南米の農畜産業をめぐる現地情報(2010年8月下期)
(アルゼンチン)
○ 2010年1〜7月の牛肉輸出量は、前年同期比50%以上減
国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2010年1〜7月の牛肉(生鮮、冷蔵・冷凍)輸出は、ロシアやチリ向けなどの大幅な減少から、数量ベースで前年同期比52.2%減の約8万7000トン(製品重量ベース)、金額ベースで同32.7%減の約4億2400万ドル(約360億4000万円、1ドル≒85円)となった。この原因は、昨年後半以降、アルゼンチン国内の肉牛頭数が減少する中、政府が牛肉価格上昇を抑えるため、輸出許可書発行の抑制など輸出管理を強化しているためである。
○ JBS社がアルゼンチンにおける事業規模を縮小へ
ブラジル最大の牛肉パッカーであるJBS社は、肉牛供給の不足と政府の輸出管理政策を理由に、アルゼンチンに所有している8工場のうち3工場を売却する計画であることを発表した。これに対して、アルゼンチン政府は、買収するパッカーに特別融資を行うとしているが、現在のところ買収に関心を示すパッカーはいない。アルゼンチン農村協会(SRA)によると、肉牛供給の不足と政府の輸出管理政策により、国内および海外資本の20パッカーが工場を閉鎖し、12パッカーが操業停止寸前の状況である。
○ 輸出課徴金をめぐる攻防続く
「行政府の農畜産物に対する輸出課徴金の決定権に関する法律」などが8月24日をもって失効した。同制度については現在、輸出課徴金の決定権などの議会への移行が議論されているが、政府と野党との間で制度をめぐる攻防が続いている。野党は、下院に大豆の輸出課徴金税率の漸減、トウモロコシおよび牛肉の課徴金の段階的な廃止などを含む意見書を提出した。これに対して、政府は、大豆の同税率(35%)維持などが、放牧地減少の防止など今後の畜産業の成長のためには必要不可欠であると反論している。
○ 2010/11年度のトウモロコシは種面積は9%増との予測
ブエノスアイレス穀物市場によると、現在までのところ、2010/11年度(3月〜翌年2月)のトウモロコシのは種面積は、前年度比9%増が予測されている。なお、アルゼンチン農牧漁業省(Minagri)によると、2009/10年度のトウモロコシのは種面積は、360万ヘクタールである。
(ブラジル)
○ 2010年1〜7月の鶏肉輸出金額は前年同期比16.6%増
ブラジル養鶏連合(UBABEF)によると、2010年1〜7月の鶏肉輸出量は、主要輸出相手先であるサウジアラビアや日本向けなどが増加したことから、前年同期比1.9%増の約212万4000トンとなった。一方、輸出額は輸出単価の上昇により、同16.6%増の37億56万ドル(約3192億6000万円)となった。
○ 2010年1〜7月の豚肉輸出金額は前年同期比12.6%増
ブラジル豚肉輸出業協会(ABIPECS)によると、2010年1〜7月の豚肉輸出量は、主要輸出先であるロシア向けなどの減少や新規市場開拓伸び悩みから、前年同期比8.5%減の約31万3000トンとなった。一方、輸出額は輸出単価の上昇により、同12.6%増の7億7000万ドル(約654億5000万円)となった。なお、ABIPECS関係者によれば、2010年通年では、昨年の60万7千トンを下回る見込みであるとしている。
○ 2011年の大豆および大豆製品の輸出は過去最高との予測
民間農業コンサルタント会社によると、ブラジルの2011年の大豆および大豆製品の輸出量は、過去最高の4490万トンになることが予測されている。しかし、金額ベースでは世界的に大豆の在庫量増加が予測され、相場が低下すると見込まれていることから、2010年の予測値160億3500万ドル(約1兆3600億円)は下回るとみられている。
(チリ)
○ 豚肉消費が回復基調
チリ養豚生産者協会(ASPROCER)によると、2010年上半期の同国の豚肉消費量は、昨年まで国際金融危機の影響などを受けていた国内景気が回復傾向であることなどから、前年同期比5.2%増の約16万2000トンとなった。なお、輸出量については、生産量の減少と併せて、海外市場の回復が遅いことやペソ高ドル安傾向から、前年同期比13.3%減の約9万トンとなったが、下半期は、日本や韓国など海外市場の需要増加や為替環境の改善が見込まれることから、回復すると期待されている。
【石井 清栄 平成22年9月1日発】
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