持続し、2018年の水準に達する
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2021年11月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり14.7バーツ(52円、前年同期比10.5%高、前週比0.7%高)と前年同期からはかなりの程度、前週からはわずかに上昇した(図3)。タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)研究・イノベーション開発センターによると、輸出需要の高まりなどを受けて、キャッサバ製品価格は上昇傾向で推移し、同週の価格は2018年11月第2週と同水準となり、今後の動向が注目される。
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月および前月から大幅に増加
2021年9月のタピオカでん粉輸出量は、34万3964トン(前年同月比55.9%増、前月比18.7%増)と、前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり480.0米ドル(5万5200円、同6.7%高、前月同)と、前年同月からかなりの程度上昇したものの、前月と同程度であった。
現地の調査会社などによると、中国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加と飼料需要の高まりを背景に、コーンスターチの原料確保が難しくなっている状況を受けて、代替品としてのタピオカでん粉の輸入が一部で見られるとしている。
ベトナム
【生産動向】
主産地タイニン省、隔離措置の緩和を受け、収穫や製造を再開
ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、2021年9月現在、同国第2位のキャッサバ作付面積を有する南部のタイニン省では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止策として先月から実施されていた厳格な隔離措置が緩和されたことにより、一時的に滞っていたキャッサバの収穫やでん粉の製造などが円滑に行われるようになった。これにより、2020/21年度作(8月〜翌7月)の同省のキャッサバ収穫作業は、低地では9月末までにほぼ完了し、高地では10月末までに終了すると見込まれている。
なお、キャッサバモザイク病(注1)は9月23日現在、中央直轄5都市および58省のうち1市22省(前月同)などの合計7万4735ヘクタール(8月26日比2.9%減)で感染が確認された(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
9月の輸出量は前年同月からやや減少するも、前月と同程度
AgroMonitorによると、2021年9月のタピオカでん粉輸出量は、15万9601トン(前年同月比4.8%減、前月比0.2%減)と前年同月からやや減少したものの、前月と同程度であった。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり473米ドル(5万4395円、同19.1%高、同1.9%高)と、前年同月からは大幅に、前月からはわずかに上昇した。
2021年のタピオカでん粉の輸出量は、COVID-19の影響で製品の出荷に遅延が生じていることや、タイなどその他主産国との競合などにより、前年と比較して減少傾向で推移している。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月比でほぼ倍増となるも、前月よりわずかに減少
2021年8月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、3万5417トン(前年同月比97.7%増、前月比1.9%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりわずかに減少した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり541ユーロ(7万2494円、同19.5%安、前月同)と前年同月から大幅に下落したものの、前月と同程度であった。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム キャッサバの振興を目的に新たな戦略を策定(タイ)
タイ商務省は2021年10月24日、キャッサバの主産地であるナコンラチャシマ県で開催された会議において、今年度新たに、同国のキャッサバ生産の安定化やタピオカでん粉などキャッサバ製品の輸出拡大を目的とした「キャッサバ戦略(2021−2024)」を策定したことを明らかにした。 この戦略では、以下の3項目を目標に掲げ、これら目標達成のため、三つの側面(生産、国内市場、輸出)について、具体的な取り組みを挙げている(表)。
タイでは洪水(注)や干ばつなどの自然災害、キャッサバモザイク病などの病害が発生し、近年ではその影響が危惧されている中、今回策定されたキャッサバ戦略は、キャッサバの生産と供給の安定化に寄与するものとして注目されている。
(注)2021年9月以降に発生した豪雨被害への支援については、2021年11月24日付海外情報「洪水被災農家への支援策を策定(タイ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003098.html)を参照されたい。 |
化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からはかなり大きく、前月からはわずかに増加
2021年9月の化工でん粉の輸出量は、9万6538トン(前年同月比13.2%増、前月比2.0%増)と前年同月からはかなり大きく、前月からはわずかに増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からはかなり大きく、前月からはやや増加
2021年8月の化工でん粉の輸出量は、2万7442トン(前年同月比14.2%増、前月比4.5%増)と前年同月からはかなり大きく、前月からはやや増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月および前月からかなりの程度増加
2021年9月の化工でん粉の輸出量は、6979トン(前年同月比6.0%増、前月比6.8%増)と前年同月および前月からかなりの程度増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月からかなり大きく増加するも、前月よりかなりの程度減少
2021年8月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万1046トン(前年同月比11.6%増、前月比6.5%減)と、前年同月からかなり大きく増加したものの、前月よりかなりの程度減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
8月の輸出量、前年同月および前月から大幅に増加
2021年8月の化工でん粉の輸出量は、3510トン(前年同月比2.2倍、前月比39.8%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
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