2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
最終更新日:2023年4月10日
2. 日本の品目別主要輸入先国の動向
2023年4月
本稿中の為替レートは2023年2月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=137.33円、1タイバーツ=3.97円、1ユーロ=146.11円である。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
トウモロコシ・コーンスターチ
世界
【需給動向:トウモロコシ】
ブラジルと米国の輸出量の差が拡大し、5000万トンを見込む
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2023年3月8日、2022/23年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表2)。
これによると、世界のトウモロコシ生産量は11億4752万トン(前年度比5.6%減)と前月から384万トン下方修正され、前年度をやや下回ると見込まれている。地域別に見ると、インドやパラグアイなどが増産により上方修正されたものの、主産地のアルゼンチンは、2月から3月上旬にかけて猛暑と干ばつが続いたことで減産が見込まれ、前月から700万トン下方修正されている。
輸入量は、世界全体で1億7448万トン(同5.4%減)と前月から252万トン下方修正され、前年度からやや減少すると予測されている。地域別に見ると、トルコでは収穫量の増加が見込まれることから、また、マレーシア、モロッコ、チリ、コロンビア、ペルーといった輸入国がアルゼンチンからの輸入量が減少した影響により、前月から下方修正された。
消費量は、世界全体で11億5675万トン(同3.9%減)と前月から562万トン下方修正され、前年度からやや減少すると見込まれている。地域別に見ると、最大の消費国である中国は前月から据え置かれ、インドが前月から上方修正されたものの、エジプトやインドネシアなどが前月から下方修正された。
輸出量は、世界全体で1億7471万トン(同15.1%減)と前月から636万トン下方修正され、前年度からかなり大きく減少すると予測されている。地域別に見ると、インドやウクライナなどが前月から上方修正されたものの、減産の影響を受けたアルゼンチンやアメリカは前月から下方修正された。特にブラジルは、アルゼンチンの減産や米国の出荷低迷を受け、世界最大の輸出国である米国を上回る5000万トン(同3.1%増)と増加が見込まれている。
この結果、期末在庫は2億9646万トン(同3.0%減)と前月から118万トン上方修正されたものの、前月に引き続き3億トンを下回ると見込まれている。
米国
【需給、価格動向:トウモロコシ】
米国の輸出量は前月から下方修正され、期末在庫は若干回復
USDA/WAOBは2023年3月8日、2022/23年度(9月〜翌8月)の米国のトウモロコシ需給見通しを更新した(表3)。
生産量は、137億3000万ブッシェル(3億4876万トン(注)、前年度比8.9%減)と前月から据え置かれ、前年度からかなりの程度減少すると見込まれている。
消費量は、119億6500万ブッシェル(3億392万トン、同4.2%減)と前月から据え置かれ、前年度からやや減少すると見込まれている。用途別に見ると、飼料など向けでの利用の減少が見込まれている。
輸出量は、18億5000万ブッシェル(4699万トン、同25.1%減)と前月から191万トン下方修正され、前年度から大幅に減少すると見込まれている。
この結果、期末在庫は、13億4200万ブッシェル(3408万トン、同2.5%減)と前月から7500万ブッシェル(191万トン)上方修正されるものの、前年度をわずかに下回ると見込まれている。
また、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は、9.7%(同0.5ポイント増)と前月から若干回復し、前年度を上回ると予測されている。
生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり6.60米ドル(906円。1キログラム当たり35.7円)と前月から下方修正されたものの、前年度からかなりの程度上昇し、引き続き高値が予測されている。
(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
【貿易動向:トウモロコシ】
輸出量は前月から大幅に増加し、輸出価格は3カ月連続で上昇
2022年12月の米国のトウモロコシ輸出量は、370万2902トン(前年同月比24.3%減、前月比51.8%増)と前年同月から大幅に減少したものの前月から大幅に増加した。同月の主要国・地域別輸出量は表4の通りである。
また、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり344.1米ドル(4万7255円、同27.2%高、同2.4%高)と前月に引き続き上昇した。
(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB※価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。
※Free On Board:貨物を船に乗せた段階で支払われる取引条件。
【貿易動向:コーンスターチ】
輸出量は前月から大幅に増加し、価格は900米ドルを割り込む
2022年12月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万5840トン(前年同月比7.7%増、前月比19.6%増)と前年同月からかなりの程度、前月から大幅に増加した。同月の主要国・地域別輸出量は表5の通りである。
同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり888.4米ドル(12万2004円、同35.4%高、同6.6%安)と7年7カ月ぶりに900米ドルを上回った前月からかなりの程度値を下げた。
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国の代表的市場の一つである中西部市場における22年12月の製粉業者の純費用(Net Cost)は、1ポンド当たり10.79米セント(注)(14.8円、前年同月比13.3%高、前月比2.9%安)と前年同月からかなり大きく上昇したものの、前月からわずかに下落した。
(注)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。
タピオカでん粉
タイ
【生産動向】
2022/23年度のキャッサバ生産量は前年度からわずかに増加する見込み
タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の予測(2023年1月)によると、2022/23年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は1011万ライ(162万ヘクタール(注)、前年度比1.9%増、前月同)、単収は1ライ当たり3.44トン(同0.3%増、前月同)、生産量は3475万トン(同2.2%増、前月同)と、前年度からはわずかな増加が見込まれている(表6)。
(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
【価格動向】
国内価格は引き続き上昇
タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2023年3月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり17.5バーツ(69円、前年同期比15.1%高、前週比0.6%高)と前年同期からかなり大きく上昇し、先月に引き続き上昇基調が持続している(図3)。国内価格は22年4月以降、原料費や燃料費の上昇により急騰し、7月第3週を境に下落に転じたが、キャッサバ関連製品の堅調な中国向け輸出も含めて国内外の需要が高いことから、2月以降の価格は高い水準で推移すると見込まれている。
【貿易動向】
輸出価格は4カ月ぶりに500米ドルを上回る
2023年1月のタピオカでん粉輸出量は、21万2116トン(前年同月比30.4%減、前月比17.5%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表7の通りである。
同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり504米ドル(6万9214円、同2.9%高、同1.8%高)と前月から反発し、500米ドル台を上回っている。
ベトナム
【生産動向】
各地で次期作の植え付けが始まる
ベトナムの民間調査会社(AgroMonitor)によると、同国では先月に引き続き各地でキャッサバの収穫作業が進む中、一部で次期作の植え付けが始まっている。
北部地域で最も生産が盛んなソンラ省では、1月に強い寒波が発生したため、一部のキャッサバで被害が発生し、今後の収量への影響が懸念されている。一方で、タインホア省では、キャッサバ収穫の最盛期を迎えており、全体の6割の面積で収穫を終えている。また、キャッサバモザイク病(注1)のまん延や長雨の影響により、タインホア省やゲアン省では収量が2021年から4割程度減少すると予測されており、一部のでん粉工場では、ソンラ省産のキャッサバを調達しているとされている。なお、キャッサバでの減収により、同地域の次期作の作付面積のうち、4割から5割程度はサトウキビやアカシアといった競合作物に転作されると予測されている。これらの転作作物は、3〜5年間は作付けが繰り返されることから、周辺のでん粉工場は今後数年にわたって一定量の原料確保が困難になることを懸念している。
中部地域では、好天が続いており、キャッサバの収穫が順調に進んでいる。また、次期作のキャッサバの植え付けも順調に進み、同国で最も作付面積の大きいザライ省の業者によると、22年のキャッサバ収量は1ヘクタール当たり15〜18トンで、前年の11〜13トンから増加する見込みとのことである。
南部地域では、作付面積が同国第2位のタイニン省でキャッサバの収穫が終了しており、次期作の作付けが進められている。同地域の作付面積は天候や農業用水として利用している湖の水位が大きく左右するとされており、現状、湖の水位が例年よりも低いため、作付面積は減少すると推測されているものの、状況が判明するのは作付けを終える2月下旬から3月上旬になる見込みである。
また、キャッサバモザイク病は1月26日現在、同国の中央直轄5都市および58省のうち1市17省などの合計3万9660ヘクタールで感染が確認され、前月比で22.3%の減少となったものの、引き続き被害の発生が懸念されている(注2)。
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
【貿易動向】
1月の輸出量は前月から大幅に減少したものの、輸出価格はわずかに上昇
AgroMonitorによると、2023年1月のタピオカでん粉輸出量は、17万3430トン(前年同月比1.4%増、前月比42.0%減)と前年同月からわずかに増加したものの、前月から大幅に減少した。同国の主要国・地域別輸出量は表8の通りである。
同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり434米ドル(5万9601円、同14.6%安、同0.7%高)と6月以降7カ月ぶりに上昇に転じた。
(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
ばれいしょでん粉
EU
【貿易動向】
輸出量は前月から減少し前年同月比2割減で、価格は900ユーロ台を超過
2022年12月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万5213トン(前年同月比で18.2%減、前月比7.3%減)と前年同月から大幅に、前月からかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表9の通りである。
また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり904ユーロ(13万2083円)と前年同月比で46.2%高(前月比1.8%高)と、年度当初の600ユーロ後半から1年間で900ユーロ台まで上昇した。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
コラム 欧州主要国のでん粉生産動向−ドイツのばれいしょでん粉−
ドイツでん粉産業組合(VGMS)によると、2021年のドイツのでん粉生産量は154万トンであり、うち、ばれいしょでん粉は55万トンと、全体の35.6%を占める(コラム−図1)。また、近年のばれいしょでん粉の生産量は、干ばつの影響で原料であるばれいしょの生産量が減少した18年を除き45〜55万トンで推移しており、増加傾向にある(コラム−図2)。ばれいしょでん粉に限らず、でん粉は一般的に需要に応じて生産されるが、16年以降は価格の下落などを背景に、てん菜からばれいしょに転作した生産者が多かったと言われており、でん粉原料用ばれいしょの生産量が増加したとみられている。
同国のばれいしょでん粉は、Emsland社、Avebe社およびSüdstärke社の3社が所有する八つの工場で製造されている(コラム−図3)。
Emsland社は、ドイツ最大のばれいしょでん粉製造業者であり、四つの加工拠点を有している。全体で100万トン以上のでん粉原料用ばれいしょを加工し、ばれいしょでん粉の生産量は22万トンと半数近くを占めるといわれている。また、Avebe社とSüdstärke社はそれぞれ二つの製造工場を有しており、南部を拠点とするSüdstärke社は、約1400戸の契約農家からでん粉原料用ばれいしょを調達し、年間60万トンほどを加工している。
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化工でん粉
タイ
【貿易動向】
1月の輸出量は前月から減少し、2年6カ月ぶりに8万トンを下回る
2023年1月の化工でん粉の輸出量は、7万8417トン(前年同月比14.7%減、前月比7.1%減)と前年同月からかなり大きく、前月からかなりの程度減少し、2年6カ月ぶりに8万トンを下回った。同月の主要国・地域別輸出量は表10の通りである。
米国
【貿易動向】
12月の輸出量は前月からやや減少
2022年12月の化工でん粉の輸出量は、2万5219トン(前年同月比7.0%減、前月比4.2%減)と前年同月からかなりの程度、前月からやや減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表11の通りである。
中国
【貿易動向】
輸出量は8カ月連続で1万トンを超過
2023年1月の化工でん粉の輸出量は、1万2468トン(前年同月比68.9%増、前月比4.9%減)と前月からやや減少したものの、2年10カ月ぶりに1万トンを超過した6月から8カ月連続で1万トン台を推移し、ロシア向けの輸出の伸びが顕著となっている。同月の主要国・地域別の輸出量は表12の通りである。
EU
【貿易動向】
12月の輸出量は前年同月および前月から大幅に減少
2022年12月の化工でん粉の輸出量(注)は、3万4618トン(前年同月比36.4%減、前月比23.8%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同月の主要国・地域別の輸出量は表13の通りである。
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。
豪州
【貿易動向】
12月の輸出量は前月からかなりの程度減少
2022年12月の化工でん粉の輸出量は、2419トン(前年同月比15.6%減、前月比8.4%減)と前年同月からかなり大きく、前月からかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別の輸出量は表14の通りである。
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