2. 日本の品目別主要輸入先の動向
最終更新日:2022年11月10日
2. 日本の品目別主要輸入先の動向
2022年11月
本稿中の為替レートは2022年9月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=145.81円、1タイバーツ=3.89円、1ユーロ=143.82円である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世 界
【需給動向:トウモロコシ】
2022/23年度の世界のトウモロコシ、期末在庫は前年度比微減見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2022年10月12日、22/23年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は11億6874万トン(前年度比4.0%減)と前月から384万トン下方修正され、前年度をやや下回ると見込まれている。地域別に見ると、インドなどで生産量が増加したものの、フランス、ルーマニアなどでの減産が見込まれるEUや米国の生産量が前月から下方修正されたことで、これが吸収される形となった。特に、EUは5620万トン(同20.8%)と、今年度と同等の干ばつ被害があった07/08年度以来の不作が見込まれている。
輸入量は、世界全体で1億7896万トン(同2.7%減)と前月から71万トン上方修正されたものの、前年度からわずかな減少が見込まれている。地域別に見ると、EUは前年度末から減産を背景とした輸入が増加する中で、特にブラジルやウクライナなどの主産国からの輸入が増えており、輸入量が2000万トン(前年同)と前月から100万トン上方修正された。一方で、世界最大の輸入国である中国は1800万トン(同18.2%減)と大幅な減少が見込まれていることから、EUが世界最大の輸入元になると予測される。
消費量は、世界全体で11億7455万トン(同2.4%減)と前月から563万トン下方修正され、前年度からわずかな減少が見込まれている。地域別に見ると、最大の消費国である中国のほか、米国やブラジルなどの主要国は前月から据え置かれたものの、ウクライナやEUなどをはじめとした国々で下方修正されたことが影響した。
輸出量は、世界全体で1億8304万トン(同9.8%減)と前月から54万トン下方修正され、前年度からかなりの程度減少が見込まれている。地域別に見ると、ウクライナは近時の輸送環境などの改善を受け、前月から250万トン上方修正されたものの、前年度比で42.6%減の1550万トンと大幅な減少が見込まれている。また、EUも主要輸出国であるルーマニアの減産の影響を受け270万トン(同55.0%減)と大幅な減少が予測されている。
この結果、期末在庫は3億119万トン(同1.9%減)と前月から334万トン下方修正され、前年度からわずかな減少が見込まれている。
米 国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
2022/23年度の米国トウモロコシ、3カ月連続で生産量を下方修正
USDA/WAOBは2022年10月12日、22/23年度(9月〜翌8月)の米国のトウモロコシ需給見通しを更新した(表3)。
生産量は、単収減少予測を受けて138億9500万ブッシェル(3億5295万トン(注)、前年度比7.8%減)と前月から4900万ブッシェル(124万トン)下方修正され、前年度からかなりの程度減少すると見込まれている。
消費量は、120億ブッシェル(3億481万トン、同3.9%減)と前月から据え置かれ、前年度からやや減少すると見込まれている。内訳を見ると、飼料など向けが5000万ブッシェル(127万トン)上方修正されたものの、エタノール向けが同量下方修正となったことで、これが吸収される形となった。
輸出量は、21億5000万ブッシェル(5461万トン、同13.0%減)と前月から1億2500万ブッシェル(318万トン)下方修正され、前年度からの減少幅が拡大すると見込まれている。
この結果、期末在庫は、減産を背景に前月から4700万ブッシェル(119万トン)下方修正され、11億7200万ブッシェル(2976万トン、同14.9%減)と、引き続き前年度をかなり大きく下回ると見込まれている。
また期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は8.3%(同0.9ポイント減)と、8%台前半にまで低下すると予測されている。
生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり6.80米ドル(992円。1キログラム当たり39.0円)と前月から上方修正され、前年度からかなり大きく上昇し、12/13年度に記録した同6.89米ドル以来の高値水準となることが予測されている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
輸出価格は5カ月連続300米ドル超過も下落傾向
2022年7月の米国のトウモロコシ輸出量は、中国向けが前月から大幅に増加したものの、日本向けなど他の主要輸出先が大幅に減少したため、459万3412トン(前年同月比16.3%減、前月比16.5%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり338.3米ドル(4万9328円、同12.6%高、同1.7%安)と前年同月からかなり大きく上昇し、5カ月続けて300米ドルを超過したものの、6月から2カ月連続で下落した。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB※価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
※Free On Board:貨物を船に乗せた段階で支払われる取引条件。
【貿易動向:コーンスターチ】
7月の輸出量は前月からわずかに減少し、価格は700米ドル台で推移
2022年7月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万6255トン(前年同月比10.6%増、前月比1.4%減)と前年同月からかなりの程度増加したものの、前月からわずかに減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり772.5米ドル(11万2638円、同25.2%高、同1.7%高)と前月からわずかに上昇して700米ドル台で推移した。
なお、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における22年7月の製粉業者の純費用(Net Cost)は、1ポンド当たり12.72米セント(注)(18.5円、前年同月比2.9%高、前月比10.9%安)と前月からかなりの程度下落し、前年同月と同程度の水準となった。
(注)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。
タピオカでん粉
タ イ
【生産動向】
2022/23年度のキャッサバ生産量は前年度からやや増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の予測(2022年9月)によると、2022/23年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は1039万ライ(166万ヘクタール(注)、前年度比2.1%増、前月同)、単収は1ライ当たり3.45トン(同1.2%増、前月同)、生産量は3580万トン(同3.2%増、前月同)と見込まれている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格は高い水準を安定的に推移
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2022年10月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり17.0バーツ(66円、前年同期比18.9%高、前週同)と前年同期から大幅に上昇したものの、8月以降は安定して推移している(図3)。国内価格は22年4月以降、原料費や燃料費の上昇により急騰し、7月第3週を境に下落に転じたものの、依然として高い水準を維持している。一方で、22年1月以降上昇を続けていたキャッサバチップの価格は、わずかではあるものの9月に下落した(表1)。これは、主産地である東北部の洪水によるキャッサバの質の低下が要因とされており、増産・単収増の見込みであるキャッサバの生育や、タピオカでん粉の生産への影響について注視が必要とみられる。
【貿易動向】
8月の輸出量は前月から大幅に増加
2022年8月のタピオカでん粉輸出量は、32万2909トン(前年同月比11.4%増、前月比45.6%増)と前年同月からかなり大きく、前月から大幅に増加した。同月の主要国・地域別輸出量は表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり519.0米ドル(7万5675円、同7.0%高、同1.6%安)と7カ月ぶりに下落に転じた前月からさらに続落した。
ベトナム
【生産動向】
2022/23年度のキャッサバ作付面積は減少するものの、収量は増加する見込み
ベトナムの民間調査会社(AgroMonitor)によると、2022年8月現在、国内のキャッサバは全体的には生育期にあるものの、年初に作付けしたほ場では早くも収穫作業が始まっている。主産地
(注1)の作付面積合計は30万7000ヘクタール(前年比2.8%減)と前年からわずかに減少が見込まれているが、キャッサバの収量は好天に恵まれ、キャッサバモザイク病
(注2)などの病虫害の大きな発生も見られないことから、前年と比べて増加すると予測されている。
(注1)ソンラ省、タインホア省、ザライ省、ダクラク省、コントゥム省、フーイエン省、タイニン省
(注2)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。8月末現在、同国では中央直轄5都市および58省のうち1市10省などの合計3万4836ヘクタール(前年同月比54.7%減)で感染が確認(※)され、前年同月から大幅に減少しているものの、引き続き被害の発生が報告されている。
(※)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
8月の輸出量は前月から大幅に増加し、輸出価格は8カ月ぶりに500米ドルを下回る
AgroMonitorによると、2022年8月のタピオカでん粉輸出量は、18万8797トン(前年同月比18.0%増、前月比20.7%増)と前年同月および前月から大幅に増加した。同国の主要国・地域別輸出量は表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり496米ドル(7万1630円、同5.1%高、同3.9%安)と前月からやや下落し、8カ月ぶりに500米ドルを下回った。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
E U
【貿易動向】
7月の輸出量は前月からかなりの程度減少し、価格は4カ月連続上昇
2022年7月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、3万2573トン(前年同月比12.0%減、前月比7.0%減)と前年同月からかなり大きく、前月からかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり777ユーロ(11万1748円、同42.9%高、同4.7%高)と前年同月から大幅に、前月からやや上昇した。前月からの上昇は4カ月連続となり、800ユーロ台目前となった。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム 欧州主要国のでん粉生産動向
−フランスのコーンスターチ生産−
フランスでん粉協会(USIPA)によると、2019年の同国のでん粉生産量は310万トンで、その内訳は、小麦でん粉が最も多く5割弱(145万7000トン)を占め、次いでコーンスターチが4割強(136万4000トン)、ばれいしょでん粉が1割弱(24万8000トン)などとなっている(コラム−図1)。なお、21/22年度(7月〜翌6月)のコーンスターチ生産量は約117万8000トンと推定される(注)。
(注)USIPAによると、歩留まり率62.5%(1トンのコーンスターチ生産のために、約1.6トンのトウモロコシを投入)であることから、フランス農水省の関連団体であるFranceAgriMerが公表するトウモロコシのでん粉仕向け量から農畜産業振興機構が試算。
フランスのトウモロコシ業界団体であるMaiz’ Europ’によると、同国のトウモロコシ主産地は南西および北東部で、北東部のグラン・テスト地域圏やオー・ド・フランス地域圏にはコーンスターチの製造工場が集中している。近年はグラン・テスト地域圏で生産される食用トウモロコシの約37%が国内でん粉原料用に供され、約25%がでん粉原料用としてベルギーやドイツなどの近隣国に輸出されている。
Maiz’ Europ’によると、同国では2社がコーンスターチの製造を行っている。グラン・テスト地域圏にはTereos社のMarckolsheim工場とRoquette社のBeinheim工場が、オー・ド・フランス地域圏にはRoquette社のLestrem工場がそれぞれ存在している(コラム−図2)。
FranceAgriMerによると、21/22年度の食用トウモロコシ生産量のうちでん粉原料用に供されたトウモロコシは188万5000トン(前年度比7.7%増)となり、前年度から増加した(コラム−表)。20/21年度のでん粉仕向け量が減少したのは、19年11月にコーンスターチ工場が1工場閉鎖したためと推測される。
また、現地報道によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて実施されたロックダウン中も同国内のでん粉生産に対し特段の支障は確認されなかったが、製造や輸送に係る経費の増加などが響き、20年のフランスでん粉メーカーの売上高は6%減少したといわれている。 |
化工でん粉
デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要輸出国による主要仕向け先別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。
タ イ
【貿易動向】
8月の輸出量は前年同月および前月からかなりの程度減少
2022年8月の化工でん粉の輸出量は、8万7505トン(前年同月比7.6%減、前月比10.9%減)と前年同月および前月からかなりの程度減少した。同月の主要輸出国・地域別の輸出量は表10の通りである。
米 国
【貿易動向】
7月の輸出量は前年同月からかなりの程度増加したものの、前月からかなりの程度減少
2022年7月の化工でん粉の輸出量は、2万7958トン(前年同月比7.2%増、前月比9.2%減)と前年同月からかなりの程度増加したものの、前月からはかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表11の通りである。
中 国
【貿易動向】
8月の輸出量は3カ月連続1万トンを超過
2022年8月の化工でん粉の輸出量は、1万3100トン(前年同月比2.0倍、前月比0.2%増)と2年10カ月ぶりに1万トンを超過した6月から3カ月連続で増加傾向を維持した。同月の主要輸出国・地域別の輸出量は表12の通りである。
E U
【貿易動向】
7月の輸出量は前年同月から大幅に、前月からかなりの程度減少
2022年7月の化工でん粉の輸出量(注)は、4万4625トン(前年同月比18.2%減、前月比8.3%減)と前年同月から大幅に、前月からかなりの程度減少した。同月の主要輸出国・地域別の輸出量は表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪 州
【貿易動向】
7月の輸出量は前年同月から大幅に、前月からやや増加
2022年7月の化工でん粉の輸出量は、3131トン(前年同月比24.7%増、前月比3.3%増)と前年同月から大幅に、前月からやや増加した。同月の主要輸出国・地域別の輸出量は表14の通りである。
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