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最終更新日:2026年1月9日






ア タイ
世界最大のタピオカでん粉の生産・輸出国であるタイでは、原料作物のキャッサバの生産量が天候不順やキャッサバモザイク病(CMD)、他作物への転作、主要輸出先での需要低下などの影響を受けて減少傾向にある。CMDは、コナジラミが媒介するキャッサバモザイクウイルスにキャッサバが感染することで葉に黄化斑が発生する病気であり、光合成機能が低下し枯死することもある(写真1)。タイでは2018年に初めて感染が確認され、露地作物であることからコナジラミの防除が困難な上、感染株を使用した挿し木増殖などを行ってきたことから現在も被害は収束しておらず、収益性の高い競合作物への転作を図る生産者が増加している。また、主要輸出先である中国ではタイ産キャッサバ製品の需要が低下しており、タイ財務省関税局によると、24年のチップ輸出量は206万1965トン(前年比53.8%減)と前年から大幅に減少した。一方、輸出量全体の9割強を占めているアジア全体ではタピオカでん粉需要が上昇しているため、タイ産でん粉仕向け量は増加している。世界全体の3割強を占める同国の24年のタピオカでん粉生産量は、353万トン(前年比8.8%増)と前年をかなりの程度上回った。生産量の増加に伴い、同年の輸出量も315万1661トン(同9.9%増)と前年からかなりの程度増加した。輸出先を見ると、輸出量全体の6割弱を中国向けが占めており、中国国内の需要低下により輸出量は前年から減少したものの、依然として最大の輸出先である(184万6632トン:同1.6%減)。近年、中国はタイよりも比較的価格競争力が高く地理的にも有利なベトナムやラオスなどからのでん粉輸入量を増加させているため、中国向け輸出への依存を減らすために新規輸出先の開拓を図る必要がある。

イ インドネシア
インドネシアではエルニーニョ現象により干ばつが発生し、2024年のタピオカでん粉生産量は189万トン(前年比16.2%減)と、過去10カ年で最大となった前年から大幅に減少した。また、主食であるコメの生産量もエルニーニョ現象の影響から減少し、価格が高騰した。コメの代替品としてタピオカでん粉の需要が高まり、33万499トン(同9.1倍)のタピオカでん粉をタイやシンガポール、ベトナムから輸入した。
ウ ベトナム
ベトナムのキャッサバ生産量は、タイと同様に気候変動やCMDなどの影響を受けて減少傾向にあるが、タピオカでん粉の需要の増加から2024年のタピオカでん粉生産量は256万5000トン(前年比14.0%増)、輸出量は188万4135トン(同23.3%増)といずれも前年から増加した。輸出量全体の約9割強を占める中国向けは174万9621トン(同24.3%増)と大幅に増加し、同国が輸入したタピオカでん粉のうちベトナム産は前年から4.3ポイント増加の43.3%であった。25年も、干ばつや大雨などの天候不順やCMDによる生産への影響が危惧されており、引き続きタピオカでん粉生産への影響が懸念される。
タピオカでん粉の消費量は、生産量と同様にアジアが世界全体の9割弱を占めている。また、生産量上位2カ国であるタイとベトナムの最大の輸出先である中国の消費量は世界の消費量全体の4割弱を占め、2024年は423万1000トン(同11.2%増)とかなり大きく増加した。25年は、生産量上位国における天候不順やCMD感染拡大によるタピオカでん粉の生産への影響が懸念される。一方で、タピオカでん粉は、価格優位性などからコーンスターチの代替でん粉として、中国と東南アジアを中心に需要が期待されている。なお、タピオカでん粉は他のでん粉より安価な上、老化(注1)しにくいことから食品用、工業用向け需要とともに、近年はグルテンフリー食材(注2、3)として、小麦粉代用品などとしての需要もある。
(注1)でん粉に水を加え加熱して糊化 させた後、冷却などにより離水などの現象が生じること。
(注2)グルテンとは小麦などに含まれるたんぱく質の一種であり、弾力性やふくらみを与えることができるためにさまざまな食品や飼料などに利用できる一方、セリアック病(グルテンを摂取することにより発症する自己免疫疾患)の発症の引き金となるほか、小麦アレルギー患者のアレルゲン(アレルギー誘発物質)の一つでもある。
(注3)グルテンフリー食材とは、小麦などに含まれるたんぱく質であるグルテンを含まない食材。小麦アレルギーやセリアック病患者向けの食品などで利用される。




