欧州委、今後5年間のTSE対策の指針となる第二次TSEロードマップを公表
SRM、飼料規制、BSE検査など6つの戦略目標から構成
2010年7月16日、欧州委員会は今後5年間の伝達性海綿状脳症(TSE)対策の指針となる第二次TSEロードマップを公表した。これは、第一次TSEロードマップの公表(2005年7月)以降の5年間に蓄積された知見・経験を踏まえ取りまとめられたものであり、以下の6つの戦略目標から構成されている。
1.特定危険部位(SRM: Specified Risk Materials)
SRMの安全な除去を継続することにより現在の域内消費者の保護水準を維持しつつ、新たな科学的意見に基づきSRMの範囲および対象月齢を見直す。
2.飼料規制(feed ban)
条件が整えば、現在の完全な飼料規制(注1)の措置の一部を見直す。
3.BSE検査(BSE Surveillance)
BSEの疫学的動向を監視する能力および講じられているBSE対策の有効性を評価する能力を維持しつつ、牛におけるBSEモニタリングシステムの監視対象の絞り込みを継続する。
4.スクレイピー撲滅措置(Scrapie eradication measures)
最新の科学的知見に基づき緬山羊のTSE発生群における現行の撲滅措置を見直すとともに、EUの小反芻獣におけるTSE防疫の持続可能な手段を開発する。
5.BSE患畜同居牛の処分(Cohort culling in bovine animals)
6.生前/生後迅速検査(ante-mortem and post-mortem rapid tests)
TSE検出に利用可能な迅速テストの開発促進を継続する。
注1:EUは現在、非反芻獣由来のものを含め肉骨粉の飼料利用を一切禁止する完全な飼料規制(total feed ban)を実施している。
この中で特に注目されるのは、「2.飼料規制」と「3.BSE検査」である。
「2.飼料規制」については、非反芻動物由来の肉骨粉を非反芻動物用飼料に利用することを解禁する可能性に言及されており、家きんの肉骨粉の豚用飼料への利用や豚の肉骨粉の家きん用飼料への利用の是非などが検討されることになるとみられる。
また、「3.BSE検査」については、既報(注2)のとおり現在議長国となっているベルギーは、食用に供される牛に対するBSE検査について、(1)検査対象月齢の下限を現在の48カ月齢から60カ月齢に引き上げる、(2)BSE検査の対象を2004年1月1日以前に出生した牛に限定するかのいずれかの対応を採るべきと2010年2月に開催された農相理事会で提起しており、検査対象のさらなる絞り込みを前提に今後議論が展開されるとみられる。
このほか、「1.特定危険部位」については、EUの関連法規と国際基準とされるOIEコードの間で取扱いが異なる小腸(注3)についてどのように調和を図っていくのかが、「5.BSE患畜同居牛の処分」については、摘発件数が極めて少ない同居牛については処分措置を廃止し、BSE検査陰性であれば食用に供することを可能にすることの是非が議論される見通しとなっている。
なお、この第二次TSEロードマップの詳細については、「畜産の情報」の紙面で改めて紹介することとしたい。
注3:小腸のうち回腸遠位部については、EUの関連法規でも、OIEコードの管理されたリスクの国に対する規定においても、全月齢においてSRMと規定されており、両者に違いはない。
【前間 聡 平成22年7月19日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤原)
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