フィリピン農業部は、国内で販売される冷凍食肉および冷凍食肉製品(以下、「冷凍食肉等」)に対して厳格な取り扱いを求める2010年11月23日付フィリピン農業部省令(Administrative Order)22号を発出し、同年12月12日から施行された。
省令の内容は、
・冷凍食肉等の流通販売業者は国立肉類検査サービスもしくは地方政府の担当部局(以下、「担当部局」)の認定を受けなければならない。
・店頭に陳列・販売される冷凍食肉等は密閉包装されていなければならない。
・冷凍食肉等の解凍・小分は、担当部局の認定を受けた摂氏10度以下の施設で行わなければならない。また当該施設の担当者は、製品が食用に適することを証明しなければならない。
・小売に供される製品は原産地供給者および流通販売業者の名称、住所および認定番号を含むトレーサビリティー情報を備えなければならない。
・小売に供される製品の保管および配送は、摂氏4度以下の温度が保たれていなければならない。
・店頭では、摂氏10度以下の温度で、使用が認められている材質による容器によって陳列されていなければならない。
・国内で販売される冷凍食肉等はすべて肉類検査済証明書が添付されていなければならない。
・これらに違反した場合は罰則が適用される。
この省令が施行された背景として、省令内では、国内市場に冷凍食肉が冷蔵施設のないウェットマーケットとよばれる地元市場にも大量に流れ込み、衛生上の問題が生じているためとしている。
一方、現地報道では輸入品を主体とする冷凍食肉流通により損害を受けた国内生産者への配慮があるとの見方もなされている。フィリピンではコールドチェーン体制が確立されていないため、この省令は、と畜直後に生鮮肉を市場に提供できる国内生産者に比べて、冷凍肉がほとんどの輸入企業に不利となる。
省令の施行について、フィリピン豚肉生産者連盟は歓迎する一方、肉類輸入・取引業者協会は、関係者との調整もなかったとして、施行の延期を求めている。米国およびカナダの大使館からも施行延期を求める文書が送付されたが、2011年1月18日現在、省令の施行停止は行われていない。