南米の農畜産業をめぐる現地情報(2010年11月下期)
アルゼンチン
○ 牛肉価格は年末需要でさらに値上がりの見込み
アルゼンチン牛肉・牛肉副産物産業および取引会議所(CICCRA)によると、肉牛不足の中で牛肉価格は年末需要でさらに値上がりする見込みとしている。生体牛取引価格の指標となるリニエールス市場における11月第4週の去勢牛価格は、前年同期比124.5%高の1キログラム当たり7.47ペソ(約157円、1ペソ≒21円)となった。
○ 養鶏産業の成長
アルゼンチン養鶏加工協会(CEPA)は、国内および海外市場の成長とそれに基づく業界の長期的プロジェクトにより、2010年の鶏肉生産量は1990年に比べ2.5倍近くの約170万トン、また、20年前にはほとんどなかった輸出は、数量ベースで約31万トン、金額ベースで4億5000万ドル(約382億5000万円、1ドル≒85円)になるとしている。さらに2017年には、輸出は金額ベースで2010年の倍以上の10億ドル(約850億円)になると予測している。
○ 2011年3月以降のトウモロコシ500万トンの輸出を許可
中国やロシアのトウモロコシ買い付けの可能性がある中で、アルゼンチン政府は、2011年3月以降のトウモロコシ500万トンの輸出を許可した。しかし、ラ・ニーニャ現象の影響による降雨不足で、大豆なども含めた穀物生産量が今後減少するのではとの懸念が、生産者の間で高まっている。
○ 大手日系商社「双日」が大豆などの農業事業を開始
双日は、アルゼンチンで大豆などの農業生産を行う事業会社を設立し、同国の大手農業事業運営会社「カセナベ社」と協力し、2010年度(穀物年度)から大豆などの穀物生産・販売する農業事業を開始する。同社は、600万ドル(約5億円)を投じ、パンパ(約1万1000ヘクタール)で、大豆、トウモロコシ、小麦など合計約3万トンを生産する。
ブラジル
〇 2010年の鶏肉輸出、数量・金額とも過去最高の見込み
ブラジル養鶏連合(UBABEF)によると、2010年の鶏肉輸出は、主要輸出先である日本やサウジアラビア向けなどの増加や中国向け輸出の本格実施などから、数量ベースでは前年比5.0%増の約380万トン、金額ベースでは、数量増に輸出単価の上昇も加わり、同16.0%増の約68億ドル(約5780億円)と過去最高の見込みである。
○ 米国政府がサンタカタリーナ州からの豚肉輸入を許可
米国政府は11月16日、国内唯一の口蹄疫非接種清浄地域サンタカタリーナ州からの豚肉輸入を許可すると発表した。今回の米国の決定により、米国以外の市場への影響に注目が集まっている。ブラジル・フーズのジョゼ・アントニオ・ファイ社長は、「多くの国が米国の決定を参考に行動するため、今回の決定は極めて重要な意味を持つものである。」としている。
○ 2009年の牛飼養頭数は、前年比1.5%増の2億529万頭
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2009年12月31日現在の牛飼養頭数は、前年比1.5%増の約2億529万2000頭となった。州別では、マットグロッソ州が全体の13.3%を占める約2736万頭、次いでミナスジェライス州が同10.9%の約2247万頭となった。
○ 世界最大牛肉パッカー「JBS社」社長が今後の事業方針と展望を発表
JBS社のジョエスリ・バチスタ社長は、2010年第3四半期決算発表の席で、今後の事業方針と展望を明らかにした。同社はグループ全体の財政の健全化のため、成長の速度を緩めるとし、その例としてアルゼンチンにおける3工場の全面操業停止などを挙げた。一方で、2020年に向けた展望として、世界の牛肉輸入の占める同社の割合を現在の20%から50%に引き上げ、合わせて顧客数も35万社から100万社に拡大するなどとしている。
チリ
〇 ネスレ社が1億ドルで南部のオソルノ市に粉乳工場を建設
ネスレ社は、南部のオソルノ市に1億ドル(約85億円)を投資して粉乳工場を新設する。操業開始は2011年末の予定であり、敷地面積62ヘクタール、工場面積2万3000平方メートルで、年間生産能力3万5000トンとなる。同社は、この工場を含め、チリで付加価値乳製品を生産し、中南米諸国などへの輸出拠点にする計画である。
【石井 清栄 平成22年12月2日発】
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