でん粉の価格調整業務実績について(令和5でん粉年度)
最終更新日:2025年1月10日
でん粉の価格調整業務実績について(令和5でん粉年度)
2025年1月
はじめに
当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号)に基づき、コーンスターチ用輸入とうもろこしおよび輸入でん粉から調整金を徴収し、それを財源として国内のでん粉原料用かんしょ生産者やいもでん粉製造事業者に支援を行うことで内外価格差を調整し、国内のでん粉の安定的な供給の確保を図っている。
本稿では、令和5でん粉年度(令和5年10月1日〜令和6年9月30日。以下「5SY」という)におけるでん粉の価格調整業務実績について取りまとめたので報告する。
1 でん粉の価格調整業務における収支
(1)収支
5SYの調整金収支は、1億円の赤字(前年度は6億円の赤字)が見込まれており、期末残高はマイナス2億円(4SY期末:マイナス1億円)となる見込みである(表1、図1)。
調整金の期末残高は、令和2SYまでは20億〜30億円程度で推移していたが、ここ数年、コロナ禍による需要減や穀物相場の高騰などによる単年度収支の赤字が続いた結果、2年連続で期末残高はマイナスとなる見込みである。
(2)収入
5SYの収入額は、需要量は酒税法改正に伴う発泡酒需要の減少や製紙向け需要の減少によって減少したものの、トウモロコシ相場が下落したことによる調整金単価の上昇を受け、調整金収入は前年度比3億円増となる88億円となった。
(3)支出
5SYの支出額のうち、ばれいしょでん粉の交付金額は前年並みの17億円であった。かんしょでん粉およびでん粉原料用かんしょは、他用途向けとの原料の競合によりでん粉への仕向け量が減少したこともあり、それぞれ4億円および11億円に減少した。でん粉原料用ばれいしょへの支援として国の経営所得安定対策の財源に充てるため支出する国庫納付金は、調整金収入の増加やかんしょの減産によりばれいしょの比率が増加したことに伴う納付率の上昇により、前年度比5億円増の57億円と見込む。これらの結果、支出合計は同2億円減となる89億円となる見込みである。
2 調整金徴収業務
(1)5SYの指標価格等
5SYを含む直近3でん粉年度の指標価格等は、表2の通り。
(2)でん粉の需要と供給
令和6年9月に農林水産省が公表したでん粉の需給見通し(以下「需給見通し」という)によると、5SYのでん粉の需給の見込みは、表3、4の通り(詳細は、本誌2024年11月号「
でん粉の国内需給」を参照)。
(3)国際相場などの動き
5SYのシカゴとうもろこし先物相場(期近)は、月平均では年間を通しておおむね下落傾向で推移した。5SY開始直後からブラジルの降雨予報による作柄の改善見込みや米国産への需要の低迷により徐々に値を下げ、令和5年12月の平均価格は1ブッシェル当たり460米セント台で終えた。令和6年に入り6月下旬には、米国中西部における降雨予報および米国の作付面積予測が大きく上回ったことなどを受け390米セント台まで値を下げ、その後もおおむね300米セント台後半で推移し、9月の平均価格は400米セント台で終えた(図2)。
(4)指定でん粉およびコーンスターチ用輸入とうもろこしの平均輸入価格等
5SYにおける指定でん粉等の平均輸入価格等は、表5の通り。
(5)売買実績
5SYの売買数量は、輸入でん粉は前年度比1.5%増の13万4000トンと増加した一方で、でん粉供給量の大半を占めるコーンスターチ用輸入とうもろこしについては、酒税法改正に伴う発泡酒の需要減少や製紙向けの需要減少により、同2.4%減の303万5000トンと前年度をわずかに下回った。
売買差額は、調整金単価が令和6年7−9月期を除き前年より高かったことを受け、輸入でん粉が同7.0%増の5億3700万円、コーンスターチ用輸入とうもろこしが同3.0%増の82億8300万円、合計で同3.2%増の88億2000万円と前年度をやや上回った(表6)。
3 交付金交付業務など
(1)でん粉原料用いもおよび国内産いもでん粉の生産動向
ア でん粉原料用ばれいしょ・ばれいしょでん粉
北海道のばれいしょ生産は、近年170万〜190万トン程度で推移しており、そのうち約4割がでん粉原料用に仕向けられている。
5SYについて、需給見通しによると、単収増により収穫量は増加したものの、酷暑によりでん粉含有率の低下が生じたため、ばれいしょでん粉の生産量は、前年度比2.6%減の14万8000トンとなる見込みである(表7)。
イ でん粉原料用かんしょ・かんしょでん粉
南九州のかんしょ生産は、生産者の高齢化による離農を主たる要因として、作付面積は減少傾向にある。
5SYについて、需給見通しによると、サツマイモ基腐病(立枯症状や塊根部が腐敗する症状)の発生面積は減少したものの、他用途向けとの原料の競合により仕向け量が減少したことから、かんしょでん粉の生産量は前年度比26.7%減の1万1000トンと、過去最低となる見込みである(表8)。
(2)交付金の交付状況など
ア でん粉原料用いも交付金(でん粉原料用かんしょのみ)
収穫期はおおむね9月から12月であり、いもでん粉製造事業者への売渡しに応じて交付金を交付している。
5SYについては、交付金単価(免税事業者)は1トン当たり1310円引き上げられたものの、他用途向けとの原料の競合によりかんしょでん粉への仕向け量が減少したため、交付決定数量は前年度比27.5%減の3万7000トン、交付決定金額は同23.9%減の11億1600万円となった(表9)。
イ 国内産いもでん粉交付金
ばれいしょでん粉およびかんしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、これに応じて交付金を交付している(表10)。
(ア)ばれいしょでん粉の交付状況
5SYの交付実績は、交付決定数量は前年度比7.2%減の9万トンとかなりの程度減少、交付決定金額は同9.0%減の16億7000万円とかなりの程度減少した。
(イ)かんしょでん粉の交付状況
5SYの交付実績は、他用途向けとの原料の競合によりでん粉への仕向け量が減少したことを受け、交付決定数量は前年度比37.5%減の1万トンと大幅に減少、交付決定金額も同35.8%減の3億9300万円と大幅に減少した。
(3)国庫納付金納付業務(でん粉原料用ばれいしょ)
でん粉原料用ばれいしょ生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、5SYにおいては、農林水産大臣からの通知に従い、調整金収入から57億4500万円を国庫に納付する予定である(表11)。
なお、調整金単価の上昇により指定でん粉等の調整金収入が増加したことおよびかんしょの減産によりばれいしょの比率が増加したことに伴う納付率の上昇から、納付金額は前年度を上回る見込みである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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