米国農務省、2011年度の農産物輸出額を上方修正し過去最高と予測
米国農務省(USDA)は11月30日、四半期ごとに公表する農産物貿易見通しにおいて、2011会計年度(2010年10月〜2011年9月)の農産物輸出額の見通しを前年比16.4%増の1265億ドル(10兆7525億円、1ドル=85円)と発表した。これは、2008年の1149億ドルを上回る過去最高額となる。前回(8月)の予測値を大幅(135億ドル)に上方修正した理由は、大豆の輸出額が中国向け増を見込み前回から50億ドル、穀物の輸出額がトウモロコシや小麦の価格の上昇から同40億ドル近く、いずれも増額したことなどによるとしている。
また、農産物輸入額においても前回の見通しを65億ドル上方修正し、前年比8.2%増の855億ドルとした。これは、順調な国内消費の伸びにより輸入量が増えるためとしている。
牛肉は14.9%増、豚肉は17.1%増
畜産物の輸出額は、前回の見通しを12億ドル上方修正し前年比6.8%増の230億ドル(1兆955億円)と予測している。牛肉は、アジアの強い需要がけん引役となり5億ドル上方修正の同14.9%増の37億ドル、豚肉は日本、メキシコ、カナダなどの主要輸出先国の堅調な需要を反映して1億ドル上方修正の同17.1%増の46億ドル、ブロイラーについては、生産量の増加による価格の低下から3億ドル下方修正し同0.4%減の30億ドルと予測している。乳製品は、乳脂肪の需要が堅調なことから3億ドル上方修正したものの同5.0%減の32億ドルにとどまるとされている。また、原皮については、世界経済の回復とともに需要回復が見込まれ、3億ドル上方修正し同8.6%増の23億ドルと予測している。
日本向けは25億ドル上方修正の前年比15.8%増
国別では、前回の見通しを大きく上方修正したうちの半分以上がアジア諸国で、特に油糧種子の需要が強い中国向けの輸出額は、25億ドル上方修正して175億ドルとなり、最大の輸出先であるカナダの180億ドルに肉薄すると予測している。3位は北米自由貿易協定(NAFTA)のもう1つの国であるメキシコで14億ドル上方修正し160億ドル、次いで日本が25億ドル上方修正し前年比15.8%増の130億ドルとなった。この4カ国は、輸出額がいずれも100億ドルを超える米国の主要輸出先国となっており、2003年に4番手に入って以降、米国からの農産物輸入を大きく増やす中国の伸長ぶりが目立っている。
加工原料用牛肉の輸入額は前年比8.7%増
農産物の輸入額は、個人所得の増加に伴う飲食需要増から、特にコーヒー豆、カカオ豆、ココナッツ油、ヤシ油、ゴム、砂糖などが増え、前回の見通しを40億ドル上方修正し、前年比8.3%増の855億ドルと見込んでいる。畜産物のうち牛肉については、2011年度は経産牛のと畜頭数の減少が見込まれることから加工原料用の輸入が増加し、前年比8.7%増の31億ドルになるとしている。また、生体牛の輸入については、カナダ、メキシコの飼養頭数の減少から同6.7%減の210万頭としている。
米国の経済回復をけん引する農業
今回の公表に当たってヴィルサック農務長官は、2011年度の輸出額が空前の記録となり、米国の農産物に対しかつてないほど世界各国から強い需要があることを強調した。また、農業は貿易黒字となる数少ない産業であり、10億ドルの農産物輸出額で8000人分、2011年でいえば100万人以上の雇用が創出されるとした。さらに、農業が国内の経済回復をけん引し、5年間で輸出を倍増するオバマ大統領の目的達成に貢献すると言及した。
【中野 貴史 平成22年12月2日発】
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