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世界のでん粉需給動向(2024年)

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最終更新日:2026年1月9日

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世界のでん粉需給動向(2024年)

2026年1月

調査情報部

【要約】

 2024年の世界のでん粉生産量は、主要なでん粉原料用作物の豊作やでん粉の安定した需要により前年を3.0%上回った。主要な天然でん粉および化工でん粉はいずれも前年から増加した。消費量は、でん粉価格が低下したことなどが需要の増加を後押しし前年を2.6%上回り、品目別ではタピオカでん粉が最も大きい増加率を示した。

 でん粉原料用作物の生産量は気候変動や病虫害、他作物への転作などの影響を受けやすく、でん粉は原料調達量により製造量が左右されるなど不確定要素があるものの、食用、工業用とも高まる需要で消費量は今後堅調に推移するものと見込まれる。 

はじめに

 本稿では、2024年の世界の主要な天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉、小麦でん粉)および化工でん粉の生産・消費動向および29年までの消費見通しについて、農産物の需給などを調査する英国の調査会社GlobalData UK Ltd.の調査結果を中心に報告する。

 なお、図表については、特段の記載がない限り、GlobalData UK Ltd.の資料を基に農畜産業振興機構が作成した。

1 需給概況など

 2024年のでん粉産業は、主要なでん粉原料用作物の豊作やでん粉の安定した需要により発展した。世界のでん粉生産量は、4997万7000トン(前年比3.0%増)と前年をやや上回った(表1)。生産量の内訳は、コーンスターチが全体の約47%と最も多く、次いでタピオカでん粉が約21%、化工でん粉が約19%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%となった(図1)。



 
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 また、同年の世界のでん粉消費量は、でん粉価格が低下したことなどが需要の増加を後押しし、4991万7320トン(同2.6%増)と前年をわずかに上回った。このうちコーンスターチが全体の約47%と最も多く、タピオカでん粉が約21%、化工でん粉が約19%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%と生産量の内訳とほぼ一致している。

 02年以降の世界のでん粉生産量は増加傾向にあり、23年は表1の通り減少したが、24年は再び増加に転じた。これは、主要なでん粉の生産量がいずれも前年を上回ったことが影響した。

 品目別でん粉生産量上位3カ国について、タピオカでん粉を見ると、第1位のタイは353万トン(前年比8.8%増)とかなりの程度増加し、第2位のベトナムは256万5000トン(同14.0%増)とかなり大きく増加して前年の第3位から順位を上げた。なお、中国はタピオカでん粉生産量では世界第7位であるが、それ以外の品目ではいずれも第1位の主要生産国である(表2)。


 

 でん粉は、以前より需要に応じた生産・供給が行われている。また、価格は需給より原料価格変動の影響を受ける傾向が強いとされている。24年の各種でん粉の輸出単価(世界平均:米ドル換算)を見ると、いずれの種類でも前年を下回った(図2)。コーンスターチおよび小麦でん粉については、原料となるトウモロコシや小麦の主要輸出国の収穫量が十分であったため、輸出価格の上昇が抑えられた。ばれいしょでん粉は、23年末のばれいしょ収穫量増加により24年はかなりの程度価格を下げた。
 
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2 天然でん粉および化工でん粉の動向

(1)コーンスターチ

 コーンスターチ生産量は、アジアが世界全体の7割強を占め、次いで北米と欧州がそれぞれ約1割を占めている(表3)。



 

 2024年の地域別生産量は、北米で原料作物のトウモロコシ生産量の減少により前年を下回ったものの、中国などそれ以外の地域で前年を上回り、世界全体としては前年からわずかに増加した。

 世界最大のコーンスターチ生産国である中国は、好天に恵まれてトウモロコシ生産量が増加したことで、24年の生産量は1338万トン(前年比0.5%増)と前年からわずかに増加した。同国では、国内供給量の十分な確保と国内価格高騰防止のため、22年後半に国産コーンスターチ輸出を抑制する非公式な政策が導入されたが、増産により24年には同政策が緩和され、輸出量は2万2798トン(同2.7倍)と前年を大幅に上回り、国内消費量は1336万9000トン(同0.3%増)となった。

 生産量と同様に、消費量もアジアが主要地域となっている。しかし、価格面からコーンスターチに比べて安価なタピオカでん粉で代替されることも多い。24年のアジアの消費量は前年比1.3%増とわずかな増加にとどまり、世界全体としては前年からわずかに増加した。

(2)タピオカでん粉

 タピオカでん粉の生産量は、アジアが世界全体の9割弱を占めている(表4)。2024年のアジアの生産量は955万3000トン(前年比6.7%増)と前年をかなりの程度上回り、世界のタピオカでん粉生産量の増加に大きく影響した。



 
 

ア タイ
 
世界最大のタピオカでん粉の生産・輸出国であるタイでは、原料作物のキャッサバの生産量が天候不順やキャッサバモザイク病(CMD)、他作物への転作、主要輸出先での需要低下などの影響を受けて減少傾向にある。CMDは、コナジラミが媒介するキャッサバモザイクウイルスにキャッサバが感染することで葉に黄化斑が発生する病気であり、光合成機能が低下し枯死することもある(写真1)。タイでは2018年に初めて感染が確認され、露地作物であることからコナジラミの防除が困難な上、感染株を使用した挿し木増殖などを行ってきたことから現在も被害は収束しておらず、収益性の高い競合作物への転作を図る生産者が増加している。また、主要輸出先である中国ではタイ産キャッサバ製品の需要が低下しており、タイ財務省関税局によると、24年のチップ輸出量は206万1965トン(前年比53.8%減)と前年から大幅に減少した。一方、輸出量全体の9割強を占めているアジア全体ではタピオカでん粉需要が上昇しているため、タイ産でん粉仕向け量は増加している。世界全体の3割強を占める同国の24年のタピオカでん粉生産量は、353万トン(前年比8.8%増)と前年をかなりの程度上回った。生産量の増加に伴い、同年の輸出量も315万1661トン(同9.9%増)と前年からかなりの程度増加した。輸出先を見ると、輸出量全体の6割弱を中国向けが占めており、中国国内の需要低下により輸出量は前年から減少したものの、依然として最大の輸出先である(184万6632トン:同1.6%減)。近年、中国はタイよりも比較的価格競争力が高く地理的にも有利なベトナムやラオスなどからのでん粉輸入量を増加させているため、中国向け輸出への依存を減らすために新規輸出先の開拓を図る必要がある。
 

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イ インドネシア  
 
インドネシアではエルニーニョ現象により干ばつが発生し、2024年のタピオカでん粉生産量は189万トン(前年比16.2%減)と、過去10カ年で最大となった前年から大幅に減少した。また、主食であるコメの生産量もエルニーニョ現象の影響から減少し、価格が高騰した。コメの代替品としてタピオカでん粉の需要が高まり、33万499トン(同9.1倍)のタピオカでん粉をタイやシンガポール、ベトナムから輸入した。

ウ ベトナム  
 
ベトナムのキャッサバ生産量は、タイと同様に気候変動やCMDなどの影響を受けて減少傾向にあるが、タピオカでん粉の需要の増加から2024年のタピオカでん粉生産量は256万5000トン(前年比14.0%増)、輸出量は188万4135トン(同23.3%増)といずれも前年から増加した。輸出量全体の約9割強を占める中国向けは174万9621トン(同24.3%増)と大幅に増加し、同国が輸入したタピオカでん粉のうちベトナム産は前年から4.3ポイント増加の43.3%であった。25年も、干ばつや大雨などの天候不順やCMDによる生産への影響が危惧されており、引き続きタピオカでん粉生産への影響が懸念される。

 タピオカでん粉の消費量は、生産量と同様にアジアが世界全体の9割弱を占めている。また、生産量上位2カ国であるタイとベトナムの最大の輸出先である中国の消費量は世界の消費量全体の4割弱を占め、2024年は423万1000トン(同11.2%増)とかなり大きく増加した。25年は、生産量上位国における天候不順やCMD感染拡大によるタピオカでん粉の生産への影響が懸念される。一方で、タピオカでん粉は、価格優位性などからコーンスターチの代替でん粉として、中国と東南アジアを中心に需要が期待されている。なお、タピオカでん粉は他のでん粉より安価な上、老化(注1)しにくいことから食品用、工業用向け需要とともに、近年はグルテンフリー食材(注2、3)として、小麦粉代用品などとしての需要もある。

 (注1)でん粉に水を加え加熱して糊化こ か させた後、冷却などにより離水などの現象が生じること。
 
(注2)グルテンとは小麦などに含まれるたんぱく質の一種であり、弾力性やふくらみを与えることができるためにさまざまな食品や飼料などに利用できる一方、セリアック病(グルテンを摂取することにより発症する自己免疫疾患)の発症の引き金となるほか、小麦アレルギー患者のアレルゲン(アレルギー誘発物質)の一つでもある。
 
(注3)グルテンフリー食材とは、小麦などに含まれるたんぱく質であるグルテンを含まない食材。小麦アレルギーやセリアック病患者向けの食品などで利用される。

(3)小麦でん粉

 小麦でん粉の生産量は、欧州が世界全体の4割強を占め、アジアが同3割強、北米が同2割弱と続いている(表5)。



 

 小麦でん粉はグルテンを含むため、食品向けでは小麦を使用する商品で用いられる傾向があり、工業向けでは主に包装資材や印刷用紙など、製紙の原料として使用されているほか、近年は化粧品向け需要なども増加してきている。欧州では、2023年は生活費高騰の影響を受けて生活必需品以外の品目、特に包装資材の需要が低迷していたが、24年は経済状況の改善から紙および包装資材の需要が回復した。欧州は紙および包装資材の主要生産地で小麦でん粉の需要が高いことから、24年の生産量は146万3000トン(前年比9.3%増)と前年からかなりの程度増加した。世界全体の生産量は336万5000トン(同5.6%増)と前年からやや増加した。

 消費量は、欧州とアジアが主要消費地域となっており、24年はアフリカを除くすべての地域で前年を上回った。世界全体としては、331万2340トン(同2.8%増)と前年からわずかに増加した。

(4)ばれいしょでん粉

 ばれいしょでん粉の生産量は、欧州が世界全体の6割強を占め、アジアが同3割強と続いている(表6)。



 

 2024年の地域別生産量は、アジアおよび北米が前年を下回った。一方で、主産地である欧州は食品、飲料および医薬品などの分野における需要増加から、126万2000トン(前年比10.5%増)と前年をかなりの程度上回った。このうちドイツ、デンマーク、オランダ、ポーランドおよびフランスの5カ国で、欧州全体の生産量の8割強を占める102万5000トンを生産している。国別に見るとドイツ、デンマーク、オランダおよびポーランドは前年を上回り、フランスは前年を下回った。ドイツは33万トン(同13.8%増)と前年からかなり大きく増加しており、これは同国の経済状況の改善に伴う消費者の購買意欲向上から、ばれいしょでん粉の需要が増加したためである。フランスは23年8月に大手でん粉製造企業のばれいしょでん粉工場閉鎖が発表されたことに伴い、でん粉原料用ばれいしょ生産者の減少や作付面積の減少の影響から、でん粉原料用ばれいしょの生産が不安定となっている(写真2)。また、フライドポテト向けなどの加工用ばれいしょの需要増加による転作も影響し、24年は9万5000トン(同13.6%減)と前年からかなり大きく減少した。
 


 

 消費量は、最大の消費地域であるアジアが世界全体の5割弱を占め、次いで欧州は3割強を占めており、24年の地域別消費量は、すべての地域で前年を上回った。欧州では23年末にばれいしょが豊作であったことが影響し、ばれいしょでん粉の価格が下落した結果、消費量は67万2310トン(同3.5%増)と前年からやや増加した。

(5)化工でん粉

 化工でん粉の生産量は、アジアが世界全体の5割強を占め、欧州と北米がそれぞれ2割強を占めている(表7)。



 

 2024年の地域別生産量は、主産地であるアジアや欧州で前年を上回ったが、北米は前年を下回った。生産量世界第1位の中国は214万5000トン(前年比3.1%増)と前年をやや上回り、第2位の米国は173万トン(同1.1%減)と前年をわずかに下回り、第3位のタイでは、主にキャッサバを原料に化工でん粉を製造しており、タピオカでん粉の増産を受け124万5000トン(同2.9%増)と前年をわずかに上回った。

 消費量は、生産量と同様にアジア、北米、欧州が主要消費地域となっており、24年は南米を除くすべての地域で前年を上回った。

 化工でん粉は、物理的・化学的な方法によりでん粉本来の特性の改良などが行われたでん粉であり、天然でん粉に比べてより品質が安定しているなどの特徴を持っている。工業用から特殊な食品素材向けまで幅広い製品で利用され、でん粉市場としてはコーンスターチとタピオカでん粉に次ぐ市場となっている。欧米では、政府によって安全性が確認されているものであっても、消費者は化学的な添加物を避ける傾向があり、食品製造企業はクリーンラベル(添加物を含まず、消費者に分かりやすい食品成分表示をすること)への対応が求められている(注4)。このような状況で、特に化工でん粉の中でも薬品処理による化学的な変性を加えたものではなく、加熱や加圧などの物理的な変性を加えたものに対しては、機能性を保ちつつも自然な食品原料とみなされ、近年、中所得層の消費者を中心に需要が高まる傾向にある。また、紙の強度向上や接着剤の粘度安定性向上を目的とした工業向け需要も底堅い。

(注4)化工でん粉は食品添加物の一つであり、日本では、食品の原材料表示欄において、食品が列記された後に、食品添加物の境を示す「/」の後に「加工でん粉」などと表記される。

おわりに

 2024年は、いずれの品目のでん粉とも生産量が増加する年となった。コーンスターチの生産量は、世界第1位の生産国である中国における国産トウモロコシの増産促進に伴い、25年も増加が見込まれる。タピオカでん粉については、引き続き主産国であるタイやベトナムで干ばつやCMDなどの発生が見込まれ、収益性の高い競合作物への転作が進むことでキャッサバの減産が懸念されている。欧州のでん粉原料用ばれいしょも、出荷先であるでん粉工場の閉鎖表明や加工用ばれいしょへの作付け転換などによる減産が危惧されている。このように、今後のでん粉原料用作物の生産動向については、天候要因や病虫害だけではなく、高い収益性を目指した他作物への転作動向などにも注視する必要がある。

 一方で、世界のでん粉消費量は、今後の世界人口や所得の増加などを考慮すると、25年以降、毎年1.2〜1.4%の割合で増加し、29年には5348万トン(24年比7.1%増)と予測されている(図3)。



 

 品目別の増加率では、コーンスターチや小麦でん粉の代替需要が続くとされるタピオカでん粉が24年比12.3%増と最も高く、欧州を中心に需要回復が見られる小麦でん粉が同6.9%増、ばれいしょでん粉が同6.8%増と続く。

 現在のでん粉需給状況を品目別に見ると、いずれも短期的には需給ひっ迫が予想されるが、その後は需要に対応した生産量の回復が期待される。需給動向を見る上では、品目ごとのでん粉の原料用作物の生産状況やでん粉製造事業者の原料調達状況について引き続き注視する必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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