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南米の農畜産業をめぐる情勢(2010年4月)

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(アルゼンチン)

○ 牛肉生産の減少に伴い、消費量も減少

 アルゼンチン牛肉・牛肉副産物産業および取引会議所(CICCRA)によると、2010年1〜2月の牛肉生産量は、前年同期比18.7%減の約44万6000トンとなった。この原因については、2008年〜9年における干ばつおよび肉牛農家の大豆生産への転換による牛飼養頭数の減少によるものとしている。
 また、これに伴い、同年第1四半期の1人当たりの牛肉消費量は、前年同期比18.0%減の56.2キログラムとなった。

○ 2010年1月〜2月の乳製品輸出量は、前年同期比5.6%減

 国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2010年1〜2月の乳製品輸出量は、前年同期比5.6%減の約4万3000トンとなった。これは、1月の高温と2月の多雨により、乳業メーカーの生乳受入数量が前年同期比11.6%減の約9億4080万リットルとなったことなどによる。アルゼンチンの乳業メーカーなどで組織される団体(CIL)関係者によると、上記数量は同国の乳業メーカーの生産能力の50%程度となっているが、現在乳製品の国際価格が上昇傾向にあることから、今後輸出は回復していくと見込んでいる。

○ 大豆生産量は5400万トン以上の可能性

 ブエノスアイレス穀物市場によると、2009/10年の大豆生産量は、天候に恵まれていることから5450万トンと予測されている。一方、一部の市場関係者の間では、5500万トン〜5700万トンになるとも予測されている。また、トウモロコシの生産量については2100万トンと予測されている。

(ブラジル)

○ 経営破たんした一部牛肉パッカーの再開で、今後肉牛価格は上昇の可能性

 会社更生法下にあった一部牛肉パッカーの事業再開により、JBS社およびマルフリグ社の2大パッカーとミネルバ社以下中堅パッカーとの肉牛調達が激化し、肉牛価格は今後上昇する可能性がある。2009年2月に会社更生法を申請したインデペンデンシア社(当時業界第4位)は、債権者と段階的な事業再開のための交渉を行っており、事業再生計画を策定中であると発表した。また、クアトロ マルコス社(同第6位)は肉牛生産者への債務返済プランが合意に達したと報じられている。

○ ブラジルネスレ社、5カ年売上倍増計画を公表

 国内乳製品売上高第1位(2009年売上高164億レアル(約8360億円、1レアル≒51円))であるブラジルネスレ社は、今後5カ年で売上を倍増させる計画であることを公表した。このために、年間10億レアル(約510億円)の投資を行うとしており、物流インフラの整備や効率的な原材料調達を重点的に実施し、ミナスジェライス州とゴイアス州に乳業処理工場の建設を計画している。

○ 豊作によりトウモロコシの国内価格が下落

 国家食料供給公社(CONAB)によると、2009/10年度のトウモロコシ生産量は生産地域の降雨が順調であったことおよび政府の資金援助対策などから、前年比6.1%増の約5400万トン(夏作および冬作を含む)と、過去最高であった2007/08年度(約5900万トン)に迫る増産が予測されている。
 しかし、供給量の増加により国内価格は下落しており、2010年4月のサンパウロ州の生産者支払価格(60キログラム当たり)は、前年同月比14.9%安の15.23レアル(約776円)となった。
 このような中、一部の市場アナリストの間では、国内価格の回復を図るためには少なくとも1000万トンの輸出が必要であるとしているが、レアル高などにより、2010年第1四半期の輸出は、前年同期比30%減の180万トンと非常に厳しい状況にある。
 こうしたことから、今後の在庫量増加が懸念されるが、同国では穀物類の貯蔵施設が不足していることに加え、大豆も豊作の見込みであることから、2011年には最大で2000万トンのトウモロコシが野積みされる可能性があると指摘されている。

○ 中国企業がブラジルで大豆栽培を計画

 中国の国営企業Chongqing Grain Group(CGG)は、大豆生産を目的とし、ブラジルのバイア州西部の農地10万ヘクタールを約3億ドル(約282億円、1ドル≒94円)で購入する計画を進めている。これは、ブラジルおよび中国国内市場を対象としたものであり、当該資金の60%は中国開発銀行が融資し、残りをCGGが支出する見込みである。CGGはブラジル側の共同経営者を求めており、7月までに農地を購入し、年間25万トンの生産を目指すとしている。中国の現地新聞情報によれば、次の段階として栽培面積は20万ヘクタール、投資額は8億4200万ドル(約791億円)に拡大する予定と報じられている。
 なお、年間20億ドル(約1880億円)の資金を調達し、8万人の職員を有する中国最大の国営農牧開発公社も、ブラジルの農地取得による大豆およびトウモロコシ生産に関心を示しており、数億ドルの投資を行いたいとしている。

(パラグアイ)

○ 大豆生産は過去最高の見込み

 民間調査会社によると、2009/10年度のパラグアイの大豆生産量は、過去最高であった2007/08年度をさらに上回る748万トン(対前年度比10%増)になると見込まれている。また、農業生産者組合の上部団体でも、720万トン〜770万トンと見込んでいる。
表
【石井 清栄 平成22年5月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805