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でん粉の価格調整業務実績について (令和3でん粉年度)

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最終更新日:2022年12月9日

でん粉の価格調整業務実績について (令和3でん粉年度)

2022年12月

特産調整部、特産業務部

はじめに

 当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、コーンスターチ用輸入とうもろこしおよび輸入でん粉から調整金を徴収し、それを財源として国内のでん粉原料用かんしょ生産者やいもでん粉製造事業者に支援を行うことで内外価格差を調整し、国内のでん粉の安定的な供給の確保を図っている。

 本稿では、令和3でん粉年度(令和3年10月1日〜令和4年9月30日〈以下「3SY」という〉)におけるでん粉の価格調整業務実績について取りまとめたので、報告する。

 なお、令和3砂糖年度における砂糖の価格調整業務実績については、本誌2023年1月号において報告する予定である。

1 調整金徴収業務

(1)3SYの指標価格等

 3SYの指標価格等は表1の通り。

 

(2)でん粉の需要と供給

 令和4年9月に農林水産省が公表したでん粉の需給見通し(以下「需給見通し」という)によると、3SYのでん粉の需給見通しは、表2、3の通り(詳細は、本誌2022年11月号参照)。

 

 

(3)国際相場などの動き

 シカゴ先物相場(期近)は、3SY当初は米国農務省によるとうもろこしの増産予測を受け1ブッシェル当たり500米セント台であったものの、中国における肉豚飼養頭数の回復による飼料需要の増加などを受け、徐々に上昇した。令和4年2月以降、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する穀物相場の急激な上昇により、5月には同800米セント近くまで上昇した。その後、7月になるとウクライナからの穀物輸出の再開が報じられたことで一時的に下落したが、8月以降、米国中西部における高温乾燥により生産見通しが引き下げられたことなどを受け、再び上昇し、3SY末には同700米セントに近い水準となった。

 一方、米ドルの為替相場は、令和3年10月に1米ドル114円の水準でスタートしたが、令和4年3月以降、米国の長期金利の上昇などで急速に進行した円安の影響を受け、3SY末には145円の水準となった(図1)。

 

(4)指定でん粉等の平均輸入価格等

 3SYにおける指定でん粉等の平均輸入価格等は表4の通り。

 

(5)売買実績

 3SYの売買数量は、輸入でん粉が前年度比3.1%増の13万5000トンと、外食需要の回復などにより増加した一方で、でん粉供給量の大半を占めるコーンスターチ用輸入とうもろこしについては、コロナ禍からの需要回復が緩慢であったことなどを受け同0.3%減の300万3000トンと前年度をわずかに下回った。

 売買差額は、シカゴとうもろこし相場の続伸や円安・米ドル高で推移する為替相場、原油価格上昇に伴う海上運賃の上昇などの影響から、輸入とうもろこしなどの平均価格が上昇し、年度を通じてでん粉調整金単価が低い水準で推移したことを受け、輸入でん粉が同14.1%減の4億4500万円、コーンスターチ用輸入とうもろこしが同16.9%減の67億4900万円、合計で同16.7%減の71億9400万円と前年度を大幅に下回った(表5)。

 

2 交付金交付業務など

(1)でん粉原料用いもおよび国内産いもでん粉の生産動向

ア.でん粉原料用ばれいしょ・ばれいしょでん粉
 北海道のばれいしょ生産は、近年170万〜190万トン程度で推移しており、その約4割がでん粉原料用に仕向けられているが、作付面積および収穫量は減少傾向にある。

 3SYについて、需給見通しによると、夏場の高温・少雨による不作の影響を受けばれいしょの収穫量が減少したことから、ばれいしょでん粉の生産量は、前年度比8.6%減の14万8000トンとなる見込みである(表6)。

 

イ.でん粉原料用かんしょ・かんしょでん粉
 南九州のかんしょ生産は、生産者の高齢化による離農を主たる要因として、作付面積および収穫量ともに減少傾向にある。

 3SYについて、需給見通しによると、サツマイモ基腐(もとぐされ)病(立枯症状や塊根部が腐敗する症状)の発生によりかんしょの収穫量が減少したことから、かんしょでん粉の生産量は前年度並みの2万1000トンと、2年度連続で過去最低となる見込みである(表7)。
 

 

(2)交付金の交付状況など

ア.でん粉原料用いも交付金(でん粉原料用かんしょのみ)
 収穫期はおおむね9月から12月であり、いもでん粉製造事業者への売り渡しに応じて交付金を交付している。

 3SYについては、交付金単価がトン当たり770円引き上げられたものの、サツマイモ基腐病の影響でかんしょ生産量が減少したため、交付決定数量は前年度比2.8%減の7万トン、交付決定金額は同0.4%減の19億3200万円となった(表8)。

 

イ.国内産いもでん粉交付金
 ばれいしょでん粉およびかんしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、これに応じて交付金を交付している(表9)。

 

(ア)ばれいしょでん粉の交付状況
 3SYの交付実績は、ばれいしょ収穫量が減少したことを受け、交付決定数量は前年度比2.9%減の10万2000トンとわずかに減少、交付金額は同10.0%減の18億8700万円とかなりの程度減少した。

(イ)かんしょでん粉の交付状況
 3SYの交付実績は、サツマイモ基腐病によりかんしょ収穫量が減少したことを受け、交付決定数量は前年比4.2%減の2万3000トンとやや減少した。その一方で交付金額は同1.6%増の9億1300万円とわずかに増加した。

(3)国庫納付金納付業務(でん粉原料用ばれいしょ)

 でん粉原料用ばれいしょ生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、3SYにおいては、農林水産大臣からの通知に従い、調整金収入から41億9500万円を国庫に納付する予定である(表10)。

 なお、調整金単価の下落により指定でん粉等の調整金収入が減少したことから、納付金額は前年度を下回る見込みである。

 

(4)でん粉の価格調整業務における収支(見込み)

 3SYの収入額は、夏場に清涼飲料向けの糖化製品の需要などがわずかに増加したものの、ウクライナ情勢に端を発する穀物相場高騰による調整金単価の下落が響き、調整金収入は前年度比14億円減となる72億円となった。

 3SYの支出額のうち、ばれいしょでん粉の交付金額は同2億円減の19億円となった。かんしょでん粉およびでん粉原料用かんしょは、サツマイモ基腐病の影響で生産が減少したこともあり、ともに前年度並みの9億円、19億円となった。でん粉原料用ばれいしょへの支援として国の経営所得安定対策の財源として支出する国庫納付金は、調整金収入の減少のため前年度比4億円減の42億円と見込んでいる。これらの結果、支出合計は同6億円減となる89億円となる見込みである。

 以上の結果、3SYにおける調整金収支は、17億円の赤字(前年度は9億円の赤字)が見込まれている(表11)。

 調整金の期末残高については、これまでは20〜30億円程度で推移していたが、コロナ禍による需要減や穀物相場の高騰により3年連続で赤字が生じ、減少傾向となっており、3SY末は4億円となる見込みである。なお、年間を通して短期借入金は発生しなかった(図2)。

 

 

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