農相理事会、GMO問題、酪農乳業に関するHLG報告書などを議論
9月27日にブリュッセルで農相理事会が開催され、その概要が欧州理事会のプレスリリースとして公表された。今回の農相理事会における議題の中で特に注目されたのは、2010年7月に欧州委員会より提案された遺伝子組換作物(GMO)の栽培に係る規則改正案(注1)と2010年6月に欧州委員会が取りまとめた酪農乳業に関するハイレベルグループ報告書(注2)の2点である。
GMOの栽培に係る規則改正案への加盟国の賛否は分かれる
農相理事会では、現在の状況を打破するものとして欧州委員会の提案を歓迎する加盟国もあった一方、強い懸念を表明した加盟国もあったとされており、賛否が分かれる結果となった。この提案の賛否とは別に、「規則改正案がもたらす経済的効果と域内市場への影響」、「規則改正案がWTOの規則および域内市場の規則に適合することを確認するために必要な手順」の2点について各国代表から問題提起され、引き続き議論されることとなった。
酪農乳業に関するハイレベルグループ報告書に対する議長声明に一部加盟国が不支持を表明
また、今回、酪農乳業に関するハイレベルグループ報告書に関する前回の農相理事会(7月12日)での議論を踏襲する内容の議長声明が採択されたが、その支持は22加盟国にとどまり、1加盟国が棄権、4加盟国が議長声明を受け入れられない旨(反対)を表明する結果となった。いずれにしても、この採択の結果、欧州委員会は優先的かつ一体的に取り扱われるべきとされた「生産者と乳業の契約関係」、「生産者側の交渉力」および「業種横断的な団体」の3項目に係る法案を年内に提出することが可能となった。
食料支援制度、BSEモニタリング、飼料価格高騰対策も議論の対象に
上記の2議題のほか、生活困窮者への食料支援制度改正案(注3)、BSEモニタリング検査対象のさらなる絞り込み(注4)、飼料価格高騰対策についても議論の対象となった。
食料支援制度改正案については、もっぱら受益加盟国側に一部負担を求めることの是非が議論の対象となり、介入買入在庫との関連は主要な論点とはならなかった。
また、BSEモニタリング検査対象のさらなる絞り込みについては、現在も30カ月齢を超える健康と畜牛を対象とした悉皆検査を義務付けられているラトビアから、EU15、キプロスおよびスロベニアの合計17加盟国で認められている48カ月齢を超える牛のみのモニタリングへの早期移行が要請され、いくつかの加盟国から強い支持が示された。しかしながら、ジョン・ダッリ委員より、BSEモニタリング検査対象のさらなる絞り込みは欧州食品安全機関(EFSA)の評価を踏まえ実施されるべきものであり、当該評価の完了は年末と見込まれている旨の答弁がなされ、EFSAの評価結果を待たずに検査対象を変更することについて否定的な見解が示された。
なお、ポーランド代表より昨今の穀物価格上昇による畜産経営、なかでも購入飼料への依存度の高い養豚経営への影響について問題提起された。具体的には、穀物に係る介入買入在庫の放出および畜産物に係る介入買入価格引き上げの2点について欧州委員会での検討が要請された。
【前間 聡 平成22年9月28日発】
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