米国の酪農家は本年初めてとなる乳用牛とう汰に着手
米国の生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)は5月28日、同連盟が運営する酪農協共同基金(Cooperative Working Together :CWT)を通じた乳用牛とう汰事業を行うことを発表した。
CWTは2003年7月に酪農家の出資により設立された基金であり、生乳出荷量100ポンド当たり10セントの生産者積立金を原資として乳用牛のとう汰や輸出乳製品への補助が行われている。また、乳用牛とう汰事業は今回で通算10回目の実施となる。
緩和の兆候を示している生乳需給の引き締めが狙い
米国の生乳生産は、2009年は、CWTにより過去最高となる乳用牛とう汰を実施したことなどから2009年は0.4%の減少となったが、昨年末からの好調な乳価などを反映し、本年3月から生乳生産は増加傾に転じている。幸いにも、乳価は現時点では比較的堅調に推移していることから、需給緩和が深刻化する前に生産の絞り込みを図ろうということが、今回の狙いである。また、NMPFはCWTを活用した需給改善の取り組みとして、乳用牛とう汰事業以外にもチェダーチーズを対象とした輸出補助金交付を3月18日より開始しており、6月1日現在で15,843トンのチェダーチーズに補助金が交付された。
補償単価はこれまでで最も低い水準
今回の事業は5月28日から6月25日まで事業参加を受け付けており、補償単価は最高で生乳100ポンド当たり3.75ドルと過去の単価と比較して低い水準で設定されている。NMPFは補償単価が低い理由を「最近の堅調な牛肉価格などを踏まえた結果」としているが、一部関係者からは、「この補償単価では多くの酪農家を引きつけることは難しいであろう」との声も聞こえており、どの程度の申請がなされるのか注目されるところである。
また、牛肉価格への影響について、通常であればCWTによる乳用牛と畜頭数の増加は下げ要素となるが、今回はと畜頭数が伸び悩む7月中旬から8月にかけて出荷されると予想されるため、影響は限定的ではないかとの意見がある。この事業が、好調が続く牛肉価格にどのような影響を与えるのかも注目される。
【上田 泰史 平成22年6月1日発】
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