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令和2年度契約指定野菜安定供給事業と契約野菜収入確保モデル事業の実施状況について

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最終更新日:2021年9月30日

【ポイント】

(契約指定野菜安定供給事業)
 1  令和2年度事業の交付予約数量は、前年比113%の17,613トンとなり、レタスが54%、キャベツが29%を占めた。タイプ別には、価格低落タイプが93%、数量確保タイプが5%、出荷調整タイプが1%を占めた。
2 令和2年度事業の交付金交付額は、秋冬野菜の安値を背景に過去最高の2億7,179万円(交付率28%)となり、レタスが97%、トマト2%を占めた。タイプ別には、価格低落タイプ98%、出荷調整タイプが1.6%、数量確保タイプが0.4%を占めた。都道府県別には、静岡県が62%、長崎県が18%、長野県が12%、群馬県が7%を占めた。
(契約野菜収入確保モデル事業)
3 令和2年度事業の採択額は、新型コロナ禍で外食等業務需要の減少の中で過去最高の5億2,869万円、特に中間事業者を対象とする数量確保タイプが前年度の4倍の2億2,105万円となった。
4 令和2年度の交付金交付額は、前年度の3.7倍の3,072万円(交付率6%)となり、価格高騰時対策の出荷促進タイプが94%を占めた。品目別には、キャベツが43%、ねぎ(青ねぎ)が21%、はくさいが13%、レタス(結球)が9%を占めた。都道府県別には、茨城県が28%、青森県が20%、京都府が14%、宮崎県が9%を占めた。

1 はじめに

 食の外部化・簡便化などを背景に野菜の需要は家計消費用から加工・業務用に徐々にシフトしており、加工・ 業務用需要は野菜の需要の約6割を占めており、卸売市場だけでなく実需者と生産者の契約取引で流通している。契約指定野菜安定供給事業および契約野菜収入確保モデル事業は、野菜需要の約6割を占める加工・業務用野菜などの契約取引の推進を図るため、契約取引における豊凶による価格低落、供給量不足に備えるための余裕作付分の出荷調整、不作等による価格高騰時の契約数量の遵守や数量不足に対して生産者補給金を交付し、契約取引を行う生産者の経営と生産出荷の安定を図っている。
 令和2年度の野菜価格の動向は、春先には低温による生育不良や新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の外出自粛に伴う家庭消費需要(巣ごもり需要)の増加を要因に、葉茎菜類を中心に高値で推移した。夏場においても、長雨や日照不足の影響により引き続き葉茎菜類や果菜類が高値で推移したものの、秋以降は好天に恵まれたため平年価格を下回り、多くの品目が安値で推移した。
 この度、令和2年度事業の対象出荷期間が終了したので、両事業の実施状況を報告する。

2 契約指定野菜安定供給事業と契約野菜収入確保モデル事業の概要

 契約野菜安定供給事業は、(1)対象野菜は、「指定野菜」(14品目)、「特定野菜」(35品目)、(2)対象者は、「指定産地」、知事が選定する「特定産地」の出荷団体・生産者、(3)市場価格連動型契約での「価格低落タイプ」、定量供給契約での豊作時の「出荷調整タイプ」、価格高騰時の市場調達による「数量確保タイプ」の3つのタイプ(同一契約・積立金で出荷調整と数量確保タイプの同時申込みが可能)、(4)積立金の負担割合は、指定野菜は国50%、都道府県25%、生産者25%、特定野菜は国33%、都道府県33%、生産者33% などの特徴がある。
 契約野菜収入確保モデル事業は、(1)対象野菜は、「指定野菜」(14品目)、(2)対象者は、指定産地以外の産地も対象で、生産者の作付面積制限がなく、数量確保タイプは中間事業者が対象、(3)数量と価格を定めた書面契約での豊作時の「出荷調整タイプ」、価格高騰時の契約数量の遵守のための「出荷促進タイプ」、価格高騰時の市場調達による「数量確保タイプ」の3つのタイプ(同一契約・積立金で出荷調整と出荷促進タイプの同時申込みが可能)、(4)積立金の負担割合は国50%、生産者・中間事業者50%、などの特徴がある。毎年度前期(1月)と後期(7月)の2回の公募により事業者を募集している(表1)。
 
表1 契約指定野菜安定供給事業と契約野菜収入確保モデル事業の特徴

 
注:事業の詳細は、農畜産業振興機構「野菜価格安定・振興事業のご案内」https://www.alic.go.jp/content/001180441.pdfを参照

3 契約指定野菜安定供給事業の実施状況

(1)交付予約状況

 令和2年度事業の交付予約状況を見ると、全体の交付予約数量は前年比113%の17,613トンで、最も交付予約の多い品目はレタスであり予約数量全体の54%を占めている。出荷期間別にみると、レタスのうち46%が夏秋レタス、51%が冬レタスとなっている。次いでキャベツが29%(うち夏秋キャベツ92%、冬キャベツ6%)となっており、レタスとキャベツの2品目で全体の83%を占めている。タイプ別の交付予約状況を見ると、価格低落時対策の「価格低落タイプ」が全体の93%を占め、「出荷調整タイプ」は1%、価格高騰時対策の「数量確保タイプ」は5%となっている(図1)。
 
図1 契約指定野菜安定供給事業の交付予約数量・交付実績の推移

(2)交付金の交付状況

 令和2年度事業の交付状況を見ると、秋冬野菜の安値を背景に過去最高の2億7,179万円となった。特に価格低落タイプの冬レタスが長期間に渡って交付対象となったため、レタスの交付額は交付額全体の97%を占める2億6,225万円となった。次いで、冬春トマトが583万円(2%)となった。出荷調整タイプの交付金額については、夏秋レタスの出荷期間の後半に価格低落による出荷調整が行われたことなどにより423万円となった。数量確保タイプについては、春先の価格高騰時に供給量不足となった生産者に対して、108万円の交付金を交付した(表2、3)。
 都道府県別の交付金額を見ると、冬レタスの産地である静岡県が最も多い1億6,729万円、同じく長崎県が4,938万円と上位2位を占め、次いで夏秋レタスを主とした長野県が3,121万円となった(表4)。
 
表2 契約指定野菜安定供給事業のタイプ別実績

※( )内は全体計に対する割合(%)
注:四捨五入のため、計において一致しない場合がある。

 
表3 契約指定野菜安定供給事業の品目別実績

※( )内は全体計に対する割合(%)
 
表4  契約指定野菜安定供給事業の都道府県別実績
           ※( )内は全体計に対する割合(%)
 

4 契約野菜収入確保モデル事業の実施状況

(1)応募・採択状況

 契約野菜収入確保モデル事業は、国産野菜の契約取引を行う生産者および中間事業者を対象に、対象産地を指定産地に限定せず、年2回の公募により実施している。令和2年度事業の公募では、新型コロナ禍で外食等業務需要が減少し、契約取引安定化へのニーズが高まったことなどから応募が増え、過去最高の5億2,869万円の採択を行った。特に中間事業者を対象とした数量確保タイプ(価格高騰時対策)の採択額が前年度比4倍の2億2,105万円と過去最高となった。増加した要因としては、令和2年度の春夏野菜の価格が高値だったため、秋冬野菜の価格高騰リスクへのニーズが高まったものと考えられる(図2)。
 出荷期間開始前に行う事業実施計画の認定額は4億7,373万円で、生産者を対象とする出荷促進タイプ(価格高騰時対策)が全体の54%と半数以上を占める一方、出荷調整タイプ(価格低落時対策)は3%となった。中間事業者を対象とする数量確保タイプは43%を占めた(表5)。
 
図2 契約野菜収入確保モデル事業の応募状況の推移

 
表5 契約野菜収入確保モデル事業のタイプ別実績
※( )内は全体計に対する割合(%)
 

(2)交付金交付状況

 令和2年度の交付金交付額は、前年度の3.7倍の3,072万円となった(交付率6%)。タイプ別にみると、秋冬野菜の価格が安値で推移したことを背景に、価格高騰時対策の出荷促進タイプが2,901万円(同11%)と全体の94%を占め、数量確保タイプは172万円(同1%)となった。価格低落時対策の出荷調整タイプの交付金の交付はなかった(図3)。
 品目別に交付金額を見ると、キャベツの4〜6月を対象出荷期間とする区分で最も多い1,329万円が交付され、次いでねぎ(青ねぎ)の年間を通じた出荷に対して657万円、はくさいはキャベツと同じく春先の出荷期間に398万円が交付された(表6)。
 都道府県別の交付金額は、茨城県がキャベツ、レタス、はくさい、なすの4品目合計で851万円と最も多く、次いで青森県がキャベツ1品目で627万円、京都府がねぎ(青ねぎ)で434万円となった(表7)。
 
図3 契約野菜収入確保モデル事業のタイプ別交付実績の推移

 
表6 契約野菜収入確保モデル事業の品目別実績
                           ※( )内は全体計に対する割合(%)
 
表7 契約野菜収入確保モデル事業の都道府県別実績
                           ※( )内は全体計に対する割合(%)
 

5 おわりに

 食の外部化・簡便化の進展で契約取引される加工・業務用需要が拡大する中で、新型コロナにより外食等の業務用需要が減少し、契約取引に取り組む生産者・中間事業者の経営リスクを軽減することが重要な課題になっている。機構としては、新型コロナ禍で、契約指定野菜安定供給事業と契約野菜収入確保モデル事業の普及・活用を通じて契約取引に伴う生産者・中間事業者の経営委リスクを軽減し、その経営安定と野菜の生産出荷の安定に取り組んでまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 野菜振興部 (担当:契約取引推進課)
Tel:03-3583-9817