でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > でん粉の国際需給 > 2.日本の品目別主要輸入先国の動向

2.日本の品目別主要輸入先国の動向

印刷ページ

最終更新日:2023年6月9日

2.日本の品目別主要輸入先の動向

 本稿中の為替レートは2023年4月末日TTS相場(注)の値であり、1米ドル=135.13円、1タイバーツ=4.01円、1ユーロ=149.54円である。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。

トウモロコシ・コーンスターチ

世界

【需給動向:トウモロコシ】
2023/24年度の米国の輸出量は大幅増も、ブラジルが引き続き最大の輸出国に

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2023年5月12日、2023/24年度最初の世界のトウモロコシ需給予測値を公表した(表2)。

 これによると、世界のトウモロコシ生産量は12億1963万トン(前年度比6.0%増)と前年度をかなりの程度上回り、過去最高値が見込まれている。地域別に見ると、ウクライナやブラジルなどは前年度から減少するものの、ブラジルの減少幅はわずかとなり高水準を保つと見込まれている。一方、米国やアルゼンチンなどは前年度から増加に転じ、特に、干ばつなどの影響を受けて22/23年度の生産量が減少したアルゼンチンは、5400万トン(同45.9%増)と前年度から大幅な増加が見込まれている。

 輸入量は、世界全体で1億8450万トン(同5.2%増)と前年度からやや増加が見込まれている。地域別に見ると、中国のほかエジプトやベトナムなどの増加が見込まれている。米国やブラジルなど主要輸出地域からの豊富な供給が予測される中、世界的なトウモロコシ価格の下落も予想されていることから、多くの地域で輸入量が増加するとみられている。

 消費量は、世界全体で12億414万トン(同3.7%増)と前年度からやや増加し、過去最高値が見込まれている。地域別に見ると、最大の消費国である中国は3億400万トン(同1.7%増)とわずかに増加するほか、トウモロコシ価格の下落が飼料用の需要を促進することから、多くの地域で消費量が増加すると見込まれている。

 輸出量は、世界全体で1億9526万トン(同11.3%増)と前年度からかなり大きな増加が見込まれている。地域別に見ると、増産が見込まれる米国は5334万トン(同18.3%増)と前年度から大幅な増加が、また、ブラジルは減産ながらも5500万トン(同3.8%増)とやや増加が見込まれており、前年度に引き続きブラジルが世界最大の輸出国となると見込まれている。

 この結果、期末在庫は3億1290万トン(同5.2%増)と前年度からやや増加すると見込まれている。

 今回の予測は、過去の傾向に基づく平年並みの作付け状況と好天下における生育を前提に想定されているため、今後の状況に注視する必要がある。

290

米国

【需給、価格動向:トウモロコシ】
2023/24年度の米国の生産量は過去最高の見込み

 米国農務省世界農業観測ボードUSDA/WAOBは2023年5月12日、2023/24年度(9月〜翌8月)最初の米国のトウモロコシ需給見通しを公表した(表3)。

 生産量は、152億6500万ブッシェル(3億8775万トン(注)、前年度比11.2%増)と作付面積と単収の増加を受けて、前年度からかなり大きく増加し、過去最高値が見込まれている。

 消費量は、123億8500万ブッシェル(3億1459万トン、同3.6%増)と、世界的な増産によるトウモロコシ価格の下落予測に伴う飼料向けなどの増加を受けて、前年度からやや増加すると見込まれている。

 輸出量は、21億ブッシェル(5334万トン、同18.3%増)と前年度から大幅に増加すると見込まれている。

 期末在庫は、総供給量が総消費量を上回ることで22億2200万ブッシェル(5644万トン、同56.8%増)と前年度から大幅に増加し、16/17年度以来の高水準が見込まれている。

 また、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は、15.3%(同5.0ポイント増)と前年度を大幅に上回る水準が予測されている。

 生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり4.80米ドル(649円。1キログラム当たり25.5円、同27.3%安)と、前年度から大幅に下落すると見込まれている。

 今回の予測は、過去の傾向に基づく平年並みの作付け状況と好天下における生育を前提に想定されているため、今後の状況に注視する必要がある。

(注)1ブッシェルを約25.401キログラム、1エーカーを0.4047ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。

300

【貿易動向:トウモロコシ】
輸出量は前月からやや増加し、輸出価格は2カ月連続下落

 2023年2月の米国のトウモロコシ輸出量は、328万9190トン(前年同月比50.7%減、前月比3.3%増)と前年同月から大幅に減少したものの、前月からやや増加した。同月の主要国・地域別輸出量は表4の通りである。

 また、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり322.0米ドル(4万3512円、同14.4%高、同3.7%安)と先月から引き続き下落した。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる(FOB※価格から横持ち料〈倉庫間の移動費〉、積み込み料、保険料などを差し引いた)価格。

※Free On Board:貨物を船に乗せた段階で支払われる取引条件。

311

312

【貿易動向:コーンスターチ】
輸出価格は7年10カ月ぶりに1000米ドル台に突入

 2023年2月の米国のコーンスターチ輸出量は、1万5682トン(前年同月比5.5%減、前月比7.4%減)と前年同月からやや、前月からかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表5の通りである。

 同月の輸出価格(FAS)は、1トン当たり1009.6米ドル(13万6427円、同45.1%高、同4.1%高)と前月からやや上昇し、1000米ドル台に突入した。

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同国中西部市場における23年2月のコーンスターチ価格は、1ポンド当たり19.60米セント(注)(26.5円、前年同月比5.5%高、前月比1.4%高)と前年同月からやや、前月からわずかに上昇した。

(注)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。

313

321

322

タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
キャッサバ生産量は前年度からやや減少する見込み

 タイ農業協同組合省農業経済局(OAE)の予測(2023年4月)によると、2022/23年度(10月〜翌9月)のキャッサバの収穫面積は973万ライ(156万ヘクタール(注)、前年度比1.9%減)と前月から据え置かれたものの、単収は1ライ当たり3.36トン(同2.1%減)と前月から下方修正された。この結果、同年度の生産量は3273万トン(同3.9%減)と前月から下方修正された(表6)。今回の単収の下方修正について、23年1月以降に収穫作業が本格化してキャッサバの掘り起こし作業が進む中、22年8〜10月頃の大雨・洪水の影響などにより一部で塊根の損傷や腐敗が報告されていることを反映したものと考えられる。

(注)1ライを約0.16ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。

323

【価格動向】
国内価格は18バーツ台に突入

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2023年5月第2週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり18.3バーツ(73円、前年同期比10.9%高、前週比同)と前年同期からかなりの程度上昇した(図3)。国内価格は22年4月以降、原料費や燃料費の上昇に加えて、キャッサバ関連製品の堅調な中国向け輸出も含めた国内外の需要が高いことから高値が持続している。タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)研究・イノベーション開発センターは、産地で洪水や病害虫による被害リスクを見込んだ収穫の前倒しが生じ、今後のキャッサバの供給不足が懸念されていることも価格上昇の一因に挙げている。

331

【貿易動向】
輸出価格は9カ月ぶりの高水準

 2023年3月のタピオカでん粉輸出量は、25万4442トン(前年同月比34.6%減、前月比3.2%減)と前年同月から大幅に、前月からやや減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表7の通りである。

 同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり540米ドル(7万2970円、同9.1%高、同2.9%高)と9カ月ぶりの高水準となった。

332

333

ベトナム

【生産動向】
でん粉工場の原料不足が続く

 ベトナムの民間調査会社(AgroMonitor)によると、北部地域の主産地の一つであるタインホア省では、2〜3月の降雨が少なかったことでキャッサバの枯死が見られた。3月末の降雨後に再植や新たな作付けが行われたものの、干ばつに加えて作付けに適した苗の不足などの影響から昨年度と比べ作業の遅滞が目立っている。同省ではキャッサバモザイク病(注1)などの影響により収量が減少したとみられ、2023/24年度の作付面積についてキャッサバの取引業者からは、経済価値の高いサトウキビなどへの転作も見込まれていることから、前年度比で4〜5割の減少を予想する声もある。一方で、北部で最も生産が盛んなソンラ省の23/24年度のキャッサバ作付面積は、2月末時点で3万7347ヘクタール(前年同期比15.1%増)とかなり大きな増加が予測されており、地域差が目立つ状況にある。

 中部地域では、22年夏から秋にかけて作付けされたキャッサバの収穫がほぼ終了したことから、でん粉工場は今後搬入される原料の不足により前年度と比べて1〜1.5カ月程度前倒しで今年度の操業を終了すると見込まれている。中部地域の主産地の一つであるフーイエン省では、近年散発するキャッサバモザイク病などを敬遠して転作が増加したことで今期のでん粉原料が不足し、同省にある2カ所のでん粉工場では、当初の計画より早く操業を終了したとしている。

 南部地域では、作付面積が同国第2位のタイニン省で22年冬〜23年春にかけて行われる作付けが3月下旬に終了し、同省農業農村開発局はその作付面積を4万ヘクタール程度と見込んでいる。一方で、同地域のでん粉工場には輸入キャッサバを中心に搬入されており、キャッサバ収穫の最盛期を迎える4月下旬から5月上旬頃までこうした状況が続くと考えられる。

 また、同国でのキャッサバモザイク病の感染状況は、3月23日現在で中央直轄5都市および58省のうち1市16省などの合計5万2730ヘクタールで確認され、前月比で9.2%増加し、引き続き同病による被害の拡大が懸念されている(注2)
 
(注1)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
(注2)同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移している。
 
【貿易動向】
3月の輸出量は前月から大幅に減少し、輸出価格はわずかに上昇

 AgroMonitorによると、2023年3月のタピオカでん粉輸出量は、14万917トン(前年同月比53.4%減、前月比48.1%減)と前年同月および前月から大幅に減少した。同国の主要国・地域別輸出量は表8の通りである。

 同月の輸出価格(CFR(注)・中国向け)は、1トン当たり465米ドル(6万2835円、同8.1%安、同2.0%高)と3カ月連続で上昇した。

(注)Cost and Freightの略。輸入港までの海上運賃を売主が負担し、危険負担は物品を引き渡した際に売主から買主に移転される取引条件であり、コンテナ輸送貨物に使われることが多い。
 

351

352

ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
輸出量は前月から大幅に減少し、価格は1000ユーロ台に突入

 2023年2月のばれいしょでん粉輸出量(注)は、2万5208トン(前年同月比12.7%減、前月比22.1%減)と前年同月からかなり大きく、前月から大幅に減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表9の通りである。

 また、同月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり1044ユーロ(15万6120円、同52.3%高、同7.8%高)と5カ月連続して上昇し、1000ユーロ台に突入した。
 
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。

353

354

コラム ポーランドのばれいしょでん粉およびばれいしょの生産について


 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)によると、2021年のポーランドのばれいしょでん粉の生産量は、21万トンと欧州の生産量の16%を占め、デンマーク、ドイツに次ぐ第3位だった(コラム−図1)。

          

 ポーランドのばれいしょでん粉の主要生産企業であるPEPEES社によると、同国にはばれいしょでん粉や関連製品を生産する企業が10社程度存在し、大規模な工場では1日当たり1000〜3000トンのばれいしょが処理されている。同社工場の処理能力は1日当たり2400トンで、22年には、ばれいしょでん粉やポテトプロテインなどのばれいしょでん粉関連製品を5万5000トン以上販売し、4割を欧州や豪州、ベラルーシ、韓国などに輸出したとしている。

 また、ばれいしょ生産を見ると、ポーランド中央統計局の発表では、同国の生産量は近年減少傾向にあり、22年は約600万トンと推測されている(コラム−表)。同年はヴィエルコポルスカ県での生産が最も多かった(コラム−図2)。
   

   

 同国のばれいしょが減産傾向にあることについてポーランドばれいしょ協会は、作付面積の減少と気候を要因に挙げている。作付面積の減少については、肥料価格の上昇など生産コストの高騰に対し、でん粉原料用ばれいしょの買取価格が安いことによる収益性低下などを理由としている。加えて、ウクライナ侵攻によりポーランドからロシアへの輸出制限の影響を受け、特にポテトチップスなどの加工用ばれいしょの需要が減少していることも背景にあるとしている。気候については、22年は欧州を襲った熱波や干ばつが、同国の一部地域でばれいしょの単収に影響を及ぼしたとしている。

 なお、でん粉原料用ばれいしょの生産についてPEPEES社は、資材高騰などを受けて22年は農家にとって特に厳しい年だったとした上で、同年の作付面積は1万2000ヘクタールに満たないと推測され、でん粉原料用ばれいしょの生産量が徐々に減少していると言及している。
 

化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(以下「化工でん粉」という)の主要国・地域別輸出量および輸出価格は、以下の通りである。

タイ

【貿易動向】
3月の輸出量は前月から大幅に増加

 2023年3月の化工でん粉の輸出量は、10万7500トン(前年同月比3.5%減、前月比25.8%増)と前年同月からやや減少したものの、前月から大幅に増加した。同月の主要国・地域別輸出量は表10の通りである。

381

382

米国

【貿易動向】
2月の輸出量は前月からかなりの程度減少
 2023年2月の化工でん粉の輸出量は、2万1514トン(前年同月比24.8%減、前月比9.6%減)と前年同月から大幅に、前月からかなりの程度減少した。同月の主要国・地域別輸出量は表11の通りである。

383

384

中国

【貿易動向】
輸出量は10カ月連続で1万トンを超過

 2023年3月の化工でん粉の輸出量は、1万5052トン(前年同月比87.3%増、前月比0.3%減)と前年同月から大幅に増加し前月並みとなった。2年10カ月ぶりに1万トンを超過した22年6月から10カ月連続で1万トン台を推移し、ロシア向けの輸出の伸びが顕著となっている。同月の主要国・地域別の輸出量は表12の通りである。

391

392

EU

【貿易動向】
2月の輸出量は前月からわずかに減少

 2023年2月の化工でん粉の輸出量(注)は、4万276トン(前年同月比19.9%減、前月比2.0%減)と前年同月から大幅に、前月からわずかに減少した。同月の主要国・地域別の輸出量は表13の通りである。
 
(注)EU27カ国による輸出。輸出先の不明なものを除く。

393

394

豪州

【貿易動向】
2月の輸出量は前月からかなり大きく減少

 2023年2月の化工でん粉の輸出量は、2855トン(前年同月比2.4%減、前月比15.2%減)と前年同月からわずかに、前月からかなり大きく減少した。同月の主要国・地域別の輸出量は表14の通りである。

401

402

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272