でん粉の国内需給

　農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」（昭和40年法律第109号）により、でん粉に関して適切な価格調整を図るため、半期ごとにでん粉の需給見通しを公表している。3月に公表したでん粉の需給見通しの概要は、次の通り。

　用途ごとのでん粉の需要量の見通しは以下の通り。

【糖化用向けでん粉の需要量】
令和2でん粉年度は、前年度からわずかに減少
　令和2でん粉年度は、新型コロナウイルス感染症（COVID−19）による外出自粛の影響により、異性化糖の仕向け先の約5割を占める清涼飲料向けの販売か?減少していることなどから、前年度を4万5000トン下回る162万1000トンとなった。

　3でん粉年度は、まん延防止等重点措置適用解除による行動制限の緩和や、3回目のワクチン接種の進展による経済活動の回復により、清涼飲料向けの需要の緩やかな回復が想定されるとし、前年度を9000トン上回る163万トンと見通している。

【化工でん粉用向けでん粉の需要量】
令和2でん粉年度は、前年度からかなり大きく減少
　令和2でん粉年度は、COVID−19による在宅勤務の増加などに伴うオフィスでの紙の利用減や、外出機会の減少に伴う無料配布誌の印刷の減などによる製紙向けなどの需要減少や、外食需要の低迷による麺類向けなどの需要減少から、前年度を3万8000トン下回る26万3000トンとなった。

　3でん粉年度は、ネットショッピングの利用機会増に伴う段ボール需要の増加が一定程度想定されるとし、前年度を2万4000トン上回る28万7000トンと見通している。

【その他用途向けでん粉の需要量】
令和2でん粉年度は、前年度並み
　令和2でん粉年度は、COVID−19による外出自粛の影響により、家庭向けの食品需要は増加したものの、業務用を含めた加工食品向けの需要や、外食産業用に供するビール向けの需要が減少したことから、前年度を1000トン下回る49万4000トンとなった。

　3でん粉年度は、製紙向け需要の回復により、生でん粉として製紙会社で化工でん粉に加工されるものの需要も増加が見込まれていることや、大手ビール製造業者がビールの増産（前年比1〜2割程度）を見込んでいることなどから、前年度を2万9000トン上回る52万3000トンと見通している。

　各種でん粉の供給量の見通しは以下の通り。

【かんしょでん粉の生産量】
令和2でん粉年度は、前年度から大幅に減少
　令和2年産のでん粉原料かんしょの生産量が、平成30でん粉年度からの3年連続のサツマイモ基腐(もとぐされ)病発生の影響により減少したことから、かんしょでん粉の生産量は、前年度を7000トン下回る2万1000トンとなった。

　3年産についても、引き続きサツマイモ基腐病が発生したことから、かんしょでん粉の生産量は前年度並みの2万1000トンと見通している。

【ばれいしょでん粉の生産量】
令和2でん粉年度は、前年度からかなりの程度減少
　令和2年産のでん粉原料ばれいしょの生産量は、6月後半の低温・日照不足の影響による着いも数の減少などにより減少が懸念されることから、ばれいしょでん粉の生産量は前年度を1万5000トン下回る16万5000トンとなった。

　3年産については、6月下旬から7月までの高温・少雨の影響により、いもの肥大が抑制されたことなどから、ばれいしょでん粉の生産量は前年度を1万5000トン下回る15万トンと見通している。

【コーンスターチの供給量】
令和2でん粉年度は、前年度からわずかに減少
　令和2年度は、COVID−19による外出自粛の影響により、コーンスターチなどから製造される異性化糖の主な用途である清涼飲料の販売が減少していることから、2でん粉年度の供給量はでん粉ベースで前年度を6万トン下回る204万8000トンとなった。

　3年度は、まん延防止等重点措置適用解除による行動制限の緩和や、3回目のワクチン接種の進展による経済活動の回復により、清涼飲料向けの需要の緩やかな回復が想定されることに加え、糖化製品以外に仕向けられるコーンスターチ（製紙向けやビール向けなど）の需要の増加も想定されるとし、前年度を3万8000トン上回る208万6000トンと見通している。

【輸入でん粉の供給量】（糖化製品、化工でん粉用）
令和2でん粉年度は、前年度からかなりの程度減少
　令和2でん粉年度は、COVID−19による外出自粛の影響により清涼飲料向けの販売が減少していることなどから、前年度を1万2000トン下回る12万6000トンとなった。

　3でん粉年度も、ネットショッピングの利用機会増に伴う段ボール需要の増加や、個食中心の外食である麺類需要の回復が想定されるとし、前年度を1万トン上回る13万6000トンと見通している。

【輸入でん粉の供給量】（その他用）
令和2でん粉年度は、前年度から大幅に増加
　令和2でん粉年度は、巣ごもり需要によるインスタント食品などの家庭向け食品の需要増加により、前年度を2000トン上回る1万1000トンとなった。

　3でん粉年度は、その他用として輸入されるでん粉の主な用途である加工食品向けや建材向け需要などについて一定程度の回復が想定されるとし、需要に応じた輸入がなされることから、前年度を2000トン上回る1万3000トンと見通している。

【小麦でん粉の供給量】
令和2でん粉年度は、前年度からかなりの程度減少
　小麦でん粉は、主に畜水産練製品向けとして供給されており、令和2でん粉年度は前年度を1000トン下回る1万5000トンとなった。

　3でん粉年度についても、安定した供給がなされると見込まれ、前年並みの1万5000トンと見通している。

【タピオカでん粉の輸入動向】
2月の輸入量は前年同月から大幅に増加
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のタピオカでん粉の輸入量は、8313トン（前年同月比19.6％増、前月比15.0％増）と、前年同月から大幅に増加した（図1）。

　輸入先はタイ、ベトナムおよび台湾の3カ国・地域で、輸入量は次の通りであった。

　タイ　　　 8291トン
　（前年同月比19.8％増、前月比14.9％増）
　ベトナム　　 12トン
　（同28.4％減、同17.8％減）
　台湾　　　　 10トン
　（同0.2％増、前月輸入実績なし）

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、6万1060円（前年同月比27.5％高、前月比4.6％高）と、前年同月を大幅に上回った（図2）。

　国・地域別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

　タイ　　　　　　　  6万672円
　（前年同月比27.8％高、前月比4.2％高）
　ベトナム　　　　16万3699円
　（同42.5％高、同26.7％高）
　台湾　　　　　　26万1635円
　（同13.7％高、前月輸入実績なし）
 

【サゴでん粉の輸入動向】
2月の輸入量は前年同月からやや増加
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のサゴでん粉の輸入量は、1749トン（前年同月比5.6％増、前月比57.9％増）と、前年同月からやや増加した（図3）。

　輸入先はマレーシアのみで、国・地域別の輸入量は次の通りであった。

　マレーシア　　　　1749トン
　（前年同月比11.7％増、前月比88.5％増）

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、6万3185円（前年同月比16.5％高、前月比2.7％高）と、前年同月を大幅に上回った（図4）。

　国・地域別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

　マレーシア 　　6万3185円
　（前年同月比17.4％高、前月比2.7％高）

【ばれいしょでん粉の輸入動向】
2月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のばれいしょでん粉の輸入量は100トン（前年同月比90.1％減、前月比86.1％減）と、前年同月から大幅に減少した（図5）。　

　輸入先はデンマークのみで、輸入量は次の通りであった。

　デンマーク　　　　　100トン
　（前年同月同、前月比66.7％増）

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、9万1650円（前年同月比6.8％高、前月比4.0％安）と、前年同月をかなりの程度上回った（図6）。

　国・地域別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

　デンマーク　　　9万1650円
　（前年同月比6.4％高、前月比0.5％安）

【でん粉誘導体の輸入動向】
2月の輸入量は前年同月からやや増加
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のでん粉誘導体の輸入量は、3万2349トン（前年同月比4.0％増、前月比14.2％減）と、前年同月からやや増加した（図7）。

　でん粉誘導体の輸入先は17カ国・地域で、最大の輸入先はタイであった。主要輸入先からの輸入量は次の通りで、タイが輸入量の約8割を占めており、次いでベトナム、デンマークとなっている（表3）。

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、10万5468円（前年同月比23.4％高、前月比4.5％高）と、前年同月を大幅に上回った。
 

【デキストリンの輸入動向】
2月の輸入量は前年同月から大幅に増加
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のデキストリンの輸入量は、1670トン（前年同月比2.0倍、前月比66.9％増）と、前年同月から大幅に増加した（図8）。

　デキストリンの輸入先は10カ国・地域で、輸入量は上位輸入先の数量および各国のシェアも含め、月ごとの変動が大きい。

　上位輸入先からの輸入量は次の通りで、ベトナムおよびタイで輸入量の約7割を占めている（表4）。

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、11万2216円（前年同月比7.9％安、前月比13.2％安）と、前年同月をかなりの程度下回った。

【コーンスターチ用トウモロコシの輸入動向】
2月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2022年2月のコーンスターチ用トウモロコシの輸入量は、18万649トン（前年同月比23.1％減、前月比2.0％増）となり、前年同月から大幅に減少した（図9）。

　輸入先は、米国のみで国・地域別の輸入量は次の通りであった。

　米国　　　　　18万649トン
　（前年同月比22.1％減、前月比27.1％増）

　2022年2月の1トン当たりの輸入価格は、3万9872円（前年同月比50.5％高、前月比3.9％高）と、前年同月を大幅に上回った。

　国・地域別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。
　
　米国　　　　　　3万9872円
　（前年同月比50.1％高、前月比2.6％高）