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令和2年度緊急需給調整事業の実施状況について

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最終更新日:2021年9月30日

【ポイント】

 1  令和2年度緊急需給調整事業の実施状況は、たまねぎ、夏秋レタス、秋冬だいこん、秋冬はくさいについて平成18年度以来最大規模となる実施数量1万6506トン、交付額4億21万円、実施件数8件を実施した。
 2  品目別には、佐賀県のたまねぎが1万804トン、2億8090万円、長野県の夏秋レタスが226トン、1111万円、千葉県、長崎県、神奈川県の秋冬だいこんが3278トン、6557万円、鹿児島県、茨城県の秋冬はくさいが2198トン、4263万円となった。
 3  需給調整の手法別には、たまねぎは産地調整(出荷の後送り)、夏秋レタスは市場隔離(土壌還元)、有効利用用途(フードバンクへの提供)、秋冬だいこんは産地調整(出荷の後送り)、秋冬はくさいは産地調整(出荷の後送り)、市場隔離(土壌還元)、有効利用用途(フードバンクへの提供)であった。

1 はじめに

 全国に約900地区ある野菜指定産地は、毎年、指定野菜の種別・出荷期間ごとに国の需給ガイドライン、販売実績などをもとに「供給計画」を策定し、消費地への計画生産・計画出荷に取り組んでいるが、こうした取り組みをしても天候などによって作柄が変動し価格が大幅に低落又は高騰することが避けられない。近年は異常気象や新型コロナウイルス感染症の影響などにより、野菜価格の高騰や大幅な低落が発生する頻度が増加している。このため、消費量が多く露地で栽培されるため天候による作柄変動を受けやすい主要野菜(キャベツ、はくさい、レタス、だいこん、たまねぎ、にんじん)について、国、生産出荷団体、機構などが連携し、価格高騰時には早取りによる出荷の前倒し、価格低落時には出荷の後送り、加工用販売、フードバンクなどへの提供、冷蔵施設への一時保管、土壌還元などの緊急需給調整事業を実施し、生活必需品である野菜の価格と農家経営の安定を図っている(図1)。
 本稿では、令和2年度の緊急需給調整事業の実施状況について報告する。
 
図1 緊急需給調整事業の仕組み
注:事業の詳細は、農畜産業振興機構「野菜価格安定・振興事業のご案内」https://www.alic.go.jp/content/001180441.pdfを参照

2 令和2年産の主要野菜の需給・価格の動向

(1)たまねぎ

 たまねぎの価格は、令和元年度の北海道産が豊作であったことや府県産の主産地においても天候に恵まれ豊作であったことで、5月中旬の東京中央卸売市場の卸売価格は41円/kg、平均価格(98円/kg)の42%と安値で推移した。産地が切り替わる7月にはやや高値となったものの、8月に入ると主産地が北海道に移り、天候に恵まれ生育が順調に進んだため、ほぼ平年並みの価格で推移した。

(2)レタス

 レタスの価格は、主産地が天候に恵まれ豊作であったことで、6月中旬の東京中央卸売市場の卸売価格は99円/kg、平均価格(136円/kg)の73%と安値で推移した。7月中旬に入り、長雨による日照不足や多湿などによる生育の停滞や品質の低下などにより価格は高値で推移したが、9月以降は、天候に恵まれ豊作であったことで入荷量が増加し、安値で推移した。

(3)だいこん

 だいこんの価格は、新型コロナウイルス感染症の影響で家庭内需要が増加する中、主産地の低温や干ばつの影響から生育の遅れがみられたが、6月以降は入荷量が回復し、価格はほぼ平年並みで推移した。10月以降、天候に恵まれ豊作となったため、12月中旬の東京中央卸売市場の卸売価格は52円/kg、平均価格(81円/kg)の64%と安値で推移した。

(4)はくさい

 はくさいの価格は、新型コロナウイルス感染症の影響で家庭向けのキムチ等漬物需要が増加する中、長雨による日照不足や多湿などによる生育の停滞などにより、7月及び8月の価格は高値となった。その後、天候に恵まれ豊作となったため、12月中旬の東京中央卸売市場の卸売価格は27円/kg、平均価格(60円/kg)の45%と安値で推移した。新型コロナウイルス感染症の影響で業務用需要が低迷する中、1月上旬の東京中央卸売市場の卸売価格は36円/kg、平均価格(75円/kg)の48%と引き続き安値で推移した。

(5)キャベツ

 キャベツの価格は、新型コロナウイルス感染症の影響で家庭内需要が増加する中、長雨による日照不足や多湿などにより、7月及び8月の価格は高値となったが、11月以降は天候に恵まれ豊作になったため、安値で推移した。

(6)にんじん

 にんじんの価格は、日照不足による生育の停滞や品質の低下などにより、6月及び7月の価格は高値となったが、産地が切り替わる8月以降は、天候に恵まれ生育が順調に進んだため、ほぼ平年並みの価格で推移した。

3 令和2年度緊急需給調整事業の実施状況

 令和2年産のたまねぎ、夏秋レタス、秋冬野菜が安値で推移した中、国・出荷団体・産地・機構が緊密に連携し、価格の大幅な低落時において、平成18年度以来最大規模となるレタス、はくさいのフードバンクへの提供、だいこん、たまねぎ、はくさいの産地調整(出荷の後送り)等による緊急需給調整事業(実施件数8件、実施数量1万6506トン、交付額4億21万円)を実施し、野菜の需給・価格の安定を図った。
 品目別の交付状況を見ると、たまねぎは、5月中下旬に佐賀県で1万804トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し、2億8090万円を交付した。
 夏秋レタスは、7月上旬に長野県で226トンの市場隔離(土壌還元)と有効利用用途(フードバンクへの提供)を実施し、1111万円を交付した。このうち、有効利用用途については、フードバンク団体を通じて都内の社会福祉施設や生活困窮家庭等にレタスを提供した(写真1)。 
 
写真1 長野県産夏秋レタスのフードバンク団体倉庫への
搬入の様子
(写真提供:全国農業協同組合連合会)

 秋冬だいこんは、12月中下旬に千葉県で1574トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し3147万円を交付するとともに、長崎県でも1141トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し2281万円を交付した。さらに12月下旬に神奈川県で564トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し1128万円を交付し、実施数量計3278トン、6557万円を交付しました。
 秋冬はくさいは、12月中下旬に鹿児島県で901トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し、1261万円を交付した。1月中下旬には、茨城県で405トンの産地調整(出荷の後送り)を実施し769万円を交付するとともに、鹿児島県でも892トンの市場隔離(土壌還元)と有効利用用途(フードバンクへの提供)を実施し2232万円を交付し、実施数量計2198トン、4263万円を交付した。このうち、有効利用用途については、フードバンク団体を通じて県内の子供食堂などにはくさいを提供した(表1、表2、図2、図3)。
 
表1 令和2年度の緊急需給調整事業の実施状況

※ 実施数量は、交付金対象数量である。
 
表2 緊急需給調整事業の実施状況

資料:農畜産業振興機構作成資料
注:実施数量及び交付金交付金額は、交付決定数量及び交付決定金額である。

 
図2 緊急需給調整事業の実施状況

資料:農畜産業振興機構作成資料
注:実施数量は、交付決定数量である。

 
図3 緊急需給調整事業の交付金額の推移

資料:農畜産業振興機構作成資料
注:交付金交付金額は、交付決定金額である。

 

3 おわりに

 緊急需給調整事業は、昭和47年度の創設以来、その時々の野菜価格の高騰や大幅な低落に対し、野菜指定産地による計画生産・出荷、価格安定事業を補完し、出荷量調整により価格の大幅な低下や高騰に歯止めをかけ野菜価格と農家経営の安定を確保するための手段として実施されてきた。野菜作経営は農業粗収益に対する生産費の割合が高いため、野菜価格の大幅な低下は農家収益を悪化させ、次期作の資金不足や作付け意欲の低下を招き、作付けの不安定化や価格高騰を招く。
 近年、異常気象などの頻発により野菜価格が大幅に低落または高騰する機会が増加しているため、供給計画による計画生産・出荷および価格安定事業とともに、適時適切な需給調整の実施により、価格の大幅な低落や高騰を回避し、野菜価格と農家経営の安定を図ることが重要となっている。このため、農水省、関係団体等が検討を重ね、令和3年度において、交付金単価の引き上げ(平均価格の3〜4割→7割に引き上げ)、補助率の引き上げ(国50%生産者50%→国80%生産者20%に引き上げ)、事業参加対象者を一定規模以上の生産者等に拡大、緊急需給調整への参加促進措置の導入(緊急需給調整実施時に参加しなかった一定規模以上の団体等の指定野菜価格安定対策事業の交付金減額)などの拡充・強化が行われた。
 機構としては、農水省、関係団体、産地等と緊密に連携し、野菜価格の大幅な変動時に緊急需給調整事業を機動的に実施し、生産者の経営安定と野菜価格の安定に取り組んでまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 野菜振興部 (担当:助成業務課)
Tel:03-3583-9478