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米国農務省、酪農政策の検討に着手するため第1回酪農諮問委員会を開催

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 米国農務省(USDA)は4月13〜15日、ワシントンD.C.において酪農諮問委員会の第1回会合を開催した。今般、同会合を傍聴する機会を得たので、その概要を報告する。
 同委員会は、乱高下を繰り返す生産者乳価により酪農経営が悪化している現状に鑑み、酪農の現状および課題などを検討するとともに、生産者、乳業関係者から意見を聴取するため、連邦諮問委員会法に基づき昨年8月に新たに設置された。同委員会は生産者、乳業関係者、小売関係者、学識経験者、消費者から成る17名のメンバーで構成されており、本年1月に委員が農務長官より任命されたところである。

ヴィルサック農務長官は、乳価を安定させるシステムを酪農業界自らが構築する必要性を強調

 同委員会の開催に当たり、ヴィルサック農務長官は、「ここ数年は乳価の乱高下が激しく、酪農経営を続けることが非常に厳しくなってきている。このような中、予算を確保して乳製品買上価格の引き上げなどの支援措置を行ってきたところであるが、現在の米国の厳しい財政状況を踏まえれば、今後も同様の措置を継続することは困難であり、また、ほかの農業分野にも迷惑をかけることになるであろう。酪農業界自らが、乳価を安定させるシステムを備える必要があると考えている。今回立ち上げた酪農諮問委員会は、酪農に関連する幅広い分野から成るメンバーが、酪農業界が抱える課題に対する共通の解決策を見い出してくれると期待している」と、米国政府の財政事情の厳しさを強調するとともに、酪農業界が価格の乱高下を抑えるシステムを整備する必要性についてコメントした。

生産者及び乳業から今後の酪農政策について提案

 会合ではUSDAより各種酪農対策について説明が行われた後、生産者団体および乳業団体より今後の酪農政策に関する提案が行われた。具体的には、全国規模の酪農生産者団体であるNMPF(全国生乳生産者連盟)からは、所得が一定水準を下回る酪農経営にのみ補てん金を交付するとった酪農経営の所得に着目した政策への転換などが提案された。また、乳業団体であるIDFA(国際乳食品協会)からは、酪農経営の所得に対する保険制度の強化が提案された。さらに、カリフォルニアの生乳生産者団体であるMPC(生乳生産者会議)からは、生乳生産を一定水準以上伸ばす生産者については課徴金を徴収するなどの提案が出された。なお、このMPCの提案については、一部の委員から、米国の生乳生産の柔軟性が損なわれるのではないかとの指摘が出されたところである。

同委員会は、今後の酪農政策についてヴィルサック農務長官に提言

 同委員会は、USDAが今後どのような酪農政策を推進すべきか、ヴィルサック農務長官に提言することとされており、現時点では、6月、9月の会合が予定されている。なお、USDA担当官に今後のスケジュールについて聴取したところ、同委員会の提言が年内に取りまとめられれば、USDAとしての方向性を来年の早い段階に打ち出したいとのことであった。USDAが、2012年農業法の議論も見据えつつ、同委員会の提言を踏まえ、酪農政策についてどのような検討を行っていくのか、今後の動向が注目される。
【上田 泰史 平成22年4月21日発】
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