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国際金融危機からの回復をめざすブラジル産鶏肉(ブラジル)

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2010年上半期の輸出額は前年同期比18.3%増

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2010年上半期(1-6月期)の生鮮鶏肉輸出は数量(製品ベース)164.7万トン、金額266.3千万ドル(1ドル≒85円;約2264億円。前年同期比で1.1%、18.3%の増加)となり、国際金融危機(以下「危機」という。)以前の水準までほぼ回復していることがわかった。2009年以降、ブラジル鶏肉業界は、危機の影響から縮小した国際市場を前に、輸出部門を中心に厳しい経営を余儀なくされていたが、国際価格もトン当たり1617.3ドル(約13万7千円。前年同期比17%高)まで回復しており、鶏肉市場は上昇基調にあるといえる。
鶏肉輸出推移(2010年上半期)
 ブラジル養鶏連合(UBABEF)は、危機から回復しつつあるとしながらも完全に危機以前の水準に戻るためには、年間を通して輸出金額で前年比20%増となる必要があるとしている。また、為替相場に大きく左右されるブラジル産鶏肉の国際価格は為替リスクが国際競争力の障害となることも懸念している。

新規市場の中国は冷凍カット部門で上位10カ国にランクイン

 輸出形態別にみると、冷凍カット鶏肉が輸出量940,010トン(全生鮮鶏肉輸出の57.1%)、輸出額164,010万ドル(約1394億円。同61.6%)となり、残りの大部分が冷凍丸どりである。輸出先国をみると、冷凍カット鶏肉では日本向けが輸出量184,113トン(全冷凍カット鶏肉の19.6%)、輸出額41,742万ドル(約354.8億円。同25.5%)、冷凍丸どりではサウジアラビア向けが輸出量197,242トン(全冷凍丸どりの28.0%)、輸出額28,563万ドル(約242.8億円。同28.0%)が最も多い。また、2010年度上半期の特徴は、中国向けが大幅に増加し、前年同期より輸出額で約80倍超となったことである。これは、従来香港経由で中国に輸入されていたものが、直接輸入に切り替わったものであり、その分、香港への輸出は減少している。この傾向はしばらく続くとみられ、中国市場は今後ますます拡大すると期待されている。
 一方で、UBABEFによれば、拡大傾向にある海外市場であるが、今年EUは冷凍鶏肉を解凍後、加工調整した鶏肉製品の再冷凍による流通販売を禁止したことから、ブラジル産冷凍鶏肉のEU向け輸出にどのような影響をもたらすか懸念されるなど、今後のEU市場の行方は不透明のようだ。

表1 国別冷凍カット鶏肉輸出

    

2010(1-6月期)

2009(1-6月期)

2008(1-6月期)

 

輸出額

輸出量

輸出額

輸出量

輸出額

輸出量

 

万USドル
(FOB)

前年同期比
(%)

トン

前年同期比
(%)

万USドル
(FOB)

トン

万USドル
(FOB)

トン

日本

41,742

129.0

184,113

115.5

32,357

159,408

45,441

189,655

香港

27,341

97.4

172,054

79.0

28,064

217,911

27,915

206,049

サウジアラビア

11,461

145.9

50,142

119.6

7,855

41,912

10,835

42,725

南アフリカ

8,380

151.3

91,043

121.2

5,539

75,094

6,502

79,971

ロシア

8,129

221.2

45,091

155.6

3,675

28,987

12,753

65,823

中国

7,864

8024.5

48,920

7491.6

98

653

67

491

アラブ首長国連邦

7,546

119.6

35,827

94.2

6,312

38,024

7,489

34,710

オランダ

5,906

67.2

22,787

60.6

8,793

37,608

9,388

32,526

シンガポール

4,706

93.4

23,692

77.1

5,039

30,735

6,416

33,008

韓国

3,845

149.3

16,444

117.6

2,575

13,988

33,676

14,054

その他

37,090

99.8

250,697

84.5

37,178

296,679

14,652

298,322

合計

164,010

119.3

940,810

100.0

137,485

940,999

175,134

997,334

資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)

表2 国別冷凍丸どり輸出

    

2010(1-6月期)

2009(1-6月期)

2008(1-6月期)

 

輸出額

輸出量

輸出額

輸出量

輸出額

輸出量

 

万USドル
(FOB)

前年同期比
(%)

トン

前年同期比
(%)

万USドル
(FOB)

トン

万USドル
(FOB)

トン

サウジアラビア

28,563

121.6

197,242

100.0

23,487

197,242

20,846

129,535

ベネズエラ

13,962

85.6

80,838

88.5

16,317

91,378

21,634

136,209

アラブ首長国連邦

10,210

130.7

74,685

114.0

7,809

65,533

13,234

79,541

クエート

9,401

112.2

70,725

96.4

8,378

73,393

10,440

60,841

イラク

6,889

107.2

46,475

87.3

6,427

53,207

3,606

23,880

イエメン

4,249

96.2

29,367

77.8

4,415

37,765

4,587

27,115

エジプト

5,526

178.0

37,905

157.8

3,104

24,015

1,320

8,738

オマーン

2,601

109.7

18,128

92.7

2,370

19,562

4,022

24,319

その他

20,549

135.5

147,990

119.1

15,161

124,292

24,505

158,015

合計

101,950

116.6

703,355

102.5

87,468

686,387

104,194

648,193

資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)

次の目標は「2011年に鶏肉生産世界第2位」

 米国農務省(USDA)によると、2009年の世界の鶏肉生産量は71,760千トンであり、国別では、米国15,935千トン、中国12,100千トン、ブラジル11,023千トンとなっている。ここ数年は、この3カ国で世界シェアの50%超を占め、順位もほぼ同様に推移している。しかしながら、ブラジルはひなふ化羽数を毎年確実に増加させるなど今後の鶏肉生産余力は十分と判断されるため、危機からの回復後、中国やロシアをはじめ海外市場からの需要増が見込まれるとすれば、今後の鶏肉生産増にも拍車がかかるであろう。
 UBABEFサンチン理事は、「2011年の鶏肉生産は中国を抜いて世界第2位になること」が次なる目標と語る。ブラジル鶏肉業界は100種類以上の鶏肉カット技術をすでに習得しており、あらゆる輸入者・輸入国のニーズに適合させることが可能であるため、今後、さらなる国際市場の拡大も十分可能ということのようだ。さらに、例えば丸どりがキログラム当たり1.5ドル(約128円)であれば、加工鶏肉は同2.5ドル(約213円)、さらにナゲットは同3.5ドル(約298円)で取引できることから、加工鶏肉は輸出競争面で、今後ますます魅力的な商品になるという。
 なお、2011年にブラジルが中国を抜くためには年間12,500千トン以上の鶏肉を生産しなければならない。これは、毎月平均500万羽のひなをふ化させ、毎月平均1050千トンの鶏肉を生産させることになるが、現在のブラジルの鶏肉生産効率を考慮すると、不可能ではないと考えられる。
ひなふ化羽数と鶏肉生産量
【星野 和久 平成22年8月25日発】
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