欧州委員会は先頃、2010年のEU農業に関する主要指標および経済情報に関する報告書を公表した。
2010年の農業実収入を見ると、生産量は減少したものの農産物価格の上昇により、前年と比較して9.9%の増加となった。また、生産者の労働費を加味した農業収入も、生産費が燃料や飼料費などの上昇によりわずかに増加したものの、穀物や畜産物の製品価格がそれぞれ同8.9%、2.0%増加したことから、前年と比較して12.3%の上昇となっている。
主な畜産物の動向は以下のとおり。
・豚肉
2010年も高水準の穀物価格の影響を受け、飼料価格の上昇が続き、収益性が低下した。この低下は3年間続いており、生産者は資本増加できるほどの収益を得られず、厳しい状況が続いている。
また、養豚産業は規模拡大による効率化を図っているものの、生産量の減少に歯止めがかからず、2010年の豚肉生産量は前年比0.8%減、平均豚枝肉価格も100キログラム当たり140.24ユーロ(約16,800円 1ユーロ=120円)と前年と比較して1.98ユーロ(約237円)下回った。
一方、輸出は好調で、域内消費量の低迷を打ち消すほどとなっている。EU域外への輸出量は、前年比12.5%増となり、記録的な伸びとなった。この要因として、主要輸出先の一つであるロシア向けが前年比6.0%増と、全輸出量の3分の1まで回復したこと、また、中国、日本向けが大幅に増加し、それぞれ同19.0%、20.0%増となったことが挙げられる。
・乳製品
バターの生産量は、前年比3.0%減の180万トンと前年に引き続き減少した。しかし、域内消費量の減少は緩やかなものであったため、価格は、年間を通じて上昇傾向で推移した。こうした価格動向を踏まえ、2009年末に76,367トンあった介入買入在庫のほとんどが放出され、在庫量は1,544トンまで減少した。この放出のうち、生活困窮者向けが51,148トン、一般市場向けが23,695トンとなっている。
また、脱脂粉乳については、速報値で生産量は前年比7.0%減の90万7千トン、消費量は前年並みの64万4千トンとなっている。