畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2010年 > 2009/2010年度のトウモロコシ期末在庫量、2年連続で1000万トン超の見込み(ブラジル)

2009/2010年度のトウモロコシ期末在庫量、2年連続で1000万トン超の見込み(ブラジル)

印刷ページ

国際金融危機以降、国内価格は下落傾向

 ブラジル国家食料供給公社(CONAB)によると、世界有数のトウモロコシ生産・輸出国である同国のトウモロコシ国内価格(国内最大の生産州であるパラナ州の生産者販売価格)は、世界的な穀物需要の増加などにより2007年後半から2008年前半にかけて60キログラム当たりほぼ20レアル(約980円、1レアル≒49円)台前半で推移したものの、2008年10月の国際金融危機以降は下落傾向となっている。
 2010年4月には、2005年10月以来の13レアル台まで落ち込み、5月は多少持ち直したものの、前年同月比21.6%安の同13.99レアル(約686円)ととどまった。年間平均価格で比較すると、2010年1〜5月の平均価格は、同14.30レアル(約701円)と2006年の同12.52レアル(約613円)に次ぐ低水準である。なお、ゴイアス州やサンパウロ州など、パラナ州以外の地域でも同傾向となっている。
国内価格

下落傾向は、大量の在庫と豊作見込みによる供給増などが原因

 全国規模でブラジル農畜産物の価格やコスト分析などを行っているサンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)の関係者によれば、国内価格の下落傾向の原因として、(1)2008/09年度(3月〜翌年2月)の期末在庫が約1103万トンと過去10年間で最高の水準であったこと、(2)2009/2010年度の生産量(夏作および冬作を含む)が前年度比4.8%増の5346万トンと、過去最高であった2007/08年度の5865万トンに次ぐ水準が見込まれていること、(3)輸出の低迷(後述)により、生産者がトウモロコシを国内向けにやむを得ず出荷していること−を挙げている。なお、生産増加の背景としては、パラナ州やゴイアス州などで降雨に恵まれたことやマット・グロッソ(MT)州の冬作の作付けが比較的順調であったことなどがある。
 さらに、鶏肉パッカー最大手のブラジル フーズなど大手需要家(トウモロコシの国内需要の80%以上は家畜飼料向け、うち養鶏向けは45%)がさらなる下落を見込んで、当用買いに徹していることも価格動向に影響しているとされる。
生産量および在庫量

価格回復の切り札として期待が掛かる輸出はレアル高などで苦戦

 こうした中、一部穀物関係アナリストは、価格回復のためには今年700万〜900万トンの輸出が必要であるとしている。しかし、ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2010年1〜5月のトウモロコシ輸出は、レアル高や主要輸出国であるアルゼンチンからの輸出増加により、数量では前年同期比36.2%減の約205万7000トン、金額では同29.2%減の約3億7100万ドル(約322億8000万円、1ドル≒87円)と大幅に減少し、非常に厳しい状況となっている。このため、業界関係者によれば、現在の状況が続けば、2010年の輸出は、500万トン程度にとどまると予測されている。
 なお、輸出が大幅に減少している中で、日本向けは大幅に増加しており、数量では前年同期に比べ6倍近い約24万9000トン、金額では7.7倍の約4363万7000ドル(約37億9600万円)となった。この原因としては、日本への最大のトウモロコシ供給国である米国からの輸出が、国内におけるエタノール需要の増加や、昨年のコーンベルト地帯である中西部の天候不良に由来する品質低下などにより前年を下回って推移しているためとみられる。
国別輸出

業界関係者によると、2010/11年度の作付け面積は減少の見込み

 CONABは、2009/10年度のトウモロコシ期末在庫量は前年度比8.2%減の約1013万トンと見込んでいるが、CEPEA関係者などは、これまでの状況からするとこれを上回ると予測している。なお、今年度は大豆も豊作の見込みであることから、従来から問題となっている穀物の保管能力の不足が深刻化し、トウモロコシの一部が野積みされる可能性もある。このため、サンパウロ農務局農業経済研究所(IEA)関係者によれば、アルゼンチンで利用されている袋サイロ(注1)の普及に努めているとのことである。
 トウモロコシ価格は、MG州など内陸部からの流通経費の一部を補てんする農産物流通助成金(PEP)(注2)制度の効果もあって、わずかに回復しているとも伝えられるが、輸出が増加しない限り、本格的な回復の可能性は低いとみられる。業界関係者は、2010/11年度のトウモロコシの作付け面積は、最近の価格動向および大量の在庫から、減少するとみている。
【石井 清栄 平成22年7月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤井)
Tel:03-3583-9532