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最終更新日:2010年3月6日
でん粉情報 |
【年頭に当たって】
独立行政法人農畜産業振興機構 理事長 木下 寛之
明けましておめでとうございます。
近年、わが国のでん粉需要量は、おおよそ300万トンで推移し、その用途は食用から工業用まで多岐にわたっています。このように、でん粉は国民の消費生活および産業活動において欠かすことのできない重要な農産物となっています。
一方、でん粉の供給について見ると、供給量のおよそ9割を輸入とうもろこしを原料とするコーンスターチと輸入でん粉で占めていますが、最近の輸入とうもろこしの価格動向は、バイオエタノール向け需要の増大により、高水準で推移しています。
コーンスターチ用の輸入とうもろこしは、アメリカからの輸入が9割以上を占めていますが、昨年のアメリカにおけるとうもろこしの作付面積は、その前年に比べて20%増加しており、当面、供給量の不安はないと考えられています。しかしながら、原油高などによる海上運賃の上昇などの影響もあり、依然として高い水準の価格で取引されていることから、その動向について注視する必要があります。
また、19年(1〜10月)の輸入でん粉についてみると、EU産ばれいしょでん粉が、一昨年の不作による在庫不足と価格の高騰により輸入量が激減する一方で、タイのタピオカでん粉については、輸入価格が前年同期に比べておよそ3割高くなっているにもかかわらず、他のでん粉に比べて割安感からか、輸入量が増加しています。
一方、国内産いもでん粉については、昨年の「でん粉に関する協議会」において協議された平成19でん粉年度の需給見通しによると、かんしょでん粉6万トン、ばれいしょでん粉24万トンの計30万トンが生産される見込みになっており、全体の供給量の1割を占める予想となっています。今後とも産地においては、同協議会で合意された国内産いもでん粉の需要量の範囲内での計画生産が求められています。
こうした中、昨年は、わが国のでん粉業界にとりまして、新たな経営安定対策に対応した価格調整制度が導入されるなど大きな節目の年となりました。国内産でん粉については、それまでの農産物価格安定法による価格保証やコーンスターチ用輸入とうもろこしとの抱合せ措置に代わり、関税割当制度が維持されつつ、糖化用・化工でん粉用の輸入でん粉およびコーンスターチ用輸入とうもろこしから新たに調整金を徴収し、それを財源として国内産でん粉原料用いも生産者およびでん粉製造事業者に対して政策支援を行うこととなりました。この新たな経営安定対策においては、市場の需給事情に応じたでん粉およびでん粉原料用いもの取引が行われ、市場からのインセンティブにより価格が形成されることから、生産者や事業者にはでん粉の需給動向に応じた生産や販売の一層の努力が求められています。
特に、かんしょでん粉については、その用途の大半が糖化用で占められる中で、品質向上のための取組が求められているほか、かんしょでん粉の特徴を活かした新たな販路の確保が重要となっています。
また、ばれいしょでん粉については、糖化用以外で、片栗粉や水産練製品などの市場評価の高い固有用途向けにおよそ4割が販売されているものの、近年、海外からの化工でん粉の輸入量が増加しており、これがばれいしょでん粉の固有用途と競合していることから、その需要量が減少する傾向にあります。化工でん粉については、国内では食品衛生法に基づき食品用としての製造が一部を除き認められておらず、食品用化工でん粉の需要に対しては、輸入に依存してきました。しかし、昨年、食品安全委員会において同法に基づく食品添加物の指定に向けた検討が行われ、11種類の化工でん粉については、安全性に懸念がないと評価されました。今後、国内において食品添加物としての化工でん粉の製造が可能となれば、より高い市場への販路拡大が期待されることから、事前の市場調査などの取組が重要になってくると考えられます。
当機構は、昨年10月から新たな価格調整制度の執行機関として輸入でん粉などの売買業務や国内産でん粉原料用いも交付金および国内産いもでん粉交付金の交付業務を実施すると同時に、本誌「でん粉情報」の発刊を開始し、国内産でん粉原料用いもの安定生産に資するための情報や、でん粉の国内外の需給事情に関する情報を提供してまいりました。本誌はまだ発刊後まもなく、至らざる点も多いかと思いますが、でん粉やその原料作物などに関する国内外の需給事情や先進的な合理化への取組、担い手の育成に向けた地域の取組など、国内産いもでん粉およびその原料作物の安定生産や販路拡大、生産コストの削減などに資するための情報を情報利用者のニーズに即したテーマに重点を置きつつ、収集・提供して
まいりたいと考えております。
当機構は、平成15年10月に独立行政法人として発足し、今日に至るまで皆様をはじめ関係各位の御協力により、順調な業務運営を図ることができたと考えております。
当機構といたしましては、今後とも、業務の効率化、透明性の確保を一層推進するとともに、農業および関連産業の健全な発展と国民の消費生活の安定に寄与してまいる所存でございます。
本年が皆様にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつといたします。