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短期的な穀物の需給見通し:2011/12年産トウモロコシ、在庫率は依然として低水準(米国)

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 インフォーマ・エコノミクス社(米国の農業コンサルタント)は4月13〜14日、ワシントンD.C.において「食料・農業ポリシーカンファレンス」を開催し、米国の飼料穀物の需給見通しなどを公表した。 なお、米国農務省(USDA)による2011/12年産の需給予測は、5月11日に公表される予定である。

 トウモロコシの先物価格は、USDAが3月末、3月1日時点のトウモロコシ在庫量が予想を大幅に下回ると発表して以来上昇し、現在もブッシェル当たり7ドル中頃〜後半で推移しているところである。このような中、穀物についてどのような需給状況が見込まれているのか、同会議に出席する機会を得たので、その概要を報告する。

トウモロコシ:2011/12年産において生産量が過去最高を記録したとしても、大幅な需給改善は見込めず

 2010/11年産トウモロコシについては、エタノール需要の増加などにより期末在庫が前年比66%減の575百万ブッシェルまで落ち込み、在庫率(消費量に対する期末在庫の割合)も前年の13.1%を大きく下回る4%となることが見込まれている。また、供給は2011/12年産の収穫が始まるまでタイトな状態が続くことから、価格はそれまでの間、現在の水準で推移するものと推測される。

 2011/12年産について、作付面積は好調な価格を反映して前年比4百万エーカー増の92.2百万エーカーが見込まれており、平均的な単収の場合、生産量は過去最高となる139億ブッシェルを記録することになる。しかし、この場合においても、エタノール需要の増加を考慮すれば、期末在庫は831百万ブッシェル、在庫率も前年より改善するものの6%程度にしか上がらず、相場が安定していた前年(13.1%)と比較すれば、依然として低い水準にある。要するに、2011/12年産が過去最高の生産量を記録したとしても、現在の強含みの価格を和らげる効果は少ないものと推測される。なお、平均的な単収は良好な天候が前提条件となることから、今年の天候について不安定な要素が出てくるようであれば、需給はさらにタイトになる可能性がある。

 注:米国におけるトウモロコシの作物年度は9月〜8月。

大豆:南米における増産を受け2011/12産の輸出量は低下し、在庫率は改善する見込み

 2010/11年産大豆については、搾油向けが減少する一方、輸出が増加することから、消費量はほぼ前年並みと推測される。輸出については、中国向けが大きく伸び、全体の6割を占めることが見込まれる。期末在庫は前年比3%減の147百万ブッシェル、在庫率は4%と推測される。トウモロコシ同様、供給は2011/12年産の収穫が始まるまでタイトな状態が続くことが予想されるため、価格はそれまでの間、強含みで推移する可能性がある。

 2011/12年産について、作付面積は前年比79万5千エーカー減の76.6百万エーカーが見込まれており、平均的な単収の場合、生産量は前年比4百万ブッシェル増の33億ブッシェルとなることが推測される。輸出に関しては、南米において記録的な生産量が見込まれることから、米国産は国際競争力が低下し、前年比8%減の1425百万ブッシェルになるものと推測される。他方、搾油向けは前年比40百万ブッシェル増の17億ブッシェルと見込まれる。この結果、期末在庫は前年比100百万ブッシェル増の246百万ブッシェルとなり、在庫率も7.5%に改善する見込みである。

 注:米国における大豆の作物年度は9月〜8月。

小麦:米国内の飼料向け利用が増加し、在庫率は低下する見込み

 世界における2010/11年の小麦生産量は、干ばつなどの天候不順によりロシア、EU、カナダの生産量が落ち込んだことから、前年比5%減となる見込みである。他方、米国産については前年並みの22億ブッシェルの生産が見込まれるが、輸出が前年比42%増の1250百万ブッシェルとなることから、期末在庫は前年比11%減の865百万ブッシェルとなり、在庫率も前年の48%を下回る36%となる見込みである。また、現在の高水準な価格は、冬小麦の収穫まで継続するものと推測される。

 堅調な価格を反映して、世界における2011/12年産の生産量は前年比4%の増加が予測される。米国については、作付面積は前年比8%増の58百万エーカーと見込まれるが、カンザス州、テキサス州、オクラホマ州における天候不順により、品質が低下するとともに、生産量は前年比1%減になるものと推測される。輸出向けは、世界における生産量が増加することから、前年比4%減と見込まれる。これに対し、国内向けは、トウモロコシ価格が高騰する中、品質低下により食用に適さない小麦の増加が見込まれることから、飼料利用が増えることが予想されており、前年比5%増となることが推測される。期末在庫は前年比17%減の716百万ブッシェルとなり、在庫率は前年を下回る29%となる見込みである。価格は、世界的な需給緩和により2011年秋頃から2012年初冬までやや弱含む可能性があるが、一年間を通して見れば、前年を上回る見込みである。

 注:米国における小麦の作物年度は6月〜5月。
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【上田 泰史、前田 絵梨 平成23年4月15日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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