2.日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2022年1月11日
2.日本の品目別主要輸入先国の動向
2022年1月
本稿中の為替レートは2021年11月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=115円(114.77円)、1タイバーツ=3.46円、1ユーロ=130円(129.91円)である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
2021/22年度の世界のトウモロコシ期末在庫、増産見込みを背景に19/20年度の水準に近づく
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年12月9日、2021/22年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は、12億873万トン(前年度比7.7%増、前月比0.3%増)と前月並みながらも史上最高が見込まれている。国別に見ると、収量の増加などによりウクライナが200万トン、EUが250万トンそれぞれ上方修正された一方、中国は作付面積が増加したものの収量が減少したことから45万トン下方修正された。
輸出量は、世界全体で2億486万トン(同15.4%増、同0.7%増)と前月から139トン上方修正された。国別に見ると、生産量で上方修正のあったウクライナが100万トン、EUが50万トンそれぞれ上方修正された。
輸入量は、世界全体で1億8545万トン(同0.6%減、同1.1%増)と前月から203万トン上方修正された。主要輸入国である中国は2600万トンと前月から変わらず、引き続き高水準が見込まれている。
消費量は、世界全体で11億9588万トン(同5.2%増、同0.3%増)と前月から381万トン上方修正された。主要生産国の中では、ウクライナが40万トン上方修正された。
この結果、期末在庫は、増産見込みを背景に前月から112万トン上方修正の3億554万トン(同4.4%増)とされ、2019/20年度に近い在庫水準が見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2021/22年度の米国トウモロコシ需給予測、前回と変化なし
USDA/WAOBは2021年12月9日、2021/22年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは、前回と変化なく、次の通りである(表3)。
生産量は、150億6200万ブッシェル(3億8259万トン(注)、前年度比6.7%増、前月同)と前月対比で据え置かれたが、前年度からかなりの程度増加する見込みであり、これまでの統計で最も生産量の多かった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)に近い水準となっている。
消費量は、123億3000万ブッシェル(3億1320万トン、同2.2%増、前月同)と前月対比で据え置かれた。
輸出量は、25億ブッシェル(6350万トン、同9.2%減、前月同)と前月対比で据え置かれたが、依然として記録的な輸出量となった前年度からかなりの程度の減少が見込まれている。
期末在庫は、14億9300万ブッシェル(3794万トン、同20.8%増、前月同)と前月対比で据え置かれた。
この結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は10.1%(同1.8ポイント増、前月並み)と前月から引き続き10%台を保っている。
また、生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり5.45米ドル(627円。1キログラム当たり24.7円)と前月対比で据え置かれた。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
9月の輸出量、前年同月および前月から大幅に減少し、価格は下落傾向
米国のトウモロコシ輸出量は2021年4月以降、減少傾向が続き、2021年9月は256万3002トン(前年同月比34.7%減、前月比25.9%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同月の主要国別輸出量は、表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり277.7米ドル(3万1936円、同60.0%高、同4.6%安)と前年同月から大幅に上昇したものの、2020年9月以降、11カ月連続で上昇していた価格は7月をピークに反転し、前月に引き続きやや下落した。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
【貿易動向:コーンスターチ】
9月の輸出量は前年同月からかなりの程度、前月からかなり大きく減少
2021年9月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万5138トン(前年同月比6.4%減、前月比13.6%減)と前年同月からかなりの程度、前月からかなり大きく減少した。同月の主要国別輸出量は、表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり635.9米ドル(7万3129円、同19.9%高、同0.9%高)と前年同月からは大幅に、前月からはわずかに上昇した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における2021年9月の製粉業者の純費用は、1ポンド
(注)当たり8.98セント(10.3円、前年同月比68.7%高、前月比26.3%安)と前月より大幅に下落したものの、依然として前年同月比では大幅に上昇し、高い水準となった。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
新年度(2021/22年度)の需給予測、生産量は前年度から増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の2021年11月現在の予測によると、2021/22年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は967万ライ(155万ヘクタール
(注)、前年度比1.4%増)、単収は1ライ当たり3.38トン(同1.5%増)、生産量は3269万トン(同3.1%増)と見込まれている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格、上昇基調が持続し、1キログラム当たり15バーツ台の水準に達する
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2021年12月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり15.1バーツ(52円、前年同期比11.9%高、前週同)と前年同期からかなり大きく上昇した(図3)。タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)研究・イノベーション開発センターによると、引き続き輸出需要の高まりなどを受けて、キャッサバ製品価格は上昇傾向で推移しているとし、同週の価格は2018年11月第1週と同水準となる15バーツ台を記録したことで、今後の動向が注目されている。
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月から大幅に増加したものの、前月から大幅に減少
2021年10月のタピオカでん粉輸出量は、28万2301トン(前年同月比23.1%増、前月比17.9%減)と、前年同月から大幅に増加したものの、前月から大幅に減少した。同月の主要国別輸出量は、表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり480.0米ドル(5万5200円、同6.7%高、前月同)と、前年同月からかなりの程度上昇したものの、前月と同程度であった。
現地調査会社などによると、中国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加と飼料需要の高まりを背景に、コーンスターチの原料確保が難しくなっている状況を受けて、代替品としてのタピオカでん粉の輸入が一部で見られるとし、高値基調持続の一因であると考えられている。
ベトナム
【生産動向】
2020/21年度作の収穫はおおむね終了
ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、2021年10月現在、同国第2位のキャッサバ作付面積を有する南部のタイニン省では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止策として8月から実施されていた厳格な隔離措置が緩和されたことにより、一時的に滞っていたキャッサバの収穫やでん粉の製造などが円滑に行われるようになり、2020/21年度作(8月〜翌7月)の同省の収穫が終わっていないキャッサバ作付面積は15〜20%程度(主にタンチャウ県)と見込まれている。なお、これは次期作のキャッサバの挿し木を得るために収穫を待っているもので、これらのキャッサバは11月の前半に収穫される予定である。
なお、キャッサバモザイク病(注1)は10月21日現在、中央直轄5都市および58省のうち1市22省(前月同)などの合計7万9876ヘクタール(9月23日比6.9%増)で感染が確認された(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
10月の輸出量は前年同月からは大幅に、前月からはやや減少
AgroMonitorによると、2021年10月のタピオカでん粉輸出量は、15万3427トン(前年同月比21.2%減、前月比3.9%減)と前年同月から大幅に、前月からやや減少した。同国の主要国別輸出量は、表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり490米ドル(5万6350円、同23.4%高、同3.6%高)と、前年同月からは大幅に、前月からはやや上昇した。
2021年のタピオカでん粉の輸出量は、COVID-19の影響で製品の出荷に遅延が生じていることや、タイなどその他主産国との競合などにより、前年と比較して減少傾向で推移している。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月から大幅に増加するも、前月よりかなりの程度減少
2021年9月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、3万2996トン(前年同月比44.4%増、前月比6.8%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月よりかなりの程度減少した。同月の主要国別輸出量は、表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり554ユーロ(7万2020円、同17.2%安、同2.3%高)と前年同月から大幅に下落したものの、前月からわずかに上昇した。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム チェコのでん粉原料用ばれいしょ、ばれいしょでん粉の需給動向
中東欧の主要なばれいしょでん粉生産国の一つであるチェコは、東西に細長い国土を持ち、面積は日本の約5分の1の7万8866平方キロメートル、人口は1069万人である(参考:北海道の面積約8万3000平方キロメートル〈国土のおよそ22%〉、人口約523万人)。同国のばれいしょ生産は、中央南部のヴィソチナ州が最も盛んであり、次いで、首都プラハを取り囲む中央ボヘミア州、南部の南ボヘミア州で行われ、この3州で同国のばれいしょ総生産量の7割を占める(コラム−図)。
2020年のばれいしょ作付面積は国土面積の3分の1程度に相当する約2万3900ヘクタール、生産量は約69万6000トンと、作付面積、生産量ともに2018年および2019年に減少したものの、2020年には回復した(コラム−表1)。
このうち、2019年にでん粉製造用に加工処理されたでん粉用ばれいしょの重量(ばれいしょ処理量)は生産量の2割に相当する約14万7000トンとなり、でん粉製造量は約3万2000トンとなった(コラム−表2)。
チェコでは、国内2社がばれいしょでん粉の製造を行っている。Lyckeby Amylex社は、チェコ南西部を拠点とする同国最大のばれいしょでん粉製造会社で、ばれいしょでん粉のほか、デキストリンなど化工でん粉も製造する。ばれいしょ処理量は年間約10万トン前後で、約2万トン台のでん粉を製造する。もう一方のŠkrobárny Pelh?imov社は、チェコ中央南部や南部に工場を持ち、ばれいしょでん粉のほか、コーンスターチや小麦でん粉、化工でん粉、グルコースシロップなどを製造する。ばれいしょ処理量は年間約5万トン台で、約1万トン台のでん粉を製造する。
2020年のばれいしょでん粉の輸出量は、年間約1万7000トンと、同国産でん粉のおよそ半数前後が輸出に回る状況にあり、そのうち約8割がEU域内向けとなっている。主な輸出先国はイタリア(2800トン)で、次いでスロバキア(2200トン)、ドイツ(1500トン)となっている。
なお、報道によれば、Lyckeby Amylex社は、2021年に約9000トンのでん粉を中国へ輸出する計画があるとし、さらなる輸出拡大に向けて、でん粉包装ラインおよび輸送倉庫を更新するための設備投資を行う予定があるとしている。この同社の動きに対し、今後、同国産でん粉の中国向け輸出量は増加していく可能性があると見られているとともに、EU域内向けが主体となっている同国のでん粉輸出に変化が生じるものとして注目が集まっている。
|
化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月からはわずかに増加したものの、前月からはかなりの程度減少
2021年10月の化工でん粉の輸出量は、8万8271トン(前年同月比1.2%増、前月比8.6%減)と前年同月からはわずかに増加したものの、前月からはかなりの程度減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表10の通りである。
米国
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加
2021年9月の化工でん粉の輸出量は、2万9397トン(前年同月比18.7%増、前月比7.1%増)と前年同月からは大幅に、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要国別輸出量は、表11の通りである。
中国
【貿易動向】
10月の輸出量、前年同月からはかなりの程度、前月からはやや減少
2021年10月の化工でん粉の輸出量は、6600トン(前年同月比6.1%減、前月比5.4%減)と前年同月からはかなりの程度、前月からはやや減少した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表12の通りである。
EU
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からはやや、前月からはかなりの程度増加
2021年9月の化工でん粉の輸出量(注)は、5万6164トン(前年同月比5.3%増、前月比10.0%増)と、前年同月からはやや、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
9月の輸出量、前年同月からは大幅に、前月からはやや増加
2021年9月の化工でん粉の輸出量は、3697トン(前年同月比2.5倍、前月比5.3%増)と前年同月からは大幅に、前月からはやや増加した。同月の主要輸出先国別の輸出量は、表14の通りである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272