でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 主要国のでん粉事情 > 原料作物およびでん粉価格の動向

原料作物およびでん粉価格の動向

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2007年11月]

【国内外の需給動向[海外]】

国際情報審査役


1.原料作物の動向

1.とうもろこしの動向
 米国のとうもろこし価格は、2006年の終わりから2007年春(新規作物播種期)にかけて旺盛なエタノール需要に支えられて上昇した。USDAの発表によれば、2007年の播種面積は記録的な面積となり、第3期(10-12月)に収穫される予定の作物の状況も良好であると見られているが、(依然として旺盛な需要のため)価格は高い水準のまま推移すると見られる。
  EUはとうもろこしの純輸入国であるが、エネルギー価格の高騰と貨物船不足による貨物運賃の高騰も影響し、EUの輸入とうもろこし価格も上昇している。


2.小麦の動向
 オーストラリア、カナダ、EUでの期待はずれの作況が、世界の小麦在庫の水準は過去30年間で最低であった状況を更に悪化させている。そのためこの数カ月で小麦価格は記録的な高値となった。2007年度の北半球の収穫はほぼ終了しているが、ヨーロッパでの豪雨が同地域の作況を悪化させた。一方、南半球のオーストラリアでも重要な生育時期におきた干ばつにより、作況は悪い見込みである。
 価格の高騰が需要の減少につながるのは間違いないが、それによって短期的に在庫水準の回復に資するものとなるとは思われない。そのため、この価格の高騰により、EUでの小麦を利用したエタノール生産振興について疑念が呼び起こされるとともに、EUが世界市場からバイオ燃料を調達することに目を向けさせることにつながるかもしれない。


3.キャッサバの動向
 タイのキャッサバ価格も同時に、非常に高い水準まで上がっている。これは、東アジアの高いとうもろこし価格がこの地域の穀物の基準価格を押し上げていること、東アジアではタピオカでん粉がコーンスターチと競争する傾向にあり、タイの主要輸出先国である中国において、とうもろこしおよびコーンスターチ価格が高騰していることがタピオカ製品価格に反映されているためである。
また、第1収穫期と第3収穫期の間の端境期(4月から6月の間はタイではキャッサバの収穫はほとんどない)のキャッサバの不足が価格上昇に一役買っている。さらに、安いUSドルがドル建て価格をつり上げている。

2.でん粉価格の動向

 高い原料価格の影響を受けて、コーンスターチおよびタピオカでん粉の価格は上昇した。これはでん粉価格が、製品価格の多くを占める原料コストの影響を受けやすいためである。
EUの「生産払戻金」は細かい技術上の操作を無視すれば、EU域内のとうもろこし市場価格と米国湾岸から輸入されたとうもろこしの輸入価格の差を1.6倍したものであり、でん粉産業にとって域内および輸入穀物のコスト差を表すものである。この1.6という係数は、1トンのコーンスターチを生産するのに必要なとうもろこしの量を表す換算係数であることから、この払戻金は原料の価格差を製品ベースでならす役割を持っている。
 輸出払戻金は、域内のトウモロコシ市場価格と米国湾岸の輸出パリティー価格の差を1.6倍したものである。これは、EUのコーンスターチの輸出者が世界市場価格で原料を調達できる米国の同業者と競争していると考えられるからである。
生産払戻金は年々減少し、2007年以降0となっている。輸出払戻金は2007年に入って一度0になったが、その後再び発生している。これは、2007年に入って米国のとうもろこし価格の上昇がEUに波及するのに時間がかかったことから、米国とEUのトウモロコシ価格の差がなくなったが、その後価格が波及した後も、フレートが高止まりしているため輸入価格が相対的に高くなっていることを示している。
 EU委員会では、2013年以降輸出払戻金は廃止することを既に言及している。また、とうもろこしの介入価格の廃止の発表も行っている。とうもろこしの介入価格は、生産および輸出払戻金制度の基本となっていたことから、その廃止はEU域内のでん粉産業に対する補助金の存続に疑念を抱かせることとなっている。

(出典:LMC社報告)


表 でん粉原料及び各種関連製品価格
資料:LMC社

1) 黄とうもろこし中西部(Illinois)価格(basis cash delivered)
2) 黄とうもろこしフランス(Bayonne)価格(basis cash delivered)
3) ハードレッドスプリング種中西部(Kansas)価格(basis cash delivered)
4) 製粉品位(milling grade)小麦のフランス(Rouen)価格(basis cash delivered)
5) タイ国内主産地の平均価格(basis cash delivered)
6) コーンスターチ中西部(Illinois)価格(basis cash delivered)
7) タピオカでん粉バンコクFOB価格
8) EUの高価な穀物を利用してEU域内向け製品を製造することを強いられるEUのコーンスターチ業務用需要者に支払われる払戻金。域内とうもろこし市場価格と米国湾岸から輸入されたとうもろこしの輸入価格の差をおよそ1.6倍(製品への換算係数)したもの。
9) EUの高価な穀物を利用して輸出向け製品を製造することを強いられるEUのコーンスターチの製造者および業務用需要者に支払われる払戻金。域内のトウモロコシ市場価格と米国湾岸の輸出パリティー価格の差をおよそ1.6倍したもの。
10) Illinois州における価格(cash delivered)
11) 米国湾岸価格に5セント/Lを加えたもの(原料やエタノール価格にあわせて、中西部価格に換算するため)