建国200周年に新たな畜産食肉計画を発表(アルゼンチン)
牛肉に加え豚肉、鶏肉も盛り込んだ多角的食肉戦略
アルゼンチン農牧漁業省(MINAGyP)は2010年4月19日、新たな畜産食肉計画となる「建国200周年連邦畜産食肉計画」(省令24/2010号)を発表した。この計画は、現在策定中の「2010‐2016年農産食品戦略計画」の畜産食肉部門を先行決議したものであり、2007年に承認した国家畜産計画は廃止することなく、さらに追加補完するものとなる。
国家畜産計画では子牛の増頭など牛肉生産を主流として進められてきたが、今回の計画により、今後は牛肉のみならず豚肉、鶏肉なども含めた多角的な食肉生産戦略を推進していくことが伺える。
※海外駐在員情報「アルゼンチン、国家畜産計画を承認」(平成19年7月3日)を参照。
建国200周年連邦畜産食肉計画(アルゼンチン農牧漁業省令24/2010号)(概要)
目的
食肉の全生産工程において、食肉生産の振興増進、食肉加工・商品の近代化、衛生基準の適正化、国民の食肉消費の多様化を通じた畜産・食肉チェーンの総供給量の増大、を図る。
仕組み
目的を達成するために、州・市政府、畜産・食肉団体、協同組合、民間組織など生産現場でプロジェクトを「計画」し農牧漁業省が補助や利子補給を行うものとする。
計画
目的を達成するために生産現場が策定する「計画」は、次の観点から策定するものとする。
・飼料供給の増産や給餌システム改善を通じた牛の繁殖、飼養管理、肥育の改善
・食肉用家畜の遺伝学的改良、増進
・家畜衛生の改善
・豚肉、鶏肉、羊肉その他の食肉用家畜の生産性の改良、増進
・技術支援の強化
・食肉生産チェーンのインフラ整備の改良
補助
予算総額217百万ペソ/年(約5425百万円:1ペソ≒25円)の定額補助
融資
予算総額6億ペソ/年(約150億円)の利子補給
(融資上限80万ペソ(約2000万円)。利子のうち9%相当額は自己負担)
2007年に畜産計画承認後、牛肉価格は高騰
最近3年間は、未曽有の大干ばつによる牛飼養頭数の減少などにより、国内牛肉価格が安定せず、政府は輸出禁止、国内市場への介入による対策を講じてきた。これに対し、畜産団体は政府に対する不満からストライキを表明するなど、不安定な情勢が続いた。このため、子牛の増頭計画についても、繁殖牛の不足から実現の見込みは立っていない。
国民の主食はやはり牛肉
このような中、農牧漁業省農牧漁業庁畜産副庁畜産生産局長のダニエル・パポート氏に最近の牛肉価格と今回の新畜産食肉計画について話を伺ったところ概要は次の通り。
・生産された牛肉の85%は国内で消費されており、現在のように国内価格が高く輸出価格と同等という状況は生産者にとっては大変良い。少ない頭数下での牛肉政策は、国内と輸出で需要のバランスを図りながら進められる必要がある。
・現在の牛肉価格の高騰は供給不足から生じているが、増頭には生産サイクル上2年を要するため、しばらくは続くであろう。
・今回の新畜産食肉計画は各州農業大臣からなる連邦農畜産審議会で検討され農牧漁業大臣に提案されたもので、生産現場からの創意工夫によりプロジェクトを「計画」し、この「計画」を農牧漁業省が採択する点が特徴である。
・食肉生産戦略に牛肉だけでなく豚肉、鶏肉なども盛り込んだが、これは国民に牛肉の代替として豚肉、鶏肉を推奨するものではなく、食肉生産の多角化を狙っている。アルゼンチン国民は価格が高くても国産牛肉を食べたい思いは変わらず、価格だけでほかの食肉が代替となることはない。
建国200周年の今年、アルゼンチンではさまざまな行事が行われているが、そこでは必ず牛肉によるアサード(アルゼンチン炭火焼肉)専門の屋台が並び、牛肉料理がふるまわれている。国民一人当たり年間70kgほどの牛肉を食すこの国の主食はやはり牛肉以外考えられない。
(参考)アルゼンチン農牧漁業省の組織図
【星野 和久 平成22年5月7日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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