2010年の中国畜産物需給と2011年予測
2010年10月に米国農務省海外農業局(USDA-FAS)から公表されたレポートを基に、中国の畜産物需給について報告を行う。
牛肉
生産
2011年の牛肉生産量は前年に比較して2%減の545万トンと予測されている。これは牛肉が堅調な価格で推移している一方、豚肉や鶏肉に比較して収益性がやや劣ること、飼育期間が長いこと、飼料や生産資材コストがかさむためとされている。
需要は旺盛だが、牛肉の価格は他の肉に比較して高いことから、消費量は他の食肉に比較して伸びにくい傾向がある。中間業者が生産者から大量に安く牛を買い上げてしまうことが、生産意欲の減退につながっているという指摘も生産者から挙がっている。
また、長期的な影響として過放牧による生産環境の悪化を懸念する声がある。
さらに、生鮮肉を好む国民性に対し、牛肉の25%が西部で生産され、冷凍輸送される必要があるにもかかわらずコールドチェーンが整備されていないなど、生産量の増加を妨げる要因もあるとされている。
貿易
輸入量が消費量に占める割合は少ないが、今後増加することが予測されている。2010年1〜7月までのデータでは、最大の輸入先はウルグアイであり、前年比2倍の伸びを示した。ブラジルからの輸入の伸びも顕著である。その他は豪州、ニュージーランドが主な輸入先である。米国およびカナダはBSE発生国として輸入が禁止されているが※1、輸入が解禁すれば、大幅な増加が予想される。
※1:カナダについては2010年7月に、30か月齢未満の中国の牛肉輸入が解禁されるとの報道があったが、2010年10月22日現在、輸入は行われていない模様。
表1 牛肉の需給データ |
単位:千頭、千トン、年間kg/人 |
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2009 |
2010 |
2011 |
期首飼養頭数 |
105,722 |
105,426 |
105,076 |
と畜頭数 |
42,382 |
40,808 |
40,075 |
生産量 |
5,764 |
5,550 |
5,450 |
輸入量 |
20 |
25 |
30 |
輸出量 |
38 |
45 |
46 |
消費量 |
5,746 |
5,530 |
5,434 |
1人当たり消費量 |
4 |
4 |
4 |
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注1:2010年は推計値、2011年は予測値 |
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注2:枝肉重量ベース |
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豚肉
生産
2010年は生産地である南西5省の春季の干ばつ、全土で起こった夏季の洪水にも関わらず、2009年からの飼養頭数の増加もあり、5000万トンと前年に比較して増加するとみられる。
2011年の豚肉生産量は前年比2%増の5150万トンと予測されている。
こうした増産は、経済成長に伴う需要の増加が背景にあるが、生産の伸びを抑える要因としては、高い飼料価格や家畜伝染病の発生、2010年に決定された母豚への補助金の廃止が挙げられる。
2010年における政策の動き
母豚への補助金は、2007年の豚肉価格の高騰に対応したもので、2009年後半に50元(650円。2010年9月末TTSレート1元=13円で計算。以下同じ)から100元(1300円)に増額されたが、2010年前半の供給過剰およびそれに伴う価格低迷を招いたことから廃止された。
なお、中国政府は2010年前半の価格低迷に対して推定17万トンの在庫買い入れを4月~7月にかけて3回行ったとみられる。同時期に地方政府による買い入れもあったもようである。
また、中国政府は2010補助金年度(7月~6月)、豚肉在庫量を確保するため(および生産の規模の拡大を図り安定供給を確保するため)、大規模養豚生産者に対する総額3.7億元(48億円)の規模の支援を行っている。その他、高品質な繁殖豚の生産のため6.5億元(85億円)の予算を措置した。
一方、地方政府レベルでも母豚改良のための1頭当たり年間40元(520円)の補助、家畜保険として生産者が12元(156円)拠出した場合、1頭当たり60元(780円)の補助が行われている。
そのほかにも中国政府はすべての養豚生産者が行う、口蹄疫、PRRSおよび豚コレラワクチン接種費用に対し、全額補助している。
現在、全国に21,000あると畜場の再編・統合も行われている。
貿易
豚肉の輸入は2010年に20万トン、2011年に21万トンと増加すると見込まれている。豚肉の最大の輸入先国は米国である。このほか豚肉価格が堅調に推移していることから、内臓肉の輸入が多く行われており、2010年には100万トンに達するとみられる(2009年は58万トン)。
輸出は2011年には28万トンに増加すると予測される。香港を除くと2009年の最大の輸出先国は日本であり、キルギスタンが続いた。
表2 豚肉の需給データ |
単位:千頭、千トン、年間kg/人 |
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2009 |
2010 |
2011 |
期首飼養頭数計 |
462,913 |
469,960 |
468,507 |
と畜頭数 |
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645,271 |
657,895 |
676,000 |
生産量 |
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48,905 |
50,000 |
51,500 |
輸入量 |
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182 |
200 |
210 |
輸出量 |
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232 |
250 |
280 |
消費量 |
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48,735 |
49,900 |
51,430 |
1人当たり消費量 |
36 |
37 |
38 |
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注1:2010年は推計値、2011年は予測値 |
注2:枝肉重量ベース |
注3:貿易量にはHSコード02類のほか、16類等の一部品目(ハム・ソーセージ等の豚肉加工品)も含まれる。 |
鶏肉
生産
鶏肉(ブロイラー)の生産量は2010年に1億2550万トン、2011年には1億3千万トンに増加するとみられる。飼料価格は高止まりしているが、旺盛な需要と堅調な価格により、生産者の増産意欲は高い。2010年2月から実施されている米国産鶏肉に対するアンチダンピング課税も増産の1つの要因となっている。
インテグレーターは契約農家からの仕入れ単位を従来の2000羽から5000羽以上に拡大するとともに、一歩進んで自社農場化するなど生産現場の統合を強めている。
貿易
2010年の輸入量は前年から減少することが予測されているが、これは米国産鶏肉に対するアンチダンピング課税が大きな要因である。ブラジルやアルゼンチンからの輸入は一部を代替するが、すべてを補えない。例えばアルゼンチンは中国で好まれる手羽先等部位(mid wings)を十分には供給できない。
その他自動化登録フォーム(Automated Registration Form, 輸入ライセンス)による輸入量増加に対する緩和措置※2もあるとされている。
2010年の輸出量は前年から増加すると予想される。主要な輸出先国は日本である。
※2:発行されるライセンスごとの最大輸入可能数量が、前年までの輸入実績に影響される。
表3 鶏肉(ブロイラー)の需給データ |
単位:百万羽、千トン、年間kg/人 |
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2009 |
2010 |
2011 |
期首飼養頭数計 |
- |
- |
- |
と畜羽数 |
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8,980 |
9,296 |
9,629 |
生産量 |
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12,100 |
12,550 |
13,000 |
輸入量 |
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417 |
326 |
280 |
輸出量 |
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291 |
380 |
410 |
消費量 |
|
12,226 |
12,496 |
12,870 |
1人当たり消費量 |
9 |
9 |
10 |
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注1:2010年は推計値、2011年は予測値 |
注2:鶏の足先(モミジ)は含まない。 |
注3:貿易量にはHSコード02類のほか、16類の一部加工品も含まれる。 |
鶏卵
2011年の鶏卵の生産量は前年より2%増加して2770万トンになると予想される。これは2009年に流行した鶏白血病Jタイプウィルスの対策が進んだことが要因の1つである。
表4 鶏卵の生産 |
単位:千トン |
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2009 |
2010 |
2011 |
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生産量 |
26,600 |
27,100 |
27,700 |
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注1:2010年は推計値、2011年は予測値 |
【(代理) 平石康久 平成22年10月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:平石)
Tel:03-3583-9534