
ホーム > でん粉 > 主要国のでん粉事情 > 中国におけるキャッサバ需給動向
最終更新日:2025年7月10日
ア 生鮮キャッサバ
生鮮キャッサバとは、一般に皮をむいた生のキャッサバや簡単に加工したキャッサバのカット品やブロックなどを指し、直接市場に卸される。主に中国南部の一部の省・地域や国境港に流通が集中しており、外観、食感、安全性に対する要求が高い。ブロック状のキャッサバはでん粉を豊富に含み、独特の風味を有することから、近年、郷土料理や民族料理、一部スナック菓子などにも使用されている。キャッサバの若葉は野菜や飼料としても利用でき、一定の栄養価がある。
イ でん粉とその製品加工
タピオカでん粉は中国のキャッサバ加工産業の主力製品であり、白色で粘度が高く、食品産業(春雨、粉皮、冷凍点心など)、製紙、紡績、建材、医薬品などで広く利用されている。中でも食品用でん粉製品には、紛条(太めの春雨)、タピオカ(もち米ケーキ)、冷凍湯圓(もち米だんご)などがあり、工業用でん粉は主に糊化剤、接着剤、増粘剤の製造に使用されている。また、化工でん粉も高級加工品の分野で徐々に普及が進んでいる。
ウ アルコールとバイオ発酵製品
タピオカでん粉またはブロック状のキャッサバは、でん粉由来のアルコール原料の重要な供給源の一つであり、発酵、加水分解などの工程を経て、燃料用エタノールや工業用アルコールが生産される。また、キャッサバを基材としたバイオ発酵製品にはクエン酸、グルコース、マルトデキストリン、アミノ酸、有機酸などがあり、その一部はすでに医薬、飼料添加物、グリーン溶剤の市場に進出している。
エ 飼料および総合的な使用
キャッサバの搾りかす、乾燥粉末、葉などの副産物は、家畜や家きん向け飼料原料として使用されており、エネルギー密度や嗜好性が高く、トウモロコシやふすまなどとの併用に適している。近年、キャッサバ全株を使用した飼料の開発が推進されており、一部地域ではキャッサバの茎やつるをペレット飼料に加工する試みも行われ、資源の総合的な利用効率を向上させている。
エ タピオカでん粉の価格
ばれいしょでん粉やかんしょでん粉に比べ、タピオカでん粉は長い間、安価で推移しており、2018年から20年にかけては1トン当たりの工場出荷価格は4000元(8万1240円)前後で推移した。20年は同3950元(8万225円、前年比4.0%高)とやや上昇した一方、輸入価格は410米ドル(5万9397円、同5.5%安)とやや下落した(表3)。依然としてタピオカでん粉は他のでん粉に比べて価格優位性があるため、一部の用途では、かんしょでん粉やコーンスターチからタピオカでん粉に原料を切り替える動きが見られる。
オ 主要生産企業の分布
2022年現在、中国のタピオカでん粉製造企業は30社と業界の産業集中度が高く、同年の上位10社への集中度(CR10)は64.8%に達した。生産規模の上位企業として、広西高源、都安紅河、崇左群力、合浦双洋、崇左万達、合浦健豊、雲南紅泰などが挙げられる。国内首位の広西高源は22年の国内シェア(市場占有率)が17.0%に達しているのに対し、都安紅河、崇左群力、合浦双洋、崇左万達などは、それぞれ同10%以下となっている。
カ 今後の予測
供給面では、短期的には中国のタピオカでん粉生産は、国内キャッサバ収穫面積の増加が難しいことから、生産量は30万トン程度で推移すると見込まれる。
生産量の伸び悩みが見込まれるものの、環境保護政策の強化や業界への参入基準の引き上げを背景に、中国のタピオカでん粉製造企業は集約化による規模拡大がさらに進展するとみられる。一部の小規模企業・工場は淘汰されるが、大規模企業・工場では環境保護および加工設備への投資により技術水準が向上することで、業界全体の生産能力構造は最適化される見込みである。
需要面では、タピオカでん粉の優れた物理的・化学的性質と価格優位性を生かし、食品、製紙、建材、軽工業などの既存用途では安定した需要が維持される。特に、でん粉糖、糖アルコール、生分解性材料などの新興用途では、環境保全型の再生可能資源としてタピオカでん粉は発展の可能性があり、さらなる需要拡大が見込まれる。国産タピオカでん粉の生産が限定的な状況下、主要輸入国であるタイとベトナムからの輸入量が引き続き増加する見通しである。さらに、中国−ラオス鉄道の開通に伴い、ラオスからのタピオカでん粉輸入量も大幅に増加する見込みである6)。