2009年の鶏肉生産額は引き続き上昇(フィリピン)
農業生産額は前年比2.2%増
フィリピン農務省農業統計局(BAS)によると、2009年の農業総生産額は、前年比2.2%増の1兆1880億ペソ(約2兆3760億円:1ペソ=2.0円)となった。
部門別では、耕種部門が同0.1%増の6320億ペソ(約1兆2640億円)、水産部門が同0.1%減の2156億ペソ(約4312億円)とほぼ前年並みで推移した一方、畜産関係については、家畜部門(牛肉、水牛肉、豚肉、ヤギ肉、生乳)が同6.5%増の1960億ペソ(約3920億円)、家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)も同10.0%増の1443億ペソ(約2886億円)と増加した。 このうち、家畜部門では豚肉の生産額が1612億ペソ(約3224億円)で同部門生産額の約8割、家きん部門では鶏肉生産額が1077億ペソ(約2154億円)で同じく約7割を占めている。特に、鶏肉については、後述のとおり生産量が1.5%増とわずかな増加にとどまったものの、生産者販売価格が同8.4%高となったこともあり、生産額は同10.1%増と前年をかなり上回った。
豚肉生産量は増加に転じる
畜産関係の生産量を品目別にみると、家畜部門では豚肉が第1四半期から第3四半期にかけて、ビサヤ地方、ミンダナオ地方でと畜頭数が増加したことや、第3四半期にルソン島において豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)が発生したものの、政府がワクチン接種を実施していたため感染の拡大を防止できたことにより、通年では同1.2%増の187万7千トンと増加に転じた。他の品目では生乳が同3.3%増の1万4千トン、水牛肉が同0.4%増の14万1千トン、牛肉が同2.5%増の24万5千トンといずれも増加した一方、ヤギ肉は同0.8%減の7万7千トンと減少した。家きん部門では、鶏肉が同1.5%増の130万1千トン、鶏卵が同5.0%増の36万8千トンと、いずれも前年を上回ったものの、アヒル肉は同8.4%減の3万6千トン、アヒル卵が同6.6%減の4万トンと前年に引き続きかなり減少した。BASは、鶏肉の生産量が増加した理由について、上半期に中部ルソン地方、カラバルソン地方、中部ビサヤ地方、北部ミンダナオ地方で商業的農家のブロイラー生産量が増加したためとしている。しかしながら、9月末から10月初旬に発生した2つの大型台風の影響により、下半期のブロイラー生産量の伸びは鈍化したと考えられる。一方、アヒル肉生産量が減少した理由については、第4四半期に台風による洪水の影響によりカラバルソン地方でアヒルを飼育するための土地が減少したことが要因としている。
部門別の生産者平均販売価格は、豚肉が同4.7%高のキログラム当たり85.84ペソ(約172円)となったほか、鶏肉が同8.4%高のキログラム当たり82.78ペソ(約166円)となるなど、家畜および家きん部門ともすべての品目が前年を上回った。
サトウキビ生産量はかなり減少
耕種部門の生産量は、サトウキビが同10.8%減の2373万6千トンと減少に転じたものの、トウモロコシが同1.5%増の703万4千トン、キャッサバが同5.3%増の204万4千トンと引き続き増加した。BASはトウモロコシの増産について、カガヤン・バレー地方で2008年8月に発生した台風の被害から復興した農家が収穫面積を拡大したことや、政府が推進するGMA(Ginintuang Masaganag Ani(黄金の豊穣))トウモロコシプログラムによる高品質な種子の配給や飢餓緩和プログラムといった継続的な努力が功を奏し、昨年を上回ったとしている。
一方、サトウキビ生産量がかなり減少していることについて、生産地のうちカピス州、ネグロス・オクシデンタル州、セブ州で肥料価格高騰の影響により施肥量が減少したことや、ブキドノン州でキャッサバ、バナナ、パイナップルへ、マギンダナオ州でトウモロコシやマンゴーへの転作が見られたことなどによるとしている。
【シンガポール 吉村 力 平成22年3月31日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:平石)
Tel:03-3583-9534