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最終更新日:2010年3月6日
でん粉専用品種「コナフブキ」の話3 〜でん粉原料としての「コナフブキ」とそのでん粉の特徴〜 |
[2009年8月]
【でん粉のあれこれ】Web ジャガイモ博物館 浅間 和夫
「コナフブキ」は、「紅丸」より早く塊茎にでん粉を蓄えていく優れた品種です。早めに収穫でき、後作に秋まき小麦の栽培を可能にし、土にやさしい輪作体系の維持に役立ちます。「コナフブキ」より晩生の品種は、でん粉収量が高い傾向にありますが、秋遅い収穫、工場搬入となるため低温に遭遇しやすく、せっかく塊茎に貯めたでん粉の糖化が進み、ロスが増えてしまいます。
また「コナフブキ」は、「紅丸」に比べて単位原料から得られるでん粉量が多く、工場廃液量の減少や、工場操業期間の短縮にも役立ちます。
でん粉用品種の改良は、通常各特性の違いが大きい種間雑種間の交雑から始まります。このため、得られた系統のでん粉含有率が同程度でも、でん粉特性を見ると大きく異なる傾向にあります。以下に「コナフブキ」から得られたでん粉の特徴を拾ってみますと、
a 大きさは中粒が多い
「コナフブキ」のでん粉は、「紅丸」から得られたものに比べると、特大粒が少なく、分布幅が狭い傾向にあります。つまり、平均粒径は「農林1号」より大きいものの、「紅丸」や「アスタルテ」より小さくなります。ユーザーの多様なニーズに対応するため、でん粉製造工程において分級したり、風力などを利用して粒子を分けたりして、用途に応じて提供するでん粉粒の大きさを調整している例もあります。
b 糊化温度が低く、最高粘度が高い
ばれいしょでん粉の特徴の一つに、糊化開始温度が低く、アミログラム(注1)の最高粘度が高く、粘度安定性が低いことがあります。
「コナフブキ」の糊化開始温度は特に低くはありませんが、糊化最高粘度は「紅丸」より高くなっており、その最高粘度を出す温度は低いので「農林1号」や「サクラフブキ」よりも好まれます。
粘度の高いでん粉は、糊化、乾燥して生地をつくり、それを焙焼して膨化させる二度焼きせんべいやあられに使用した場合、製品の容積が大きくなることから原料として好まれています。
図1
ばれいしょでん粉
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c 白度が高い
「コナフブキ」から得たでん粉の白度は、皮色の紅い「紅丸」や肉色の黄色な「トヨアカリ」などに比べて高く、色の薄い原料を求めるユーザーには好まれています。
表1
主な品種のでん粉特性の比較
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資料:平成2〜11年、ホクレン農業総合研究所。
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d 灰分が高い
昔の品種とは異なり、近年の高でん粉品種のでん粉中の灰分含有率は高い傾向にあり、「コナフブキ」も例外ではありませんが、「サクラフブキ」に比べると灰分含有率は低くなっています。「コナフブキ」でん粉中の無機成分は、「紅丸」などに比べ、リン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムが多い傾向にありますが、他の品種同様に工場で使用する水の影響も受けます。
e 離水率は高い
水産練り製品の中のでん粉はゲルの形で存在し、塩で調味されている場合には、冷蔵貯蔵中に老化による離水が発生し、品質が劣化します。このでん粉ゲルの老化を測る指標が離水率です。「コナフブキ」でん粉の離水率は、「紅丸」に比べ高い欠点があります。しかし、「サクラフブキ」に比べると最高粘度時温度が約10度低く、離水率が低くなっています。
4%の「コナフブキ」でん粉懸濁液を糊化した時のブレーク・ダウン(注2)は、「アスタルテ」でん粉や「紅丸」でん粉のものより大きく、この点での評価は低くなります。また、でん粉ゲルは「紅丸」のものより小さい力で破壊される傾向にあります。
すべての用途にオールマイティの品種はありません。「コナフブキ」でん粉にも短所があり、用途によって向き不向きがあって、用途や価格によってはヨーロッパ産の化工ばれいしょでん粉やタイのタピオカでん粉などとの競合下に置かれております。
一般にばれいしょでん粉は、穀類でん粉に比べて、粒径や粘度などの幅が広い、糊化温度が低い、糊化したときの粘度が最も高い、糊化時の吸水膨潤力が高いという特徴があります。これらの特徴が、コシのある歯ごたえ、のどこしなど微妙な食感を作り出します。えびせん、衛生ボーロ(乳幼児用の干菓子)、くずきり(冷菓のひとつ)、水産練り製品、ソーセージ、即席めんなどに使われており、主力品種が「紅丸」から「コナフブキ」へ移行する際、一部のユーザーに戸惑いもありましたが、近年は「コナフブキ」でん粉が使いこなされ、定着しています。
原料ばれいしょとして「コナフブキ」を比較的多く使っているでん粉工場は北海道東部の小清水、網走、美幌の各澱粉工場です。上川北部澱粉工場では「コナフブキ」を使用せず、多数の品種を使っている羊蹄澱粉工場ではわずかな量を使用しています。
(注1)アミログラム:各種でん粉の時間、温度、粘度の関係を表した曲線
(注2)ブレークダウン:でん粉懸濁液をかくはん加熱した際、でん粉が膨潤して最高粘度を示した後に膨潤粒子が崩壊して発現する粘度低下
「コナフブキ」の花 |