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2010年下期トウモロコシ輸出は増加の見通し(ブラジル)

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第3四半期の輸出量、輸出額ともに上期の1.5倍以上

 生産量、輸出量ともに世界第3位であり、世界のトウモロコシ需給に大きな影響を与えているブラジル産トウモロコシだが、毎月の輸出量は必ずしも一定ではない。ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2010年上期(1-6月期)は減少傾向で推移し続け6月には700トンまで落ち込んだが、その後急伸し、9月単月で192万トン(速報値)となった。これは、近年最高であった2007年10月の181万トンを6%上回る。
図1
  第3四半期(7-9月期)は輸出量340万4千トン、輸出額6億2100万ドルであり上期(205万トン、3億7100万ドル)に比べ輸出量、輸出額ともに1.5倍以上となった。

この理由としては、

(1) 中国の輸入需要や米国のエタノール需要により、米国農務省が発表する在庫報告が6月時点で予測を大きく下回ったこと、

(2) 干ばつによるロシア産小麦の不作から8月より禁輸が措置されたことに伴い、その代替飼料としてのトウモロコシが注目されたこと、

から、7月以降、国際相場が急上昇しブラジル産トウモロコシの輸出インセンティブが一気に働いた。2009/2010年度(3月〜翌年2月)のブラジル産トウモロコシは、生産量の約70%がNON-GM(非遺伝子組み換え作物)とされており、特に欧州からのニーズが高い。

 

注1:「農産物流通助成金」とは

 農業生産地から消費地や輸出港まで1000km以上離れるなど流通条件が不利な地域における農産物滞留を回避し市場に円滑に流通させるため、農産物購入者に対し最低保証価格+消費地等までの輸送コストの合計金額と、実際に消費地などで販売される金額の差額を政府が助成する仕組み。助成対象や最低保証価格は政府が毎年農業プランで決定し、助成金の運用も政府が入札等により実施する。

2010年下期の輸出量は大幅に増加する見通し

 2006/2007年度は、干ばつによる豪州産の不作や所得向上に伴う中国での消費増から過去に例をみないほど国際穀物価格が高騰し、ブラジル産トウモロコシの引き合いも強く1093万3500トンが輸出された。ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)によれば、2009/2010年度の輸出予測は950万トンとされている。しかしながら、PEPで放出された輸出用トウモロコシを考慮すると、今後、1000万トン超となる可能性も考えられる。
 

近年、鶏肉、豚肉産業の成長から国内需要は増加する一方であるものの、2009/2010年度の期末在庫量は、2006/2007年度よりもはるかに多いことを踏まえると下期の輸出余力は十分あると考えられる。

表1
 10月8日に米国農務省(USDA)より公表された「GRAIN:World Markets and Trade」によれば、2010/2011年度の米国の期末在庫見通しは前年より50%少なく2290万トンとなり、過去14年間で最も低い水準と公表された。これを受け、シカゴ相場はすぐに反応し、12日にはブッシェル当たり579セント(約4690円:1セント≒8.1円)と2年ぶりの高値となった。米国では家畜飼料のみならず、エタノール需要も今後増加することから、市場への影響は必至だが、一方で、現在ブラジルは在庫減少の要因は特にみられず今期の輸出環境は引き続き良いと言える。
図3
 米国の需給ひっ迫の影響から、最近ではブラジル産トウモロコシの日本への輸出も増えている。今後、国際需給がますます緊張していく中、在庫が潤沢なブラジルなど、米国以外の輸入ルートを確保していくことは、家畜飼料の安定供給の点から重要な動きであろう。
表2

2010/2011年度は乾季の長期化からトウモロコシ生産量は7.0%減と予測

 CONABは、10月7日2010/2011年度の需給予測レポートを公表した。それによれば、中西部や南部のトウモロコシ生産地ではラ・ニーニャ現象(注2)を原因とする乾季の長期化からは種面積や単位収量が減るため、生産量は前年から7.0%減少し5212万3900トン(5183万7200トン〜5241万800トン)とされた。在庫は十分にあるものの国内需要が増加基調にあることから、輸出向けのトウモロコシは必然的に少なくなり、同レポートでは輸出量は800万トンに減少すると予測している。

 

 南部のパラナ州に次いで生産量の多い中西部のマット・グロッソ州では通常、大豆と冬季収穫トウモロコシの2毛作が行われている。ここでは、例年9月から大豆のは種が始まり、今の季節では50%近くが終了しているが、今年は降雨不足から数%程度しか進んでいない。このため、現地では今年は裏作としてのトウモロコシを断念する生産者も少なくないといわれている。

 

注2:ラ・ニーニャ現象とは

  太平洋赤道付近からペルー沖の海水温が例年より低下する現象。

 気象庁(8月10日)によれば、「ラ・ニーニャ現象が発生しているとみられ、冬(筆者注:北半球の冬でありおおむね1月頃)までは持続する可能性が高い」と発表した。
表3
 ブラジル気象予報・気候研究センター(CPTEC/INPE)によれば、今年のラ・ニーニャ現象は、2年前の干ばつ水準ほどでないものの南米南部地域(ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイ)に少雨を引き起こす可能性があるとしている。このようなことから、2010/2011年度のトウモロコシの生産動向についても引き続き注視したい。
【星野 和久 平成22年10月22日発】
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