2. 日本の品目別主要輸入先の動向
最終更新日:2022年7月11日
2. 日本の品目別主要輸入先の動向
2022年7月
本稿中の為替レートは2022年5月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=129.21円、1タイバーツ=3.83円、1ユーロ=139.26円である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世 界
【需給動向:トウモロコシ】
2022/23年度の世界のトウモロコシ、期末在庫は前年度並みの見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2022年6月10日、2022/23年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は11億8581万トン(前年度比2.5%減)と前月から509万トン上方修正されたものの、過去最高となった前年度をわずかに下回ると見込まれている。国別に見ると、ウクライナの生産量が政府の発表を踏まえて前月から550万トン上方修正され、これが反映される形となった。その他の主要国の生産量はいずれも前月から据え置かれた。
輸出量は、世界全体で1億8267万トン(同7.1%減)と前月から3万トン下方修正され、前年度からかなりの程度減少が見込まれている。
輸入量は、世界全体で1億7668万トン(同1.5%減)と前月から16万トン下方修正され、前年度からわずかな減少が見込まれている。国別に見ると、EUは小麦価格高騰などの影響により前月から100万トン上方修正された一方で、モロッコ、ヨルダンおよびペルーなどが下方修正されたことで、これを吸収する形となった。
消費量は、世界全体で11億8628万トン(同1.0%減)と前月から131万トン上方修正されたが、前年度からわずかな減少が見込まれている。国別に見ると、ウクライナが150万トン、EUが100万トンそれぞれ上方修正された。最大の消費国である中国は2億9500万トンと前月から据え置かれた。
この結果、期末在庫は事前予想を上回る3億1045万トン(同0.2%減)と前月から532万トン上方修正され、前年度並みの水準が見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2022/23年度の米国トウモロコシ、在庫率は9%台の見込み
USDA/WAOBは2022年6月10日、2022/23年度(9月〜翌8月)の米国のトウモロコシ需給見通しを更新した(表3)。
生産量は、144億6000万ブッシェル(3億6730万トン(注)、前年度比4.3%減)と前月から据え置かれ、前年度からやや減少すると見込まれている。
消費量は、121億7000万ブッシェル(3億913万トン、同2.2%減)と前月から500万ブッシェル(13万トン)上方修正されたが、前年度からわずかな減少が見込まれている。用途別では、食品、種子、その他工業向けがいずれも上方修正された。一方で、異性化糖向けは、グルコースとデキストロースおよびでん粉用向けの増加の影響を受けて減少が見込まれている。
輸出量は、24億ブッシェル(6096万トン、同2.0%減)と前月から据え置かれ、前年度からわずかに減少すると見込まれている。
この結果、期末在庫は、21/22年度の輸出量の下方修正を受けた22/23年度の期首在庫の上方修正により、14億ブッシェル(3555万トン、同5.7%減)と前月から4000万ブッシェル(102万トン)上方修正されたが、前年度をやや下回ると見込まれている。
また期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は9.6%(同0.4ポイント減)と、依然として10%を割り込んでいる。
生産者平均販売価格は、同13.4%高の1ブッシェル当たり6.75米ドル(872円。1キログラム当たり34.3円)と前月から据え置かれたが、前年度からかなり大きく上昇し、12/13年度に記録した同6.89米ドル以来の高値が予測されている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
3月の輸出量は増加傾向が続き、価格は300ドルを突破
米国のトウモロコシ輸出量は2021年10月から増加傾向が続き、22年3月は745万9213トン(前年同月比21.4%減、前月比11.9%増)と前年同月から大幅に減少したものの、前月からかなり大きく増加した。同月の主要国別輸出量は表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS
(注))は、1トン当たり305.9米ドル(3万9525円、同19.9%高、同8.7%高)と前年同月から大幅に、前月からかなりの程度上昇し、21年7月以来、8カ月ぶりの300ドル台となった。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB※価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
※Free On Board:貨物を船に乗せた段階で支払われる取引条件。
【貿易動向:コーンスターチ】
輸出価格は700ドルを突破
2022年3月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万4285トン(前年同月比13.3%減、前月比13.9%減)と前年同月および前月からかなり大きく減少した。同月の主要国別輸出量は表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり765.0米ドル(9万8846円、同23.2%高、同10.0%高)と前年同月から大幅に、前月からかなりの程度上昇し、20年6月以来、1年9カ月ぶりの700ドル台となった。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における22年3月の製粉業者の純費用(Net Cost)は、1ポンド
(注)当たり12.78セント(16.5円、前年同月比50.3%高、前月比15.5%高)と依然として前年同月比では大幅に、前月からかなり大きく上昇し、高い水準となった。
(注)1ポンドは約0.45キログラム。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
2021/22年度のキャッサバ生産量は前年度からわずかに減少する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の予測(2022年5月)によると、2021/22年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は1018万ライ(163万ヘクタール(注)、前年度比2.2%減、前月同)、単収は1ライ当たり3.41トン(同1.2%増、前月同)、生産量は3469万トン(同1.1%減、前月同)と、前月予測といずれも同量が見込まれている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格は、17バーツ台後半に突入
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2022年6月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり17.50バーツ(67円、前年同期比25.0%高、前週比0.6%高)と前年同期から大幅に上昇し、過去10年間での最高額を更新した(図3)。国内価格は20年後半から上昇傾向にあったが、22年4月以降は原料費や燃料費の上昇により急騰している。タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)研究・イノベーション開発センターによると、ロシアのウクライナ侵攻による穀物不足に対する代替品として輸出需要が引き続き高いことから、キャッサバ製品の価格は今後も高い水準で推移すると予測されている。
【貿易動向】
輸出価格は500ドルを突破
2022年4月のタピオカでん粉輸出量は、28万2866トン(前年同月比19.0%増、前月比27.3%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月からは大幅に減少した。同月の主要国別輸出量は表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり503.8米ドル(6万5096円、同3.9%高、同2.3%高)と前年同月からやや、前月からわずかに上昇し、18年10月以来、3年6カ月ぶりに500ドル台となった。
ベトナム
【生産動向】
各地で2022/23年度のキャッサバ作付けが加速
ベトナムの調査会社(AgroMonitor)によると、各地で2022/23年度のキャッサバの作付けが進んでいる。北部の主産地であるソンラ省では、3月下旬〜4月上旬にかけて作付けが加速され、好調なタピオカ価格と肥料価格の高騰により、トウモロコシ生産農家が一部をキャッサバに切り替えている。今年度の同省の作付面積は、4万7000ヘクタール(前年度比6.2%増)と前年度からかなりの程度増加すると予測されている。また、南部沿岸地域のフーイエン省でも、4月末時点で、今年度の作付予測の93%に当たる2万3330ヘクタールまで作付けが進んだ。一方で、中部高原地域の主産地であるダクラク省では、昨年の異常気象やキャッサバモザイク病(注1)のまん延を受けて、サトウキビ栽培への転換が多くなったことから、作付面積は4万ヘクタール(同9.1%減)と見込まれている。
なお、キャッサバモザイク病は、4月最終週時点で中央直轄5都市および58省のうち1市19省(前月から5省増加)など合計6万6127ヘクタール(3月25日比0.1%減)での感染が確認された(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
4月の輸出量は前年同月から大幅に増加したものの、前月から大幅に減少
AgroMonitorによると、2022年4月のタピオカでん粉輸出量は、15万6625トン(前年同月比48.2%増、前月比48.2%減)と前年同月から大幅に増加したものの、前月から大幅に減少した。同国の主要国別輸出量は表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR
(注)・中国向け)は、1トン当たり512米ドル(6万6156円、同6.9%高、同1.2%高)と前年同月からはかなりの程度、前月からはわずかに上昇し、5カ月連続で500ドル台となった。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月から大幅に減少したものの、前月からやや増加
2022年3月のばれいしょでん粉輸出量
(注)は、2万9853トン(前年同月比22.6%減、前月比3.3%増)と前年同月から大幅に減少したものの、前月からやや増加した。同月の主要国別輸出量は表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり673ユーロ(9万3722円、同15.2%高、同1.7%安)と前年同月からかなり大きく上昇したものの、前月からわずかに下落した。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム クリーンラベルをめぐる欧州の動向
クリーンラベルとは、明確な定義はないものの、主に食品表示の簡素化を指す用語として利用され、化学合成された添加物の使用を避け、食品パッケージに表示される原料を少なく簡素化し、分かりやすくするといった取り組みである。さらに、環境や従業員を尊重する責任ある企業によって作られた製品などもクリーンラベル製品とされる場合もあり、各国や団体、企業による独自の解釈が広がっている(コラムー表1)。
欧州でもクリーンラベルの公的な定義はなく、食品ラベルの表示規則(Regulation〈EU〉No1169/2011)の中でも言及されていない。一方で、欧州のクリーンラベル市場について、2019〜26年までの年次成長率は6.8%ともいわれており、原料供給者であるでん粉メーカーにもクリーンラベル用原料の製品展開に取り組む企業が増加している。例えば、スウェーデンのでん粉メーカーであるLuckeby社は、食材のおいしさや便利さだけではなく、シンプルかつ認識可能な原料や材料から製造されている製品を求める消費者が増加しているとし、クリーンラベル用のでん粉製品シリーズを展開している(コラムー表2)。
このように、欧州のクリーンラベル市場の拡大が見込まれる中で、先述した通りクリーンラベルに関する共通的な定義や規制がないことから、表示に起因する混乱を指摘する声もあり、今後の動向が注目されている。
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化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。
タイ
【貿易動向】
4月の輸出量は前年同月からやや、前月から大幅に減少
2022年4月の化工でん粉の輸出量は、9万684トン(前年同月比3.2%減、前月比18.6%減)と前年同月からやや、前月から大幅に減少した。同月の主要輸出先別の輸出量は表10の通りである。
米国
【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月からかなりの程度、前月からわずかに減少
2022年3月の化工でん粉の輸出量は、2万7953トン(前年同月比6.2%減、前月比2.3%減)と前年同月からかなりの程度、前月からわずかに減少した。同月の主要国別輸出量は表11の通りである。
中国
【貿易動向】
4月の輸出量は前年同月からかなりの程度、前月からやや増加
2022年4月の化工でん粉の輸出量は、8343トン(前年同月比9.4%増、前月比3.8%増)と前年同月からかなりの程度、前月からやや増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表12の通りである。
EU
【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月からかなり大きく減少したものの、前月からはかなりの程度増加
2022年3月の化工でん粉の輸出量
(注)は、5万3453トン(前年同月比11.8%減、前月比6.2%増)と前年同月からかなり大きく減少したものの、前月からはかなりの程度増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
3月の輸出量は前年同月および前月から大幅に増加
2022年3月の化工でん粉の輸出量は、4141トン(前年同月比75.7%増、前月比41.6%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同月の主要輸出先別の輸出量は表14の通りである。
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